0から始める著作権

  このブログでは著作権について解説していきます。

著作物をどのように利用するか(4)

前回まで、著作物を利用するときに、著作権者の許諾を得ることを考えてきました。著作権管理団体を活用することによって、比較的簡単に著作物の利用許諾を得ることができるという話もしました。

ところで、著作物を利用するに当たって、必ず著作権者の許諾を得なければいけないのでしょうか。

実は、著作権者の許諾を必要としない場合もあるのです。許諾を得ないで著作物を利用することができる場合がある・・・ 今回は、その場合について見ていきたいと思います。

 

以前のブログで、著作権には保護期間があるという話をしました。著作権による保護は永遠ではないのです。そうすると、ある著作物について、仮に著作権の保護期間が過ぎていれば、著作権者に許諾を得ないでその著作物を利用することができます。例えば、江戸時代の松尾芭蕉の俳句(言語の著作物)は、松尾芭蕉の死後70年以上が過ぎていますので、複製権や公衆送信権などの著作財産権の保護期間がとっくに過ぎています。ですので、誰でも松尾芭蕉の俳句をコピーして自分のブログやSNSに掲載することができます。

この場合のように、著作物について著作権の保護期間が経過するなどして著作権が消滅した場合、その著作物はパブリックドメイン(公有物)に着した、と言われます。著作物がパブリックドメインに着していれば、誰でもその著作物を利用できます。

松尾芭蕉の俳句はパブリックドメインに帰しているので、誰でもその俳句を複製したり、公衆に送信することができるのです。

 

さて、皆さんは、スマートフォンの待ち受け画面や壁紙に、好きな芸能人や動物の写真を使うことが多々あると思います。その写真は、自分で撮ったものではなく、芸能人や動物の公式Webサイトに掲載されている写真をコピー(クリッピングやスクリーンショット)したものかもしれません。コピー、・・・これは複製ですよね。写真は著作物ですので、写真のコピーは著作家者が有する複製権の侵害になっているのかもしれません。そうすると、スマホの待ち受け画面にその写真を使ってはいけないのでしょうか・・・

 

実は、著作権法では、著作物を自由に利用してよい場合を幾つか定めており、その場合の一つとして、「著作物の私的使用」であれば著作権者の許諾を得なくても著作物を複製することができるとしています。ですので、自分のスマホの待ち受け画面に使うために、公式Webサイトに掲載されている写真をコピーすることは、「著作物の私的使用」に該当するので、全く問題になりません。

著作権法は、このように、著作物の公正な利用についても定めているので、著作者だけではなく、著作物を利用する人のことも考慮しているのです。著作物を正しい方法でどんどん利用することを推奨しているのです。

 

以前、著作権法第1条(著作権法の目的)の要点の一つが

 著作者の権利の保護を図って、文化の発展(著作権法の最終目的)に役立てていくことである、と紹介しました。

もう一つの要点が、

 著作物の公正な利用に留意し、文化の発展(著作権法の最終目的)に役立てていくこと、なのです。

 

つまり、著作権法の最終目的は文化の発展であり、そのための手段として、

・著作者の権利を保護する

著作物を公正に利用する

ことが求められているのです。

著作権者(著作権を持っている人)と、著作物を利用する人の双方の立場を考慮して、バランスをとっているのです。

このバランス感覚を会得することが、著作権を考える上でとてもとても大切になるのです! 著作権を持っている人と、著作物を利用する人が、どちらも得をして、かつ不利益を被らないというバランスです。

 

以上述べたとおり、許諾を得ないで著作物を利用することができる場合は、次の2つの場合になります。

1 著作物がパブリックドメインに着している場合

2 著作権法が定める自由利用に該当している場合

 

次回は、2番目の著作物の自由利用について更に見ていきましょう。

 

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著作物をどのように利用するか(3)

前回、著作物を利用したい者が、どのように著作権者と利用許諾について交渉するかが重要な問題になると述べました。例えば、たまたま見かけたイラストが気に入って、自分のWebサイトやSNSに掲載したい場合に、そのイラストの著作権者を探し出し、具体的なライセンス契約にこぎつけるという作業が発生します。

