昭和の怪物 七つの謎』(講談社現代新書 保阪 正康著)を読了しました。


 

ジャーナリストで昭和史の研究でも知られている著者が、その側近や周辺の人物、家族、さらには本人に直接インタビューを試みるなど、ち密に取材を積み重ね、また調査を行い続けた結果、書き尽くせなかった昭和前期の闇や謎について迫った一冊です。

 

取り上げられた人物は東條英機、石原莞爾、犬養毅、渡辺和子、瀬島龍三、吉田茂の6名。いずれも昭和前期を語るうえで欠かせない重要人物でもあります。昭和史好きには見逃せない内容でした。
 

まず、第1章で取り上げられた東條の戦争観(負けたと思ったときが負けという論)が印象に残りましたね。こういう人物が上に立っていては、それは戦況がどれだけ泥沼に陥ろうとも戦争は終わりません。

 

今なお謎の多い石原莞爾については、東條倒閣クーデター説や持論である世界最終戦論など、本人に聞かなければまず答えが出てこないような“謎”に対して、さまざまな側面からその真意について論じられています。

 

ほかにも瀬島龍三のソ連スパイ説や史実改ざん疑惑(70年後の日本でも同じようなことが起こっていたわけです)への追及、吉田茂の戦後日本の方向性を決定づけた憲法への想いなど、興味深い内容が詰まっていました。

 

本来なら闇や謎のままで葬り去られようとしていた事実が、一人のジャーナリストの手によって完全に解明されないまでも、書籍という形で残された事実は素晴らしく、これからを生きる研究者への糧となれば著者の努力も多少は報われるのでは、と思います。

 

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