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関東学院大学vs 東洋大学(関東大学リーグ戦G2部-2018.11.04)の感想

2018-11-16 02:06:51 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


國學院大の逆転勝利の余韻覚めやらぬここ国士舘大学のグラウンド。第1試合は立正大サイドで観戦したが、今度は東洋大サイドに移動する。そこはまだ國學院大学の関係者による大きな歓喜の輪があり、1部昇格に向けて一歩前進を果たしたチームを讃える熱気に包まれていた。さて、第2試合は関東学院と東洋大学の全勝対決。ここで勝利を収めたチームがまず1部リーグ昇格チャレンジへの1枚目の切符を獲得する。いつしか雨も止み、秋晴れとはいかないもののまずまずのコンディションとなった。

関東学院は昨シーズン1部リーグで戦いながらも無念の入替戦敗戦となりここに居る。入替戦ではパワー不足を露呈して前半は圧倒されたものの、後半にサイズのある選手を投入してからは勢いを得て5点差まで肉薄したが一歩届かなかった。降格が決まったあと、女子マネージャー達が大粒の涙を流して泣きはらしていたことが今でも心に深く残っている。そんな悔し涙を流さないためにも戦力アップを図ってきた関東学院。春シーズンから好調が伝えられ、全勝でここまで来た。ただ、前節の國學院大戦では2点差の薄氷を踏むような勝利だったことに一抹の不安を抱かせる。一方の東洋大もここまで全勝。かつて1部で戦った経験を持つこのチームも昇格への熱い想いがマグマのように堪っているはず。



◆前半の戦い/2部リーグとは思えないスピーディーな展開に舌を巻く

颯爽とピッチに登場した両チームだったが、困ったことに遠目ではジャージーの見分けがつかない。関東学院は濃い緑で東洋大は濃紺なのだが同じ色に見えてしまう。辛うじてパンツの色(関東学院が白)で識別できる感じだから、キックの時のオフサイドを判定にも支障を来すのでは?と思われたくらい。どちらかがセカンドジャージーならば問題ないように思われたのだが。

そんなちょっとしたモヤモヤ感の中で試合が始まったが、キックオフから目の覚めるようなゲーム展開に目を奪われた。ボールがスピーディーかつワイドの展開される中での攻守の切り替えもありどんどん目の前の選手達のプレーに引き込まれていく。関東学院ならこれくらいできておかしくはない。しかし、東洋大もまったく遜色ないくらいにボールを動かすことができている。そもそも、これだけ統一された意思のもと、組織的にボールが動かせるチームが1部リーグに何チームあるか?というのが現状であることに一抹の寂しさを感じる。



そんな中での3分に早くも東洋大に激しいディフェンスからのターンオーバーにより先制点が生まれる。GKは失敗したものの、5-0での東洋大リードに早くも関東学院はピリピリしたムードに包まれる。8分、今度は関東学院が東洋大陣22m付近でのラインアウトを起点として右オープンに展開し右WTBがトライ。GK成功で7-5と逆転に成功。両チームによって繰り広げられる激しい攻防に観戦している方もヒートアップの状態になってしまった。

このトライに勢いを得た関東学院がペースを掴む。13分にも東洋大陣でのラインアウトを起点として絶妙のウラチョン(ウラへのチョン蹴り)をCTB12の選手が拾ってトライ。GK成功で14-5と関東学院がリードを拡げる。しかし東洋大も負けていない。18分、関東学院ゴール前のラインアウトを起点としてモールを形成しゴールラインを超えたもののグラウンディングできずにパイルアップ。東洋大は直後の5mスクラムからオープン展開でトライを奪う。GKも成功で12-14とビハインドを2点に縮めたところで東洋大応援席が大いに盛り上がる。「行けるぞ!」というムードがピッチ上に充満するような感じ。関東学院サイドの様子は推し量るしかないのだが、危機意識を抱いたファンも多かったのではないだろうか。

このトライに勢いを得て、前半の後半は東洋大のペースで試合が進む。とくに30分を過ぎたあたりでは関東学院は自陣ゴールを背に守勢に回る苦しい展開。しかし、ここで、あと一歩のところを踏みとどまれたことが大きかった。前半は一進一退の攻防の中、関東学院が2点のリードで終わるものの、内容的には東洋大がやや押し気味の印象。HB団がテンポよくボールを動かす東洋大恐るべし! それと同時に関東学院危うし?の前半でもあった。