しかし、この作業を個人で行うのは大変です。だからと言って、いきなり法律事務所などに駆け込んで相談するというのも難儀です。

 

このようなとき、著作物の利用について情報提供を行い、著作権者との仲介を行い、利用許諾を行なってくれる団体に相談するという手があります。その団体は、著作権を管理する団体であり、著作権者に代わって、著作物を利用する者からライセンス料を徴収します。

著作物にはいろいろな種類があるので、著作権管理団体も数多くあります。

以下に、著作物の種類ごとに、利用許諾を代行する著作権管理団体の幾つかを紹介します。

 

○ 音楽の著作物の利用

 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)

 

○ 小説・脚本の著作物(言語の著作物)の利用

 公益社団法人日本文藝家協会

 協同組合日本脚本家連盟

 協同組合日本シナリオ作家協会

 

○ 美術の著作物の利用

 一般社団法人日本美術家連盟(JAA)

 一般社団法人日本美術著作権協会(JASPAR)

 

これら以外にも著作権管理団体は多数あります。詳しくは、文化庁のWebサイトで紹介されています(「著作権等管理事業者」で検索)。

例えば、イラストの著作物の利用許諾については、上記の日本美術著作権協会のほか、日本ビジュアル著作権協会でも取り扱っています。

このような著作権管理団体を活用することによって、著作物を利用したい者(個人や法人)が、比較的簡単に著作物の利用許諾を得ることができます。著作物を利用したい者にとって、利用許諾の代行を行う著作権管理団体の存在は知っておいて損はありません。

 

ところで、そもそも著作物の著作権者が誰だかわからない場合はどうすればよいのでしょうか。また、誰だかわかったとしても、その人がどこにいるのかわからないという場合もあります。

このような場合に、著作権者から利用許諾を得る代わりに、文化庁の裁定制度を活用して、ライセンス料に相当する補償金を供託して著作物を利用することができます。実際に裁定を申請するには、著作権者の情報を自ら収集した事実や、(知り得た)著作権者に対して連絡を試みた事実を報告しなければなりません。

著作権者が不明な写真や曲などをどうしても利用したいというニーズがあるとき、このような裁定制度の存在を知っておくと得なこともあるでしょう。

 

次回もまた著作物の利用について考えていきましょう。

 

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著作物をどのように利用するか(2)

前回は、著作物の利用の許諾の話をしました。著作物を利用することについて、著作権者に有償で認めてもらう、という話でした。

この許諾は、著作物を利用したい人と、著作権者との間の契約です。この場合の契約はライセンス契約になります。ライセンスというのは利用許諾のことであり、利用許諾の契約だからライセンス契約になるのです。

 

そして、このライセンス契約では、著作物を利用する人が著作権者に金銭を支払うことになり、その金銭はライセンス料と言われます。もちろん、著作権者は無償で著作物の利用を許諾することもあります。この場合、ライセンス料は発生しません。また、契約ですので、様々な条件を契約の中に盛り込みます。例えば、イラスト(美術の著作物)の利用についてライセンス契約をするとき、著作物の利用期間(1年間だけの利用なのか数年間の利用なのか)、利用条件(1つのSNSに掲載するのか複数のSNSに掲載するのか)などの条件を決めて、それらを盛り込む必要があるのです。

でも、ここで皆さんは疑問に思うと思います。このようなライセンス契約はとても面倒ではないか、もっと簡単なわかりやすい方法で著作物を利用できないか、という疑問です。しかも、著作権者が無償で著作物の利用を許諾したい場合には、尚更簡単な方法がよいのではないか、と思うでしょう。これらはもっともな疑問です。

 

実は、このような疑問に応じて、著作権者が、自分の著作物を他人が利用できるかどうか、利用できるとしたらどのような条件で利用できるかどうかを簡単に示すためのマークが考案され、既にその表示が使われています。皆さんも見たことがあるかもしれません。以下に、2つの例を紹介します。

 

