ストレンジャーシングス生みの親ダファー兄弟の歩み

今回はストレンジャーシングスの発案者で製作総指揮を務めるThe Duffer Bros（ダファー兄弟）についてご紹介します。

ストレンジャーシングスのヒットを経て売れっ子クリエイターとなった、マットとロスの歩みをまとめました。

ダファー兄弟の生い立ちとショーン・レヴィとの出会い

Matt and Ross Duffer / マット・ダファーとロス・ダファー
1984年2月15日ノースカロライナ州ダーラム生まれのマットとロスは双子です。

２人は幼少期から、映画を見ることが大好きでお互いが大親友でした。
生まれた時から親友という存在を持ち共に育ったマットとロスは、いつも２人で遊んでいた為「社交性がない」という理由で幼稚園を留年してしまったそう。
他の子供たちとも遊ぶように促す大人たちに対して「もう親友がいるのに、なんで他の子と遊ばなきゃいけないんだ？」と思っていたそうです。

ディズニー映画からホラー映画まで、とにかく映画を見るのが好きだった２人に、両親はクリスマスプレゼントで8mmビデオカメラを贈ります。この事をきっかけに２人は映画制作に夢中になります。

小学校３年生頃から２人でストーリーを考えて、ホームメイドムービーを撮り始めたそうです。まずはお気に入りのカードゲーム「マジック：ザギャザリング」の映画化が２人の初作品でした。
作品を作り続けながら地元の学校に通っていましたが、楽しかった中学校時代とは対照的に高校生活は「最悪なもの」だったそうで、その頃の経験はストレンジャー・シングスに強く反映されています。

映画制作を本格的に仕事にすることを志していた２人は、映画監督のスティーヴン・スピルバーグやジョン・カーペンター、作家のスティーヴン・キングを特に尊敬していて、それらの作品に影響されながら独学で高校時代に多くの作品を作りました。

高校卒業後、チャップマン大学で映画作りを学ぶためカリフォルニア州オレンジカウンティーに引越しをします。在学中、ホラー映画などいくつかのプロジェクトに取り組んでいます。またこの頃二人は別々にインターンを受けていて、ロスはインターン先で出会ったリー・ジャニアックと交際を開始、10年近く交際を続けたのち2015年に結婚しています。

大学を卒業後にハリウッドで仕事を得るために２人は脚本を書き続け、それを売り込むようになります。自分達で片っ端から売り込みの連絡をしますが何度も断られ続けます。
４、５年間にも渡ってそのような状況にいた２人は徐々にお金がなくなって自暴自棄になっていったと言います。
その頃、知人の一人でレオナルド・ディカプリオの会社で働いていたフランクリン・レナードが脚本を見て、エージェントを雇った方がいいと２人にエージェントを手配します。
その結果エージェントが売り込んだホラー映画「Hidden」がプロデューサーの目に留まり、2011年にワーナー・ブラザースが権利を購入しマットとロスが自ら監督を務めて制作をしますが、この映画は劇場公開されることはありませんでした。
しかし、自分達の作品で報酬を得たダファー兄弟は自信を取り戻し、お金の心配をするのはやめようと思うことができたそうです。

自分達が考えたストーリーを世に出すためにはどうしたらいいのか考えていた頃、「Hidden」の脚本を読んだＭ・ナイト・シャマラン監督から誘われドラマシリーズ「ウェイワード・パインズ」の脚本家としての仕事を得ます。
２人は脚本家として現場で働きながら、スタジオで働くことについて隅から隅まで学んだそうです。
そして、仕事の合間に「モントーク」という作品を書き始めます。

ドラマの現場で働いてみたことで、映画ではなくドラマシリーズの方がよりキャラクターやストーリーを掘り下げて展開できると考えた２人はいくつかの作品を書き上げ、売り込み続けますが何度も却下されてしまいます。しかし「モントーク」は違いました。E.T.やグーニーズから影響を受けたその作品は、21ラップス・エンターテインメントという制作会社の副社長の目に留まります。
同社の創設者、俳優出身で監督やプロデューサーとして成功を収めていたショーン・レヴィに話がいくと、ショーンはすぐさまNETFLIXにプレゼンします。

