徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

大阪で福田平八郎展を見学してから関西フィルの定期演奏会で新作初演

GWは二泊三日の近場遠征

 今日は関西フィルの定期演奏会に出向くことにする。ただ永らく京都を訪問していないことから、京都地区に立ち寄るべき展覧会が多数ある。そのことから、関西フィルのコンサートの後、京都に移動してそこで二泊して美術館を回るという計画を立てた。

 今日は午前中の比較的早い時間帯から出発する。先日寝過ごしたせいで大阪地区でこなせなかった予定をこの際にこなしておこうという考え。JRで大阪駅に到着すると、今後のことを考えて機動力を削ぐキャリーはコインロッカーに入れておくことにする。

難波高島屋周辺は様変わりしていてサッパリ分からん

 身軽になると地下鉄でなんばに移動。最初に立ち寄るのは高島屋別館。ここの高島屋史料室で竹内栖鳳展が開催されているとのことから立ち寄ることにした。

 ミナミは私にはあまり土地勘がない上に昔と構造が変わってしまっているために戸惑う。Google先生にお伺いを立てながら10分ほど歩く。

どうにかこうにか高島屋別館に到着

 

 

「人間 栖鳳 生誕160年知られざる竹内栖鳳」高島屋史料館で7/1まで

 竹内栖鳳は20代半ばから高島屋の画工として勤務していたとがあるという。その頃の高島屋では輸出用染織品の下絵を制作するのに、栖鳳ら若い画工が活躍していたのだという。その頃に栖鳳が監修した染織品を始めとして、高島屋と深いかかわりのあった栖鳳の絵画などを展示とのこと。

 染織品についてはいきなり最初にビロード友禅壁掛の下絵が展示されているが、これだと確かにほぼ日本画であるので、竹内栖鳳が下絵を受け持ったというのはまあ理解のできるところ。もっともこれ以外の着物のデザインなどになると、あえて栖鳳の個性云々と言うところでもない。

栖鳳によるビロード友禅壁掛大下絵 猿猴

 これ以外には栖鳳の絵が数点。また十二支を集めたスケッチのようなものが展示されていて、虎の絵などはいかにも栖鳳らしいところである。

十二支の画帳が展示されている

虎は栖鳳らしい題材

馬などもやはり手慣れたもの

猿はいかにも栖鳳らしい

 展示室が狭いので作品数は限られるが、無料の展覧会であるのでまずまずというところだろう。

 

 

中之島美術館はとんでもないことになっていた・・・

 栖鳳展の見学を終えると次の目的地は中之島美術館。ここで開催されている「福田平八郎展」が本来は前回の大阪訪問時に立ち寄る予定だった場所。前回の6オケの時に家を出るのが遅すぎて(その上に開演時刻が尋常でなく早い)、中之島香雪美術館にたちよるのがやっとで、おかげで訪問が会期末ギリギリになってしまった。

 最初は地下鉄四つ橋線のなんばまで歩いてそこから肥後橋を目指そうと思っていたが、なんばの町が複雑な上に、高島屋前が劣化魔改造されていて動きにくくて仕方ない。地下に潜ったと思ったら御堂筋線に前途を阻まれたので、結局は御堂筋線と四つ橋線を乗り継ぐことにする。

何とか中之島美術館に到着

 なんとか中之島美術館に到着したが、ここで呆気にとられることに。券売所の前に長蛇の行列でここだけで20分は待たされそうである。どうやら「モネ展」に押しかけている客が大混雑している模様。こりゃとてもじゃないがつきあい切れんなと思っていたら、ネット購買のQRコードが掲示してあり、こちらから購入可能な模様。そこで慌ててそちらにつなぐ。途中でサーバエラーが出たりなど結構四苦八苦したが、チケットを購入。

券売所前に長蛇の列

 さて入場はと思って振り返るとそちらも大行列。どうやらモネ展は大行列でチケットを購入した後に、入場するのにも大行列で並ぶ必要があるらしい。とりあえず「福田平八郎展」は入口を分けてあって、そちらはガラガラなので問題なく入場できる。

そして振り返ると入場待ちで長蛇の列

 

 

「没後50年 福田平八郎」中之島美術館で5/6まで

福田平八郎展は普通の入り

 正直に言うと、私は最初は福田平八郎について大きな誤解をしていた。と言うのは私が最初に見た福田平八郎の作品が「水」だったために、福田平八郎とは抽象画家であると思っていたのである。しかし実は彼の作品はあくまで写実に基づいており、徹底的な写実を行った後に、それを簡素化する方向に進んでおり、あくまで写実の画家であり、本人自身も「私には抽象画は描けない」と明言しているのである。

