0から始める著作権

  このブログでは著作権について解説していきます。

著作権の種類には何があるのか(7)

前回では、複製権などの著作権が、他人に譲渡することができるという話をしました。複製権などの著作権が、譲渡可能な権利である、すなわち、財産のような性格を持っているという話でした。

 

ところで、小説家などの著作者が、自分が創作した物を他人に譲渡した後に、その他人が創作物を勝手に作り変えてしまったとき、著作者はどう思うでしょうか。例えば、仮に貴方が小説家であるとして、貴方が書いた小説の複製権と公衆送信権をブロガーに譲渡し(二次的著作物を創作する権利は譲渡していないと仮定します)、ブロガーが小説の一部を改変してブログに掲載したとき、貴方はどう思うでしょうか。

いったん譲渡したのだから、ブロガーが小説の内容を改変しても構わないと思うでしょうか。でも、それが小説の最も重要な部分だったらどうでしょうか。ブロガーが貴方に無断で勝手にその重要部分を改変したことにきっと腹を立てることでしょう。それは当然のことです。小説の創作というのは相当困難なものであり、その重要部分の創作にどれだけの心血を注いだか、創作をした貴方以外の人は知る由もないからです。

 

実は、著作権法は、小説家のような著作者がそのような苦い思いをしないような権利を著作者に与えています。

それが「同一性保持権」です。同一性保持権は、小説の内容やタイトルが小説家の許可なしに勝手に他人が変えられないという権利です。これはとても重要な権利です。

 

この同一性保持権を小説家などの著作者が持っていることによって、著作者は安心して著作物を譲渡することができます。

例えば、もし貴方がイラストレーターだとして、この同一性保持権を持っていなかったら、貴方は自分が苦労して創作したイラストを安易に譲渡することはできません。譲渡した後に他人が何らかの意図を持って、そのイラストの一部を作り変えてしまうかもしれません。そしてその改変部分が、自分が最も大事だと考えているイラストの部分だったら、居ても立ってもいられなくなる・・・

譲渡したこと自体を悔やむことになります。そうすると、貴方はイラストを譲渡することにためらいを抱くことになってしまいます。

そのためらいを消し去るのが、この同一性保持権です。

私は、この同一性保持権の存在が、著作権法の最も素晴らしい点の一つであると考えています。

自分が苦労して創作した物について他人が勝手に書き変えることができないという同一性保持権は、他人の行為を制限するものであり、この他人の行動制限は、著作者が創作した物(著作物)に最大の敬意を払うものであって、著作者に独自の創作を促す要因になっているからです。

 

次回は、この同一性保持権の性質について更に考えていきましょう。

 

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