○ 文化庁の「自由利用マーク」

 文化庁のWebサイトによれば、「自由利用マーク」は、自分の著作物を他人に自由に使ってもらってよいと考える場合に、その意思を表示するためのマークです。例えば、「コピーOK」の文字が入ったマークがあり、このマークを著作物に付けておけば、他人は安心してその著作物を複製したり、無償配布できます。

 

○ クリエイティブ・コモンズのマーク

 クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのWebサイトによれば、このマークは、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません」という意思表示をするために、基本となる4種類の条件(組み合わせにより6種類になる)を定めて、どの条件になっているかを表示するためのマークです。作品がインターネット上で公開される場合に、検索されやすくなるようなメタデータも提案されています。

 

これらのマークについて詳しくお知りになりたい方は、文化庁のWebサイトや、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのWebサイトをご覧ください。

これらのマークは、主として、著作権者が無償で著作物の利用を他人に許諾したい場合に用いられています。

それでは、著作権者が、有償で著作物の利用を他人に許諾したい場合はどのようにすればよいでしょうか。例えば、イラストレーターが、自分の描いたイラストをWebサイトやSNSで公表して、有償でのイラストの利用を広く呼びかけるという方法があります。個人としてそれをやるのは大変ですので、そのような呼びかけを代行してくれるサービスもあります。

 

そして、イラストを見た側、イラストを利用したい側が、そのイラスト(美術の著作物)を利用するために、どのように著作権者を探し出し、どのように利用許諾について交渉し、どのような条件でライセンス契約をするか、という問題も重要になってきます。

次回は、この問題について、更に詳しく見ていきましょう。

 

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著作物をどのように利用するか(1)

前回まで、著作権には様々な種類があることを見てきました。そして、著作権は、著作者人格権と著作財産権に大きく分かれ、後者は他人に譲渡できることを知りました。

著作財産権を所有している人は、元々は著作物を創作した個人や法人(著作者)ですが、著作財産権は譲渡されることもあるので、その個人や法人が著作財産権を所有していない場合もあります。

そこで、実際に著作財産権を所有している人を「著作権者」と呼ぶことにします。もちろん、著作財産権を他人に譲渡していなければ、著作物を創作した個人や法人(著作者)が著作権者です。

 

著作権者は、著作財産権を所有しているので、複製権や公衆送信権などを持っています。例えば、あるイラストについての著作財産権を所有している著作権者は、そのイラストを複製したり、複製したものをWebサイトにアップロードして公衆に送信することができます。

もし貴方が、そのアップロードされたイラストを見て、自分のSNSに一定期間だけ載せたいと思っても、貴方は複製権や公衆送信権を持っていないので、イラストをSNSに載せることはできません。

勝手に載せたらどうなるでしょうか。その場合、複製権や公衆送信権を持っている著作権者からクレーム(警告)が来るかもしれません。そして、最悪の場合、著作権者から著作権侵害で訴えられるかもしれません。

それは困りますよね。ですので、イラストをSNSに勝手に載せる訳にはいかないのです。ではどうするか・・・

 

簡単に思い付く方法は、貴方がイラストの著作権者になる、という方法です。いま著作財産権を所有している著作権者から、その著作財産権を譲り受けるという方法です。しかし、1つのイラストだけ著作財産権を譲り受けるのは現実的ではなく、例えば、いま著作財産権を所有している著作権者が会社(法人)であれば、ビジネスライクに多くのイラストの著作財産権を貴方に売り付けてくるでしょう。

貴方は、1つのイラストをSNSに載せたいだけなのに、しかも一定期間だけ載せたいと考えているのに、話は大ごとになってしまいます。

 

このようなとき、とてもよい方法があります。

それは、著作権者に対して、イラスト(美術の著作物)をSNSに載せることについて、有償で認めてもらうという方法です。著作権者が持っている著作財産権はそのままとし、イラストをSNSに載せることについて、金銭を払うことによって著作権者に認めてもらうのです。この「認めてもらうこと」を法律用語で「許諾」と言います。

