514 SCARA(スカラー)ロボット

 世界の最新スマート工場について、日経ものづくりの2019年8月号の特集の中にオムロンの記事があります。また、SCARAロボットの産みの親である牧野先生の著書からSCARAロボットがいかに組立作業に向いているか記載されているので、ここでその一部を取り上げ、自らの経験と見解を記載したいと思います。

<記事の抜粋>

 現場の見える化と並んで、自動化にも力を入れている。冒頭に述べたように人件費高騰に打ち勝つべく省人化に迫られているからだ。そこで活躍しているがスカラーロボット。例えば第1工場に端子部品の加工では、既存の自動機と組み合わせ、以前は作業者がやっていた作業の一部であるワークにお供給・取り出しをスカラーロボットで自動化した。

 多関節ロボットではなくスカラーロボットを採用したのは導入コストを抑えるため。実は、温度調節器の組立てと検査を多関節ロボットで自動化しようとしたところ、広い設置スペースが必要な割には費用対効果(ROI)の改善効果が期待通りではなかったという。そこで設置面積が小さく価格も安いスカラーロボットを活用するようになったという。

日経ものづくり2019年8月号より

 産業用ロボットの自由度は普通6なければいけないと言われている。これは空間内における位置の自由度が3、姿勢の自由度が3あるためで、したがって、任意の位置で任意の姿勢を与えるためにはロボットは少なくとも6自由度を持たなければいけないのである。~中略~ 

 SCARAロボットの自由度は4である。そうすると、これでは足りないということになるであろうか?確かに、空間的な位置決めを必要とするならばこれでは足りない。しかし、位置決めが平面的な位置決めで十分であるならば、これで十分である。いや、十分なだけでなくて、一つ余っている。

 すなわち、平面的な位置決めにおいては、位置の自由度が2(XY座標)、および姿勢自由度が1(XY平面内での回転θ)の、合計3自由度があれば位置・姿勢決めができるのである。~中略~ 余った1軸は位置決め平面に対して垂直な方向の動きを与えるための軸であり、装入軸と呼ばれるものである。~以下略

シーバス・リーガル・ロボットより

<経験と見解>

 以前、2つのタイプのシール貼り付けロボットを開発したことがあります。シールの貼り付けは、A5ほどのシートからハーフカットされたシールをはがし、ワークに貼り付ける作業です。ハンドは円弧状の真空吸着機構で、シールをはがす場合は、真空吸着機能をONにして円弧上のハンドに巻き付けるようにします。シールを貼り付ける場合は、ハンドをワークに押し当てながら円弧動作をさせ、真空をOFFにします。

 最初のタイプは直交3軸ロボットを使いました。ロボットのエンドエフェクタとして円弧動作軸を追加してハンドを取り付けました。2つ目のタイプは円弧動作ができる6軸パラレルロボットを使いまいした。最初のタイプはロボット本体の価格を抑えることができますが、追加軸の設計費、製造費、調整費を考えると高いものになってしまいました。工場への導入は見送られました。2つ目のタイプはロボット本体の価格が高くなりましたが、オートツールチェンジャーを使い、貼り付け作業だけでなく多機能ロボットシステムにしたことにより工場で採用されました。

 しかし、製品設計サイドで徹底的に組立性を検討し、SCARAロボットで組立ができるようにすることが、トータルコストの削減に最も適切な自動化の取り組みであることに違いないと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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