『かさの女王さま』幸せなこども時代

絵だけを見たら中国のお話しかと思いましたが舞台はタイの山あいの村だそうです。
この村では何百年ものあいだ傘作りがおこなわれてきました。主人公の女の子ヌットの家でもかさを作っています。木と竹で骨を作るのはお父さん。かさに張る紙をすくのはおばあちゃん。そして絵をつけるのはお母さんの仕事です。
ヌットは自分が絵つけしたかさをほこらしげにかかげる女の人たちにずっと憧れています。
そんなある日ついにヌットも絵つけをさせてもらえることになりました。ヌットは上手に絵つけをしました。それを見たお母さん、お父さん、おばあちゃんは感心し、口々に褒めてくれました。お父さんはぎゅっとだきしめてくれました。
つぎの日ヌットは絵つけをしていない5本の白いかさをまかせてもらいます。お手本どおりに花と蝶を描くつもりでしたが、まず蝶をかいたヌットはつい蝶を追いかけるゾウをかいてしまいます。その後も夢中になって生き生きと動くゾウをかくヌット。ヌットは象が大好きなのです。
それに気づいたお母さんとお父さんは心配そうに困った顔をうかべます。 
作ったかさをおろす村のお店では花と蝶のかさしか売らないのです。
ここでの一文が印象に残ります。
「絵つけはあそびではなくしごとでした」
ヌットもそれがよくわかっているのでそれからは花と蝶をせっせとかいて働きます。でも夕方になると余った竹と紙で小さなかさを作りゾウの絵をかいてはまどべに並べるのでした。
さてこの村では毎年お正月に一番の絵つけをした人がかさの女王さまに選ばれます。
今年はなんと王様が選んでくださることになりました。王様が選んだのは…


幸せなこども時代、という言葉が浮かびました。6歳の娘がこの本すごい好き!と気に入りましたがそうだろうなあ、と思います。大人のわたしでさえ、ヌットのまわりにいる大人たちの、穏やかで、足が地についていて、愛情深い感じにすごく安心するのです。こどもがちゃんと大人に守られている安心感。
ちなみひそかに新鮮だったのは、王様がヌットたちに〇〇ですか?のような丁寧な言葉で話しかけるところ。原文は英語なのでこれは訳者さんのお仕事かと思いますが全体の優しい雰囲気にマッチしていて素敵でした。
作者のシリン・イム・ブリッジズはカリフォルニア生まれの中国系アメリカ人、絵を描いたユ・テウンはニューヨーク在住の韓国人だそうですが、言われてみれば絵もお話しも素朴な中に、どこか現代的で自由な香りがする気がします。




幸せで優しい絵本、おススメです。

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