福田平八郎「水」最初にこれを見たら抽象画だと思ってしまう

 本展では最初の平八郎の修業時代の作品から始まる。この時代の特徴はとにかく画風が全く定まっていないことだ、かなり綿密な写実画から大和絵的なさっくりしたものまで、あらゆるものを試しているのが分かる。そしてその結果として自身には写実しかないという結論に至ったようである。「安石榴」などはまさにその時期の作品であり、本作を見て平八郎が抽象画家などと思う者は誰もいまい。

「安柘榴」これなどは超精密写実

さらに「朝顔」

 それが段々と装飾性を帯びるようになってきて、徹底的に写実を突き詰めた結果として簡素化の方向にたどり着いたという。平八郎の代表作とも言える重要文化財の「漣」はまさにそういう一品。一見抽象画的にも見えるが、よく見ると水の表面の煌めきを極めて写実的に捕らえているのだということが分かる。単に思い付きで書いているのではない証拠に、いくつものスケッチが残っているようである。

福田平八郎の代表作にして重文の「漣」

 

 

 そして積もった雪を描いた作品や、「水」と同様に非常に抽象画のように見える「氷」なども登場。これも実際に張った氷を観察してのものだという。

「氷」抽象画的だが、実はこれも写実

 晩年になってくると段々と自由な境地になっていったようで、伸び伸びとしたオーソドックスな絵画が増えてくる。オーソドックスな静物画である「桃」や、独特の明るい色使いが印象的な「海魚」など。

オーソドックスな「桃」

色遣いが独得の海魚

 晩年の彼は子供の絵の自由さを好んだという。そして自身の自由の境地は形態までも簡略化していったようで、「遊鮎」などはまさに子供の絵のような形態の簡略化。

まさに子供の絵的な「遊鮎」

 そして近年修復がなったという「雲」のようないかにも爽やかで気持ちの良い絵も登場する。

「雲」

 以上、福田平八郎の画業を振り返ると大回顧展である。正直なところ福田平八郎と言う画家に明確なイメージを描けていなかった私としては、鑑賞前は「正直、興味が持てだろうか?」と半信半疑なところがあったが、こうして一望すると画家の全体像が浮かび上がってきて、非常に興味深いものがあったのである。

 

 

 平八郎展の鑑賞を終えると美術館を後にする。それにしても本展もモネ展も共にGW明けまでなのでラストスパートだが、モネ展の異常な混雑がこちらにも悪影響しているのではという気もする。私ももし両展をはしごするつもりだったら、多分「モネ展」で力尽きて、「もう平八郎はパス」となった可能性が高い。まあこういう事態も想定して、「モネ展」は比較的早い時期に訪問したのであるが。そう戦いだけでなく、美術館見学も二手三手先を読んで行動することが重要なのである。なお私が平八郎展から出てきた時には、入場待ち行列は屋外にまで伸びていた。

私が美術館を出る時には入場待ち行列は館外にまで

 展覧会の見学を終えた時には12時半頃。いよいよホールへ移動だが、肥後橋駅は少しあるし、そこから西梅田に移動してもそこからまた歩きであることから、ひと思いにここからプラプラとホールまで歩くことにする。

 福島駅までは10分ちょっとぐらいで到着する。そこから昼食を摂る店を探すが、頭にあったやまがそばは休日ということでかお休み。魚心はやはりご臨終のようだし、イレブンは遠くに移転してしまったし、カレーは食べる気がしないということで、やむなく「まこと屋」に立ち寄って「背脂醬油ラーメンと半炒飯のセット(1110円)」を注文。

まこと屋で昼食にする

 ラーメンは細麺でかなり濃い目のスープと合わせてマズマズ。炒飯の味付けも悪くないのだが、今日は私の体調の関係か、全体的にいささか塩気を強く感じる(ここまで歩いて汗も少しかいたので、むしろ塩気を少なく感じても良さそうなものだが)。結局はチャーハンを少し残して昼食を終える。

ラーメンと半炒飯のセット

麺は細麺

 昼食を終えるとホールへ。ホールの中は結構混雑している。藤岡のプレトークによると今回はチケット完売とのことである。

ザ・シンフォニーホールへ

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第345回定期演奏会

今回は最大14型編成

[指揮]藤岡幸夫
[ヴァイオリン]木嶋真優
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

林そよか:ヴァイオリン協奏曲(※新作初演)
マーラー:交響曲第1番 ニ長調 「巨人」

 一曲目は木嶋のために新進気鋭の林が作曲したという協奏曲。藤岡の依頼らしく、藤岡のダメ出しで二楽章が丸ごと入れ替えなどの紆余曲折を経ながら、木嶋との密な打ち合わせなども行いつつ作曲された力作とのこと。