その結果NETFLIXの幹部に気に入られ、プレゼンをしてから24時間以内という異例のスピードでゴーサインが出ます。「高額な予算を請求する代わりに自分達に監督をさせて欲しいと言うと業界の人は喜んでくれる」と知っていたダファー兄弟は、ショーン・レヴィと共に製作総指揮を務める事にも承諾を得ます。そうして製作が決定したこの「モントーク」こそが後に名前を変える「ストレンジャーシングス」でした。作品の人気に伴い２人の名前が知れ渡り、人気作品の製作総指揮という実績を得た事を考えると、目の前の大金を得るより遥かに賢明な選択でした。

ストレンジャー・シングス未知の世界に反映される双子の世界観

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^{ロス・ダファー、マット・ダファー、ショーン・レヴィ}

子供が研究所で実験をされているという点は日本の漫画エルフェンリートやAKIRAから影響を受けたと語るストレンジャー・シングスは、実際に政府が行ったとされるMKウルトラ計画に触れる形で時代設定を1980年代にします。その結果、スティーブン・キングやスピルバーグ作品に影響を受けた２人の好みが色濃く反映されていきます。

また主人公の子供たちが「オタク」で学校で浮いているという点ももちろんですが「最悪だった高校時代」や幼少期に実際に起こった出来事をあらゆるシーンに散りばめています。

例えばダスティンがシーズン２の最後にナンシーと踊りながら優しく励ましてもらうシーンは、実際にロスが同じ状況に陥った時に年上の従兄弟にかけてもらった言葉だったそう。シーズン４でスティーブが「僕は逆向きにハイハイする子供だった」と語る話や、ジョナサンがウィルに「お前が小さい頃、レゴを鼻に詰めて取り出すのが大変だった」といった思い出話も実際にロスの身に起きた実話です。
ナンシーとジョナサンが学校で話す場面も当初はグラウンドで撮影する予定でしたが、ダファー兄弟が学生時代は他の生徒と関わらなくていいように車でお昼を食べてたという話を聞いたショーンが、急遽車の上で話すシーンに変更したそうです。

大学時代のインターンを除いて、ずっと２人で製作活動をしてきたダファー兄弟は個別に活動することは今の所考えていないよう。マットは「シーズン4の撮影中ロスに急用の電話が入って、私ひとりで監督しなければならなかったんです。正直、迷子の子犬になった気分でした。いつもお互いの反応を見て決断が正しいと確認しているので、そういったやり方に慣れていませんでした。」と語っています。

しかし２人は最終的な決定は自分達で行うとしながらも、現場スタッフや俳優たちを家族のように思い、彼らの意見も積極的に取り入れながらチームとして働くのが好きだと語ります。
監督を行いながら現場で脚本を並行して書いているというダファー兄弟は、アドリブや、キャラクター設定も俳優たちの意見を積極的に検討し採用することも多く、役職に限らず現場のスタッフの意見が気に入った際には脚本を書き換えていくそう。

実際に現場スタッフからは「彼らはいつもアイデアを歓迎してくれます。出した意見は、脚本に反映してもらえる事が多いんだ。自分のアイデアが採用されると、とても誇らしい気分になります。」という声も上がっていて現場のモチベーションにもつながっているよう。

ダファー兄弟は「例えばエディがメタリカを演奏するシーンは当初はありませんでした。どうにかデモバッドの気をそらす方法はないかと考えていたときにライターの一人が、メタリカを演奏するのはどうかと言ったんです。そのアイデアに惚れ込んでしまい、予定になかったけど急遽エディをバンドマンにしました。そのため最初に戻ってクリッシーとの取引のシーンに、エディがずっとバンド活動をしていた事がわかる会話を追加しました。ただのドラッグ取引のはずでしたが、エディにもクリッシーにも人間らしさを感じられる良いシーンになりました。」と語っています。

また、２人は俳優達の演技によりキャラクターが輝くのを見るのが大好きとのことです。
シーズン２でウィルの体からマインドフレイヤーを追い出すシーンを撮影している時は、ウィルを演じるノアの演技力の素晴らしさに思わず笑顔が止まらず周りのスタッフに「子供が苦しんでるのを見て喜んでいるやばい奴だと思われた。俳優達が素晴らしい演技でキャラクターに命を吹き込んでくれると嬉しくなってしまうんです。」と話しています。