はじめまして、さようなら。

数日前から、知らない男の人が

家の中にいる。

昨日は、お兄ちゃんと竹の飛行機を

作っていた。

 

私は、触らせてもらえなかったが、

組み立てるのも、紙を張るのも

凄く、器用に出来上がった。

 

兄は、それを持って友達と

飛ばしに行った。

 

母に誰かを聞くと、

「父の弟で、大工さんをしていて、

 今まで、県外で働いていたけど、

 体調をくずし、帰ってきた。」

と、言われた。

 

優しくて、物静かに本を読み

私も、本を読んでいると

「何を、読んでるの?」

と、聞かれたが、占いの本だった

ので、それには答えなかった。

 

「本は好き、いつでも読めるから」

「僕の本も、すんだら読めば良いよ」

本箱に、何冊かの本が入っていた。

それは、叔父さんのだったんだ。

 

私は、初めて叔父さんに相談した。

私が、人に相談することなど

無いと、思っていたのに。

 

畑に、下肥えを初めて運んだとき

誰かに見られたらしく、学校で

広められた。

それは本当のことだし、手伝い

だから、別に悪いことだとは思って

いないが、人が何をしていようと

構わないと思うが・・・

 

叔父さんは、私に聞いた。

「恥ずかしかったんじゃない、

 嫌だったら、お父さんに言えば

 いいけど、言いにくかった僕が

 言ってもいいよ。」

私は、恥ずかしかったのかな?

確かに、みんなに言われるのは

嫌だったけど・・・

「大丈夫、本当のことだし、

 いつか、みんなも忘れるよ。」

 

私は、他の誰にも、この事を

話してはいないが、それ以降

その手伝いは、さされてはいない。

 

ふた月ほどすぎた頃、

叔父さんは、いなくなった。

忘れた頃に、私に葉書が届いた。

「あなたは、あなたの思うように

生きて、あなたは、間違っては

いない。」

 

私は、母に叔父のことを聞いた。

「今、何処にいるの?」

「ひろっさんは、結核だったから

 療養所に入ったの、この前、

 肺炎になって治療してたんだけど、

 ダメだったの。」

「死んだの、本当に死んじゃったの?」

母は、頷いた。

信じられない気持ちと、やっぱり

と、思う気持ちがあった。

叔父さんがいなくなったとき、私は

タロットをしていた。

 

その時に、死神のカードが出てきた。

信じたくなくて、カードの意味を調べ

「休息が必要だ!」の意味だと思い

込もうとした。

 

叔父は、心配させたくなくて、私たち

には何も言わずに、出ていった。

叔父が読んでいた本が、本立ての中に

あった。

 

治らない病気だと、わかっている人が、

どうやって、たちむかっていくか?

叔父さんは知ってたんだ。

自分が、あまり良くないってことに。

だから一度、家に帰って来たんだ。

 

私は、声を出さずに泣いた。

胸が苦しくて、悲しかった。

だけど、今はきっと、元気になって

ると信じる。

 

叔父さんは、卒業したんだよね。

いつか、あったときに笑顔で、

葉書をありがとうって言うよ。

それまで、さようなら。