 藤岡が出してくる現代曲の常で、いかにも現音という奇々怪々な音楽ではなく、もっと普通に聴ける魅力的な曲である。また木嶋と密に打ち合わせを行ったと言うだけあって、彼女のテクニックと表現力を縦横に引き出すことが前提となっている作品である。全面入れ替えをしたという第二楽章も、前や後ろとのつながりが良く座りが良い。

 なかなかに興味深い曲であり、今後も木嶋のレパートリーの一つとして披露されていくのではないか期待できる。

 二曲目はおなじみのド定番中のド定番である。もっともド定番になっているのは今日のことであり、藤岡のプレトークによると作曲当時はあまり受け入れられず、マーラー自身もしばし演奏しなかったという。藤岡の話によると、俗な民謡とドンチャン騒ぎが入り混じる第三楽章が当時の聴衆には奇怪であると受け入れられなかったとか(今日ではむしろ聞かせどころの一つなんだが)。

 藤岡の解釈は特に奇をてらったものではないが、かなり陽性で力強いという印象の演奏である。関西フィルも溌剌としたというイメージの音色を出しており、演奏のまとまり自体は非常に良いと感じられた。こういうノリの良さはいかにも藤岡らしいところ。そのままラストのクライマックスまで持って行ってやんやのエンドと言うとこである。

 非常に気持ちの良い演奏に場内はなかなかの盛り上がりとなっていた。

 

 

京都に移動して夕食

 コンサートを終えると大阪駅でキャリーを回収してから京都に移動することにする。明日、明後日と京都の美術館を回る予定なので、京都に宿泊することにしている。それにしても疲れた。今日はいささか無理をしすぎた気がする。新快速に乗り込んだ途端にグッタリしてしまった。とりあえず京都駅に到着すると、若干早めであるがホテルに向かう前に夕食を摂っておくことにする。駅ビルのレストラン街をプラっと回って、結局は「美々卯」に入店する。

私の退店時には既に待ち客が

 注文したのは鴨うどんのセット。これのうどんを大盛にする。まあうどんが美味いのは当たり前なんだが、さすがに美々卯だ。鴨肉がなかなかに良いものを使用しており、これがジューシーで非常に美味い。ご飯や小鉢の味も文句ない。もっともさすがに税込み2839円というのはいささか高すぎるが、5000円を超えるうどんすきがメインの高級店では、これでも粗食である。もう今日は自分にご褒美ということにしておこう。

高級鴨うどんセット

 

 

 高級うどんの夕食を終えると地下鉄でホテルに移動する。今日宿泊するのはチェックイン四条烏丸。そもそもは私の京都の定宿なんだが、駐車場がないことでコロナ下では永らく使用していなかったホテルである。かなり久しぶりの宿泊となるが、その間に1階にテナントに入っていたセブンイレブンと、2階にテナントに入っていた居酒屋がご臨終してしまったようだ。そういうわけでいささが利便性が落ちている。

セブンイレブンが亡くなってしまっている

 私が宿泊するのは異様に狭い和室。しかも窓は隙間を開けたら隣のビルの壁と言う居住環境劣悪な部屋である。しかしGWの京都で5000円台で宿泊できるホテルなんてほとんどないことからの選択である。

布団を置いたら一杯の和室

窓はこれぐらいしか開かず

しかもその外は隣のビルの壁

 部屋に荷物を置くと、何はともあれ大浴場に入浴に行く。今日は何だかんだで1万7000歩以上という私の完全に限界を超えた距離を歩いている。おかげで足を湯につけた途端に攣りそうになる始末。とにかくガチガチになった足やら背中やらをほぐして、明日キチンと動けるようにしておく必要がある。とりあえず湯船でゆったりとくつろぐことにする。

仕事環境は構築してたんだが、使うだけの気力がない

 入浴を終えて部屋に戻ってくるとグッタリである。本当はPC作業をするための環境は整えていたんだが、机に向かう気力もなければ頭も完全機能停止していて、文章が一行も浮かんでこない。仕方ないので部屋に敷いてある布団の上でグッタリ。テレビをつけるが例によって見る気のする番組は皆無。と言うわけで結局は数時間そのままグダグダした挙句に、早めに就寝してしまう。

 

 

この遠征の翌日の記事

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