イングランドの

『デール・ファーム』と

呼ばれる区画に居住していた

『アイリッシュ・

トラヴェラーズ』が

強制的に立ち退かされたのは

2011年10月のこと。

 

 

 

 

『No Place to Call Home』

によればジプシー/

トラヴェラーズに対する

社会的圧力はその

数年前から強まって来ており、

特に2010年の総選挙で

その傾向は

決定的になったようです。

 

「不法行為はその行為者が

誰であれ公平に取り締まろう」

イコール「ジプシー/

トラヴェラーズが不法に

居住している土地があるなら

不法行為者は

取り締まられるべきだ」、

つまり「デール・ファームに

不法に居住している住民

(アイリッシュ・

トラヴェラーズ)は

立ち退くべきである」。

 

それは確かに正論。

 

でもデール・ファームを

追い出された彼らはならば

どこに行けばいいのか。

 

 

窮地に陥った

アイリッシュ・

トラヴェラーズと

その支援者には

2つの道がありました。

 

1つは合法的な折衝を

当局と可能な限り重ねて

立ち退き決定を回避する、

あるいは立ち退き規模を

最小限に抑える、または

立ち退き期限を引き延ばしつつ

その間に合法的な次の

居住先を見つける。

 

もう1つは徹底抗戦。

 

この場合目指すは

『立ち退き回避』

一点になるので

『立ち退きの規模を

最小限化する』とか

『引っ越し先を

見つける』とかは

今後の選択肢から

外れることになります。

 

当時デール・ファーム以外の

ジプシー/トラヴェラーズの

不法居住地でも強制的な

立ち退きは実施されていました。

 

それを踏まえて折衝派は

最悪の事態

(強制立ち退き実施)の

可能性を念頭に置き

居住者の引っ越し先を探しつつ、

デール・ファームに住む人々が

最低限の医療などを

受けられるよう東奔西走。

 

しかし徹底抗戦派からすると

折衝派のそんな態度は許しがたい、

お前らどうして『敵』すなわち

『体制側』とそんな仲良く

協力なんかしているんだよ!

 

我々に必要なのは

戦う姿勢を世に示すこと!

 

世間の目がここに集まれば

強制立ち退きなんて真似

当局だってできないさ!

 

・・・というわけでここで

『活動家(activist)』が

デール・ファーム陣営に

招かれることになります。

 

活動家を構成するのは

理想に燃えた大学生や

純粋に社会正義を

実現したい市井の人や

「じゃあ合法ギリギリの

権力との戦い方を

教えてあげるね」的人々。

 

彼らはまずデール・ファームの

正面に『やぐら』を建て

「我々も皆さんと一緒に

生活することで共闘します」と

敷地にトイレ用の穴を掘り

テントを設営し、で、

何が起きたかというと

それまでトラヴェラーズの

皆さんが地域との共生を図って

定期的なゴミ拾いをしていた

敷地一帯は汚物まみれとなり、

活動家の皆さんが体制側への

敵意を露骨に示すので

医療従事者などは

敷地に入れなくなり

当局・警察機構は「おい、彼ら

一線超え始めていないか」と

いっそう警戒を強めることに。

 

強制立ち退き執行日当日、

警察は『相手は

武装している』前提で

デール・ファームに入りました。

 

ここらへんの流れを

読んでいて私は

近現代の社会運動の

難しさ、みたいなものについて

考えてしまいました。

 

力を持たない人々が

権力に物を言おうとした時は

どうしても数の力を得るしかない。

 

しかしその『数』を増やす中で

集団は一枚岩ではなくなっていく。

 

ある程度過激なことをしないと

一般大衆は問題に

目を向けてくれないけれど、

過激なことをし過ぎると

一気に世間の支持を失う。

 

少し古いですけど

日本の事例でいうと

三里塚闘争などにおいても

そういう流れが

あったと思います。

 

ここらへんの

デール・ファーム

居住者側の内部分裂の実態は

本当に本を読む価値アリです。

 

自分が当事者であったら、と

想像すると心底怖くなる。

 

・・・みすず書房さん!

 

あるいはミネルヴァ書房さん!

 

和訳を出しましょうよ!

 

ところで私、この話を

引っ張り過ぎていますね、

あと2、3日くらいで一応の

区切りは着けたいと思っています。

 

よろしくお願いします。

 

 

どのような集団・組織・共同体も

『完全に同じ考え方をする人々で

構成されているわけではない』、

これはちょっと考えれば

当然のことなのですが

我々はそこらへん忘れがちで

時々それが本当に

危険だったりしますよね

 

トラヴェラーズ側の

内部対立に関する記述は

読んでいて辛かったというか

身につまされたというか・・・

 

君らそんなこと

やっている場合じゃ

なかったでしょ、と

第三者的立場からは思いつつ

でも自分があの渦中にいたら

絶対にあの対立からは

逃れられなかったと思うんです

 

で、同じことは

デール・ファーム周辺の

地域住民側にもいえて、

トラヴェラーズの定住化に

断固反対の立場を

とる人がいた一方で

受け入れようとする人もいた

 

事象を理解するために

全体を単純化することは

有効な手法ですが

単純化が過ぎるとまた

全体理解から

遠ざかっていくと思います

 

難しいですねの

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