東方神起ユノの帽子を”反日”の証拠としたい人たち | 東方の神が起き上がる瞬間

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東方神起をオタクに地味に考察しています。最新情報を追ったり紹介はしていないけど、ひとつのことを長くかみしめ、長く味わうwがテーマ。・・・なんてね。

書く気はなかったけど、アメブロの「韓流・KPOPブログジャンル記事」の2位に、この問題を取り上げた記事がランクインしているのを見て、書くことにする。
ツイッターの匿名アカウントのアンチが何を言ってもご自由にどうぞ、だけど、ブロガーとして一定数の読者を持つ人が記事として紹介して、東方神起のファンだけでなく、KPOPの他のグループの人にも、ユノさんに勝手なイメージがついてしまうなら、私は私でファンの立場から書く。長くなってしまうけども。

状況を簡単に説明すると、アンチが取り上げているのは、10月17日、日本へ出国する東方神起、ユノさんがかぶっていた帽子のことだ。



この帽子のロゴ「MARYMOND」が、「反日」の証拠であり、日本への出国の際にわざわざかぶってくること自体が、日本へのあてつけだ、と、鬼の首を取ったように嬉々として一部のネットユーザーが騒いでいて、韓国では「かっこいい」と支持された、ということを紹介しているブログの記事。

ここで問題になっているMARYMONDは、売上を従軍慰安婦や、虐待された子供を支援したりする活動に回す、ソーシャルビジネスであり、そういう種類のブランドを若者が立ちあげたことも注目されている。

MARYMONDはすでに日本でも販売されているが、調べると今年1月にも成田空港で働く韓国人スタッフに、MARYMONDの商品を勤務に際して身に着けることを禁止し、賛否両論あったことがわかった。

〇MARYMONDと”反日”

MARYMONDは、確かにその創立主旨が、慰安婦の支援というところに寄っている。


MARYMONDの商品の特徴は、”花柄”デザインにある。ユノさんのかぶっているキャップも、後ろには小さく花のデザインがほどこされている。
これは慰安婦だった方一人一人の人生をイメージした”花”で、搾取され弱い立場にとどめ置かれた女性の人生を、肯定的にとらえようとする意図がある。

ただし、キャップの写真を見てもらっても分かる通り、MARYMONDの商品には、政治的スローガン、たとえば「日本政府は従軍慰安婦に謝罪しろ」などといったことが明記されている訳ではない。

それは従軍慰安婦問題を、政治問題というよりも、人権問題としてとらえている為であり、特定の国への要求ではなく、全ての世界に向けて、こうした女性に対する犯罪や差別がなくなるようにといったメッセージをこめているからだ、というのが、MARYMOND側の説明にある。

商品の中に直接的なメッセージとして書かれることが多い「I marymond you」という言葉は「あなたは今日も尊く美しい」といった意味をこめていると話し、2018年12月からは日本でも販売されている。

では、そのMARYMONDの狙いは、会社の活動の中に十分浸透しているのか?

MARYMONDは、売上金を、従軍慰安婦の支援活動に回していて、その支援活動をする団体の中には、日本政府に対して謝罪を求めるものもある。
人権的課題として慰安婦問題を取り扱っている、というには、その行為は明らかに政治的だ、と感じる日本人は多いだろう。

しかも、亡くなられた従軍慰安婦の方の遺体を日本大使館前に運び、日本大使館前で告別式を行う、といった、感情的な抗議デモに、MARYMOND代表自身も、遺影を持って参加しているのである。

こうした行動は、政治に寄りすぎていて、「特定の政治的意図はなく、人権問題として慰安婦問題を取り上げている」というMARYMOND側の説明が、ダブルスタンダードに過ぎず、むしろ日本でも販売しながら、その日本の利益に反する行為を裏では行う”卑怯な企業”という印象を抱く人がいても、仕方ないように思う。

しかし一方で、こうした行為を非難する意見も韓国国内で出ており、「死者を政治的に利用するな」「こうした挑発的行為が日本の態度をますます硬化させている」という韓国国民の意見も目にすると、当事者としての従軍慰安婦がいる韓国国内の中で、人権問題として女性差別や権力による性搾取を非難することが、謝罪要求と繋がったとたん、政治問題に一転してしまう、という、韓国企業としての行動のバランスのとり方の難しさも、私は感じるのである。

MARYMONDが、こうした課題を抱えつつも、慰安婦問題に端を欲しつつ、それだけにこだわらない、子供や女性など人権侵害される人々を支援しようとする理念を持った企業であると信じ、そのイメージでMARYMONDを見ている人にとって、MARYMONDの商品を買ったり身に着けたりすることは、”人権侵害にNOを唱え、一人一人が大切にされることを願うというメッセージを主張することに他ならない。

