1.【原文】の音読
2.【現代語訳】の照らし合わせ
3.【イラスト訳】のイメージを入れる
この順で一語一語の読解とイメージトレーニングを行います。
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源氏物語イラスト訳【紅葉賀158】似つかはし
「似つかはしからぬあはひかな」と、いとをかしう思されて、
「好き心なしと、常にもて悩むめるを、さはいへど、過ぐさざりけるは」
とて、笑はせたまへば、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は宮中の女官に手を出すこともなかったのですが、年増の源典侍(げんのないしのすけ)には少し興味を持って、ちょっかいを出しています。
源氏物語イラスト訳
「似つかはしからぬあはひかな」と、いとをかしう思されて、
訳)「似つかわしくない間柄だなぁ」と、とてもおかしくお思いになられて、
「好き心なしと、常にもて悩むめるを、
訳)「好色な心がないと、いつも不満に思っているようだが、
さはいへど、過ぐさざりけるは」とて、笑はせたまへば、
訳)そうは言うものの、(彼は源典侍を)見過ごさなかったのだな」
と言って、お笑いあそばすので、
【古文】
「似つかはしからぬあはひかな」と、いとをかしう思されて、
「好き心なしと、常にもて悩むめるを、さはいへど、過ぐさざりけるは」
とて、笑はせたまへば、
【訳】
「似つかわしくない間柄だなぁ」と、とてもおかしくお思いになられて、
「好色な心がないと、いつも不満に思っているようだが、そうは言うものの、(彼は源典侍を)見過ごさなかったのだな」
と言って、お笑いあそばすので、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【似つかはしから】…シク活用形容詞「似つかはし」未然形
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【あはひ】…仲。間柄
■【かな】…詠嘆の終助詞
■【と】…引用の格助詞
■【いと】…とても
■【をかしう】…シク活用形容詞「をかし」連用形ウ音便
※【をかし】…ここでは、滑稽だ。おかしいの意
■【思(おぼ)さ】…サ行四段動詞「おぼす」未然形
※【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒帝)
■【れ】…尊敬の助動詞「る」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【好き心】…好色な心。浮気心
■【なし】…無い(ク活用形容詞)
■【と】…引用の格助詞
■【もて悩む】…もてあます
■【める】…推定の助動詞「めり」連体形
■【を】…逆接の接続助詞
■【さ】…そう(指示副詞)
■【は】…取り立ての係助詞
■【言へ】…ハ行四段動詞「言ふ」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【過(す)ぐさ】…サ行四段動詞「すぐす」未然形
※【過ぐす】…見過ごす
■【ざり】…打消の助動詞「ず」連用形
■【ける】…詠嘆の助動詞「けり」連体形
■【は】…強意(詠嘆)の係助詞(文末用法)
■【とて】…~と言って
■【と】…引用の格助詞
■【て】…単純接続の接続助詞
■【笑は】…ハ行四段動詞「笑ふ」未然形
■【せ】…尊敬の助動詞「す」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒帝)
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここで、光源氏の父である桐壺帝が登場します。
源典侍(げんのないしのすけ)という女性は、帝にとって、どのような存在だったのでしょうか。
典侍(ないしのすけ)というのは、宮中の官職名で、帝のお世話係の女官をさします。
位はそんなに高くないですが、女御・更衣に次ぐ、帝のオンナですよね~!
わたし、韓国ドラマが好きでよく見るんですけど、李氏朝鮮時代の宮中では、女官はみんな「王のオンナ」として、結婚は許されません。
日本でも、江戸時代の「大奥」などでは、将軍のオンナと殿方との接触は避けられたようだし、中国や朝鮮では、「宦官(かんがん)」などの制度もありました。(「宦官」について興味があれば、ググってみてくださいね)
内侍司(ないしのつかさ)所属の女官も、いつ帝の目にとまり、ご寵愛を受けるかわかりません。たとえばこの後の源氏物語でも、光源氏と関係を持ってしまった朧月夜を、朱雀帝は尚侍(ないしのかみ)にして寵愛したりしますよね。要するに、内侍司であっても、「帝のオンナ」なのです。
しかし、そのような存在の女官が、もし他の男性と関係を持ってたりしたら、妊娠しても、だれの子か分からなくなったりしませんか?
実際、この源典侍は、修理大夫(すりのかみ)という夫のような存在の男性が、後にできたりします。
このような、男の出入りがアバウトな宮中ですから、いろんな男性に色目をつかってたんでしょうねぇ。
今回の父帝の発言は、
「熟女の色気ただよう源典侍を、真面目すぎると噂の光源氏は、見逃さずにアプローチしているんだな」
という、からかいの言葉の裏に隠された、
帝のオンナに手を出すことへの許容
がうかがえます。
こういう宮中の実態が、たとえあったにせよ、
このような宮廷女人の情交にアバウトな描き方をする『源氏物語』は、当時、炎上しなかったのでしょうかねぇ。
皇族の歴史がもっとも長いと言われる日本。
アバウトだからこそ、ずっと長く続いてこられたきらいもあると思うのですが、……これ以上の言及は、差し控えさせていただきます。
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