著作権法は、著作物を利用することについて、著作権者から利用の許諾を得ることができると定めています。

著作権者が著作物の利用の許諾にOKすれば、貴方はイラストを利用することができるのです。

さあ、貴方はイラストをSNSに載せることができます。でも、ここで注意しなければならない点があります。

貴方は、イラストを勝手に変更することはできないのです。例えば、イラストがつり目をした犬の顔であるとき、貴方が勝手にタレ目に変更することはできないのです。もしそれをすると、イラストの著作者の同一性保持権を侵害してしまうからです。

仮にイラストの著作者が他人に著作財産権を譲渡していた場合、その他人が著作権者になっていますが、同一性保持権は著作者に残っているので、著作者が持っている同一性保持権を侵害してしまうのです。

 

次回は、著作物の利用の許諾について、更に見ていきましょう。

 

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著作権の種類には何があるのか(9)

前回は、同一性保持権、公表権、氏名表示権の3つを紹介しました。これらは、著作者が他人に譲渡できない権利、すなわち、著作者に固有の権利でした。

著作者に固有ですので、著作者が他界した場合にはこれらの権利は消滅します。また、著作者が会社などの法人であれば、その法人が解散した場合に消滅します。

 

ただし、著作者が他界した後でも、その著作者が創作した著作物を他人が世に示すときに、著作物の同一性を損ねるようなことはしてはなりません。また、例えば、もし著作者が生前に日記を非公表のものとして書いていたら、他人が勝手にその日記を公表してはいけませんし、ある俳人(著作者)が生前に俳句には必ず氏名を表示するように決めていたら、他人は俳人の氏名付きでその俳句を世に示さなくてはなりません。

 

このように、著作権法は、著作者が他界した後でも、あたかも著作者が生きているかのような権利、著作者の人格を尊重するような権利を3つ定めているのです。

実は、著作権法は、同一性保持権、公表権、氏名表示権の3つを「著作者人格権」として括っています。

「~人格権」っていい言葉ですよね。Wikipediaによると、人格権 = 個人の人格的権利を保護するための権利、とのこと。個人が創作したものを尊重する著作権法ならではの命名です。

そして、この著作者人格権と区別するために、複製権や公衆送信権などの他人に譲渡できる著作権を「著作財産権」ということがあります。

 

さあ、著作者人格権と著作財産権を区別して、まとめてみましょう!

 

 

○ 著作者人格権

 ・同一性保持権

 ・公表権

 ・氏名表示権

 

○ 著作財産権

 ・複製権

 ・上演権

 ・演奏権

 ・上映権

 ・公衆送信権

 ・口述権

 ・展示権

 ・頒布権

 ・譲渡権

 ・貸与権

 ・二次的著作物を創作する権利(翻訳権、翻案権等)

 ・二次的著作物を利用する権利

 

まとまりました。ここまで読んでくれた皆さんに、著作権の全貌をお見せできることができました。

次回からは、また違った視点で著作権について見ていきたいと思います。

 

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著作権の種類には何があるのか(8)

前回は同一性保持権の話をしました。著作物の内容やタイトルが著作者の許可なしに他人が勝手に変えられないという権利でしたね。

この同一性保持権も他人に譲渡できるのでしょうか。

実は、著作権法は、同一性保持権は他人に譲渡できないと定めています。このことはとても重要です。

もし同一性保持権が著作者から他人に譲渡できてしまうと、この同一性保持権という権利の意義が失われてしまいます。何故なら、同一性保持権が著作者の手を離れてしまい、著作物について著作者のコントロールが効かなくなり、著作物がどんどんつくり変えられていくからです。

 

著作物を創作したのは著作者です。もし同一性保持権が著作者から他人Aに移って著作物が変えられ、その後他人Bに移ってまた変えられ、そして更に他人Cに移って、、となっていくと、最初の著作物のかたちは多分失われてしまうでしょう。

それは、著作物を創作するという人間の行為をおとしめることであり、創作をした著作者を侮辱するようなことであるといえます。

真摯に苦労して創作した著作物は、たとえ複製権が他人に移ったとしても、その他人が勝手につくり変えることはあってはならない。

著作権法は、著作者による著作物の「創作」に対して、最大の敬意を払っているのです。

法律の第1条にはその法律の目的が定められていることが多いです。著作権法の第1条の要点は次のとおりです。

 著作者の権利の保護を図って、文化の発展に役立てていく。

 

