こんにちは、石川です。

 

私は2年ほど前から、ひきこもり世帯の親と子の支援団体、KHJ高知県やいろ鳥の会さまとの関りがあり、「親講座」に呼ばれて、ひきこもっているお子さんの「親なき後」の対策について話してきました。

 

ファイナンシャルプランナーとして、なかなか就労できない子が、親が亡くなった後も生活に困らないように「親がどのような経済的準備をしたらよいか」という話をしてきたわけです。

 

しかし、現実的には、多くの親が「自分の生活費で手一杯」であったり、親が高齢で今から経済的準備は難しい、という状況でもあり、ひきこもっている子が働けないだろうか、という「願い」を聞くことになります。

 

ひきこもりだけでしたら、障害年金を受給できないし、障害児の親が加入する心身障害者扶養保険制度にも加入できないという現実は、親の焦りや、不安を助長するには十分でした。

 

ですから一人の県の職員さんが安芸地区で「農福連携」を積極的に行い、ひきこもりの子たちを就労支援しているという明るいニュースは、たちまち親の会の中で話題になりました。当然のことですよね。

 

支局長からの手紙 農福連携/中 石ころ拾いから /高知

 

この安芸市での取り組みは、高知モデルとして、県が各地で推進していますが、思うような広がりは見せていません。

 

地域福祉の中核を担う社会福祉協議会が積極的に関わってくれないからです。

 

今、ひきこもり支援を公的機関が行う場合、「生活困窮者自立支援事業」における「就労支援」で関わることが多いようです。

 

この生活困窮者自立支援事業は国が法律に基づき設置した事業であり、言い換えると「公的資金」が投入されています。


それゆえに支援員さんにも給料も支払えるのですが、ひきこもり支援団体などは制度による支援体制があるわけでなく、助成金などで運営しています。


継続的な支援をするには助成金を毎年貰うことが条件になるのと、そのような団体がひきこもり支援の専門職を常駐させることは事実上できないのです。


そんな状況から、行政や社協に「関わって欲しい」と願っても、制度に沿うようなやり方でしか支援をしてくれないので、行政の他部門の職員さんがひきこもり世帯から相談を受けても、支援そのものを支援機関が引き受けてくれなかったり、「制度外の対象者」であると言う理由で断られることも多いと聞きました。

 

ひきこもり世帯への支援の展開が見えないなか、連携を実践して、農福連携のモデルを作ってくれた県の職員と、その情熱に動かされた農家のような人が増えて欲しいと、親などが願うことは、そんなに無茶苦茶なことでしょうか?無理難題でしょうか?

 

就労先を作っても、それを上手く本人が使えなかったら逆効果ではないか、と言う福祉関係者からの意見がありました。


この意見には正直驚きましたが、生活困窮者自立支援事業でしか対応できないと考えている関係者が多くいることも表しています。


では、その生活困窮者自立支援事業が行われなければ、ひきこもり世帯への関りはしない、ということですか?できないということですか?


制度もなく、支援者の広がりもない時代から悩んで、苦しんで、模索をしてきた親や親の会や支援団体のことをどう思っていらっしゃるのか、お聞きしたいとすら思いました。

 

多くの福祉関係者は「就労だけでは、ひきこもり支援は上手くいかない」と言います。

 

その考えの中心にあるのは「就労したら、とりあえず支援は卒業だしなぁ」という認識でしょうか?

 

支援を卒業してもまた、本人にアクシデントがあったら、また支援が振り出しに戻ることを、支援者が懸念しているように思えます。

 

私が農福連携に興味を持って、少しは関わって欲しいと、行政や社協関係者にお伝えするのには「ある意味」があります。

 

それは先ほどのような「卒業」を目指す視点ではなく、「いくつかの選択肢を用意しておきたい」という考えによります。

 

「農業」と書かれた扉をいやいや開けなくてもいいし、できたら他の就労支援の扉もあって欲しいと考えています。

 

その就労を超時短就労やテレワークの形態でもいいし、就労体験の延長でもいいと思いますし、掃除のスキルを勉強に行ったらお掃除の仕事をしたくなった、でもいいのです。


そのプラットフォームを作るのは、行政や福祉関係者であって欲しいと思いますし、我々もお手伝いしたいと考えています。

 

農福連携に興味を持ってもらうとは、そうした就労先を準備しておく「第一歩」にすぎないのです。

 

大袈裟なことでも、かしこまったことでもなく、もっとシンプルなことなんです。

 

当然ですが、すぐに就労を必ずしなくてはいけないとも思いませんが、「就労したい」と本人が思い立った時に「ごめんね。そういう場所、準備してないから」となってしまうことが一番「勿体無い」と思っているのです。

 

こんな考え方をご理解いただける人が増えてくれて、一緒に取り組んでいただけたら、きっとひきこもり支援に「奥行」が生まれると感じています。

 

以上、数年ですが、ひきこもり経験があるファイナンシャルプランナーからの伝言でした。