MARYMONDは若者が創設したブランドであり、若者が社会における様々な問題、特に人権にかかわる問題について考え、支援活動をしようとすること自体が、意味あることとして評価されていて、MARYMONDの商品を身に着けるKPOPアーティストの多くも、人権を守ろうとする韓国の若者を支持する、という意識で、身に着けていることも多い。

つまり、MARYMONDを反日企業として断定し、それらの商品を身に着けることは、反日の意思を示すことだ、と単純には言えない状況にある、というのが現実だ。

もちろん、MARYMONDの支援活動自体には、先ほど挙げたようなデモなど、問題も抱えている。
しかしそれをどの程度問題視するか、は結局個人によっても異なるのではないだろうか?

それくらい、MARYMOND自体が政治的な信条を元に行動しているブランド、というイメージだけでなく、人権主義を掲げたブランドというイメージも持っている。

〇慰安婦問題は政治的な問題の中だけにない

そもそも、慰安婦問題について考えたり、慰安婦を支援しようと韓国人が考えることが、”反日”と単純に断定されてしまうのは、乱暴すぎる考え方だ。

極端な韓国ヘイトの差別主義者は除外するとして、全体として多くの日本人が感じているのは、「韓国は、何度も何度も従軍慰安婦問題で謝罪しろ、と要求するけど、日本政府は謝罪もし、お金も出したのに、政権が変わったら一方的に破棄したのは韓国じゃないか」ということだろう。
そういう日本人にとっても戦争中かどうかの如何をとわず、女性を男性の性欲処理の道具として扱うことを、正しいと感じている人はほとんどいないはずだ。

日本政府がそれこそ謝罪してきたのは、従軍慰安婦が編成されていく過程ーー募集のやり方などーーについての国の責任の是非はさておくとしても、人権問題として、筆舌に尽くしがたい苦しみを味わった女性たちの痛みを、否定するつもりはないからだ。

同時に、謝罪や補償が全く必要ないと感じている日本人も、ほとんどいない。日本人の多くが反発しているのは、なぜ、自分たちの謝罪や補償が受け入れられないのか、ということであり、一方的に破棄しておいて「謝罪せよ」を繰り返す(ように見える)韓国政府に対してなのだから。

一方で韓国では、従軍慰安婦として働かなければならなかった女性たちが、現在も実在している中で、彼女たちの苦しみ、痛みについて寄り添おうとすることは当然だし、個人個人の人生に目を向ける中で、そこから敷衍して「女性に対する大きな人権侵害」ととらえるとき、加害者としての日本にどうしても目が行きやすいのだろう、とも予想される。

また、補償はお金を受け取ることで十分だと考える人と、国としての発表ではなく、直接自分たちに謝罪してほしいと考える人など、個々様々な感じ方が、元慰安婦だった方々にあり、そうした現状は韓国人は知っていても、日本で暮らしている私たちには、全く分からない、ということもあるのかもしれない。

韓国政府が謝罪や新たな補償の在り方(そもそも一方的に解団した財団にあてられた、日本側の拠出した10億円は、返還されたのか?もはっきりと分からない)をめぐって、「謝罪」という言葉ひとつとっても、そこに求められている形は日韓で違っているかもしれず、そうしたすり合わせをきちんとしたのか、メディアが伝えていないことはないのか、国民には分からない、という問題もあるのではないか。

いずれにせよ、慰安婦問題というのは、人権侵害の問題としてとらえる時、日本とか韓国といったことは関係なしに、誰にとっても、性的な搾取や虐待を、どのように社会として防止していくのか、という大事な問題をはらんでいる。

だからこそ、慰安婦問題について考える韓国人をすなわち、すぐに”反日”ととらえることは、あまりに単純すぎる見方であり、恥ずべき無知だと私は非難する。

また、慰安婦問題について、日本政府の謝罪や補償のみで韓国が解決しようとするならそれもまた、問題を更に泥沼化するだけだ、とも考える。

日米の戦後の関係を考えてみてほしい。

アメリカではいまだに原爆を落としたことは正義であり、戦争を終わらせるために正しい判断だったと考える人は多い。
日本では、そのように考える人は皆無であるにも関わらず。

被爆した多くの非武装の市民が、幼い子供も含め、どれほどの苦しみを味わいながら死ななければならななかったか、ひどい後遺症や外見を大きく傷つけられ、死んだほうがましだと感じるほどの苦しみの中で生きなければならなかったか、子孫にまで放射能の影響に怯えさせなければならないことが、どれほど辛いことだったか、その多くの人たちの声なき”声”を、日本は敗戦国となったため、単純なアメリカの謝罪や補償によって解決する道を選べなかった。