まずは、著作物を創作した著作者の権利を保護する。これが著作権法の最終目的(=文化の発展)を導きます。(著作権法第1条には、他の要点もありますが、それは後のブログで紹介します。)

同一性保持権という権利があるので、著作者は、自分が創ったものが他人によってつくり変えられることはないという安心感を得ます。著作者は安心して次々に著作物を創作して、その著作物についての複製権を他人に譲渡することができるのです。

 

したがって、著作権には、他人に譲渡できる複製権のような権利と、他人に譲渡できない同一性保持権のような権利がある、ということになります。

この区別はとても重要です。複製権のような譲渡できる権利は他にもありましたね。公衆送信権、二次的著作物を創作する権利、二次的著作物を利用する権利、展示権などでした。

他人に譲渡できない権利は同一性保持権の他にもあるのでしょうか。

 

著作権法は、他人に譲渡できない権利として、同一性保持権の他に、次の2つの権利を定めています。

 ○ 公表権   ~ 著作者が自分の著作物を公表するかしないかを自分で決められる権利

 ○ 氏名表示権 ~ 著作物を公表するときに、氏名を表示するかしないかを自分で決められる権利

         

そうすると、他人に譲渡できない権利、すなわち、著作者に固有の権利は、同一性保持権、公表権、氏名表示権の3つになります。

次回は、これまで出てきた幾つかの権利を分類して整理してみましょう。

 

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著作権の種類には何があるのか(7)

前回では、複製権などの著作権が、他人に譲渡することができるという話をしました。複製権などの著作権が、譲渡可能な権利である、すなわち、財産のような性格を持っているという話でした。

 

ところで、小説家などの著作者が、自分が創作した物を他人に譲渡した後に、その他人が創作物を勝手に作り変えてしまったとき、著作者はどう思うでしょうか。例えば、仮に貴方が小説家であるとして、貴方が書いた小説の複製権と公衆送信権をブロガーに譲渡し(二次的著作物を創作する権利は譲渡していないと仮定します)、ブロガーが小説の一部を改変してブログに掲載したとき、貴方はどう思うでしょうか。

いったん譲渡したのだから、ブロガーが小説の内容を改変しても構わないと思うでしょうか。でも、それが小説の最も重要な部分だったらどうでしょうか。ブロガーが貴方に無断で勝手にその重要部分を改変したことにきっと腹を立てることでしょう。それは当然のことです。小説の創作というのは相当困難なものであり、その重要部分の創作にどれだけの心血を注いだか、創作をした貴方以外の人は知る由もないからです。

 

実は、著作権法は、小説家のような著作者がそのような苦い思いをしないような権利を著作者に与えています。

それが「同一性保持権」です。同一性保持権は、小説の内容やタイトルが小説家の許可なしに勝手に他人が変えられないという権利です。これはとても重要な権利です。

 

この同一性保持権を小説家などの著作者が持っていることによって、著作者は安心して著作物を譲渡することができます。

例えば、もし貴方がイラストレーターだとして、この同一性保持権を持っていなかったら、貴方は自分が苦労して創作したイラストを安易に譲渡することはできません。譲渡した後に他人が何らかの意図を持って、そのイラストの一部を作り変えてしまうかもしれません。そしてその改変部分が、自分が最も大事だと考えているイラストの部分だったら、居ても立ってもいられなくなる・・・

譲渡したこと自体を悔やむことになります。そうすると、貴方はイラストを譲渡することにためらいを抱くことになってしまいます。

そのためらいを消し去るのが、この同一性保持権です。

私は、この同一性保持権の存在が、著作権法の最も素晴らしい点の一つであると考えています。

自分が苦労して創作した物について他人が勝手に書き変えることができないという同一性保持権は、他人の行為を制限するものであり、この他人の行動制限は、著作者が創作した物(著作物)に最大の敬意を払うものであって、著作者に独自の創作を促す要因になっているからです。

 

次回は、この同一性保持権の性質について更に考えていきましょう。

 

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