◆後半の戦い/前半とはうって変わり完璧な出来を見せた関東学院

前半は東洋大の食い下がりを許した形の関東学院。しかし、後半はマイボールキックオフからギアを一気にトップに上げて東洋大陣に襲いかかる。相手の蹴り返しに対するカウンターアタックからボールを繋いで一気にトライラインまでボールを運んだ。開始から1分が経ったかどうかのタイミングでの鮮やかなノーホイッスルトライだった。関東学院は畳みかける。4分にもトライを挙げて28-12とリードを拡げる。このキックオフ早々のワンツーパンチは確実に効いた。

関東学院の試合は昨シーズンの入替戦以来。それからもうすぐ1年が経とうとしているわけだが、もしも?が許されたとして、昨年がこのチームだったら最下位になることもなかったのではと思わせる位に選手達の体格が一回り大きくなっていることが目を惹いた。とくに新人FBの川崎清純の191cm、105kgは1部リーグの15番の選手達を見回してもないサイズ。結果的に何度もキックオフの時に関東学院の選手達を間近で見る形になったのだが、既に1部リーグの面構えになっているように感じられた。1部を経験している選手が少ないとは言え、王者のDNAはしっかり受け継がれているとみるべきか。



その後も関東学院のアタックが冴えて15分に再びウラへのキックからトライを追加する。さらに20分、今度は相手ボールスクラムを強力にプッシュしてターンオーバーに成功してBKに展開してトライ。前半はやや劣勢とみられたスクラムもしっかり立て直した。42-12と関東学院がリードを大きく拡げたところでほぼ勝敗の行方は決まった。20分から30分にかけての時間帯には東洋大が攻勢に出て関東学院陣内で得点を伺う展開となるものの、惜しいミスもありなかなかトライラインを超えるまでに至らない。アタックもさることながら、関東学院の伝統といってもいい組織的なディフェンスが見事だった。

ゲームも終盤に近づいた30分以降の時間帯になると東洋大の選手達に明らかに疲れが見え、関東学院の自在にボールを操る展開となる。これも伝統と言っていいと思うが、関東学院の選手はボールを持った段階で必ず個々の判断が入る。ルーティーンワークでボールを回すことはなく、また、パス自体もオフロードのような「結果オーライ系」のものはまず使わない。パスの方向、長さ、速さにタイミングを工夫すれば相手ディフェンスを突破出来ることをお手本のように示してくれる。1部上位チームでもノールックパスやオフロードがかなり流行しており、その失敗がピンチを招く場面が多いことに改めて気付かされた。

関東学院は32分と42分にも得点を追加。やはり大型FBの川崎がライン参加すると関東学院のアタックは迫力を増す。また、この日光ったのがルーキーで司令塔を務めたSO芳崎のゴールキック。右隅や左隅といった難しい位置からも確実に決めて8/8のパーフェクトを達成。1部2部を通じてももっとも安定したプレースキッカーと言っていいだろう。前半とうって変わって、後半の関東学院は6トライを奪い無失点の完璧な内容。と同時に入替戦の切符ゲットも決めた。この内容なら来る入替戦も不安なく戦えるだろう。



◆試合後の雑感/1部チーム偵察隊には戦慄の内容

入替戦も近づいた時期での2部リーグの4強対決とあって、間違いなく1部リーグでこの中のチームと戦う可能性があるチームからはビデオを抱えた偵察隊が派遣されていたはず。自分達のチームと見比べながらも試合が進むにつれて(とくに第2試合は)危機感が募っていったのではないだろうか。「絶対に最下位になってはならない。」はおそらく各チームの共通認識だったと思われる。相手が東洋大あるいは國學院大にしても、パワーで対抗できたとして早いテンポのラグビーに巻き込まれたら厳しい戦いを余儀なくされる。それくらい1部リーグの関係者にとっては身の引き締まる試合内容だったと思われる。

逆に気楽な偵察隊気分で観ていた私にとっては、より楽しみが増したと言える。はっきり言ってしまうと観に来て良かった(一度は必ず観るべきだ)という気持ちで一杯。関東学院と東洋大あるいは國學院大のファンやチーム関係者の方々にとって気になる実力がどのくらいあるのか?だが、関東学院は現段階で1部リーグに所属したとしても上位の一角に食い込む力はあるように見えた。ただし、入替戦で戦うチームは強度の高いチームとの試合経験を積んでいる。2部リーグのチームにとっての不安材料はここだと思われ、また1部のチームはパワーで圧倒する戦いを挑んでくるはず。

内容は良くてもそれだけでは勝てないのがラグビーの理不尽なところ。それと、大学ラグビーにおいてもっとも恐ろしい敵は「己自身」であることは長い観戦歴のなかでも度々感じている。チームは1週間で(とくに悪い方に)変わってしまうことは普通に起こる。まだ少し先だが、自分達のラグビーに自信を持ち、そして慢心を抑えて戦って欲しいと切に願う。

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