が、選べなかったからこそ、日本とアメリカの関係は未来に向けて良好なものへと進めることができた。70年近くたって、ようやくアメリカの大統領が平和資料館を訪れるところまで、進むことができた。原爆資料館は、平和資料館として、特定の国を非難するのではなく、一人一人のかけがえのない人生が、一瞬で大量に奪われるむごたらしさと悲しみ、だからこそ平和な世界を作ることで、この悲しみへの償いとしよう、というメッセージを感じる場所として、作られている。

韓国が日本と対等に肩を並べる経済大国となった今だからこそ、かつての歴史問題を政治的な交渉で解決できる、と考えたのかもしれないが、本来、こうしたことは政治的な交渉だけではなく、お互いの文化交流や、歴史認識を教育の分野ですり合わせていく努力が必要不可欠なはずだ。
その意味では、日本も韓国も、まだいろいろなことが、解決済みではない。
私たちは、まだ”話し合って”いない。
話し合っても無駄だ、と匿名のネットユーザーたちは断言するが、断交が平和的解決につながると信じるのは、日本が国土ごと、どこかに引っ越せる、と信じているのと同じ。

しょせん、絵空事だ。

〇東方神起やユノさんを応援する意味

長い説明になったが、ユノさんが、MARYMONDのキャップを身に着けていたからといって、即それが、”反日”につながる、と騒ぎ立てることが、いかに単純で一方的なものの見方に過ぎないかを、私は伝えたい。

MARYMOND自体、純粋な人権主義に基づいたソーシャルビジネスとして展開されているかというと、賛否両論ある支援の仕方もある。
ただ、2018年からは虐待された子供の支援も始めるなど、企業なりに試行錯誤しながら、一人一人が尊重される社会に貢献しようと、頑張っている側面もある。

私はMARYMONDの商品を、支援の仕方に問題があると感じている現時点で買おうとは思わないが、それを買おうとする人=反日だという風に考えるのも、しょせんは誰かを反日として非難したいという気持ちが先にあってのことだ、と思う。

もちろん、ユノさん本人が、どのような考え、価値観でMARYMONDを観ているか、また慰安婦問題を考えているかは、分からない。
日本は謝罪すべきだ、と考えているかもしれない。そうじゃないかもしれない。

でも、あえて言いたい。
彼の政治的信条や歴史観を知ることが、そんなに大切で重要なことなんだろうか?
持ち物1つにも”意味”を探し出して、”発見”しなければならないほどに?

政治的信条や歴史観が、ヒューマニズムに反するものであれば、私も応援する熱が冷めるだろうけど、自分と対立するからといって、それが相手の価値まで下げなければいけないこと?

私は、もしユノやチャンミンが、慰安婦問題について、日本政府は韓国に謝罪すべきだと考えていたとしても、彼らの中に、日本人のファンを愛する気持ちは変わらずに存在していることを、疑わない。
だって、もう10年以上もずっと彼らを見てきたけど、あんなにファンを大切にして、日本語を一生懸命勉強して、私はもうそれだけでも胸がいっぱいだから。

逆に考えてみたらいい。「日本政府は謝罪したし、もう補償も行った」「独島ではない。竹島だ」と考えている日本人は、反韓主義者になるの?そんな単純なものではないだろう。
「日本は十分謝罪したし、いい加減韓国はしつこいなあ」と思っているけど、それがユノやチャンミンへの気持ちに直結しない人なんてたくさんいる。

ユノやチャンミンだって同じじゃないかな。自分と政治的信条や歴史観が日本人と異なることが多いことくらい、長い日本活動の中で何度も知る場面があったはず。それでも、彼らは日本人スタッフや、日本人のファンを大切にしてきてくれた。
だからこそ、これだけ成功もしたし、日本で長く愛されているんだと思う。

人は、自分と政治的な信条や宗教、歴史観、が異なる人とでも、友達になれる。
少なくとも、私はそうでありたい。
自分と意見が合う人としか友達になれない人間には、魅力を感じないから。

東方神起を”反日”と決めつけて非難したい人は、ネット上にはたくさんいる。
でも、よく考えてみてほしい。”反日”ってなに?それ自体だって、本当はたくさんのあいまいな意味をはらんだ言葉だ。
そんな言葉の吟味すらしない人たちの、自分に都合のよい”正論”に振り回される必要はない。

私は、今、楽しみしかないよ。もうすぐツアーグッズ詳細が出るかな、とか。アルバムを聞きながら朝のランニングに出掛ける時とか。

私は東方神起が好き。私は日本が好き。韓国の音楽や、コスメ、食べ物が好き。日韓戦があったら、日本を応援する。竹島は竹島だと思ってるし、日本海は日本海だと思ってる。
慰安婦問題については、人間を性的に搾取するようなことは許されないと思っている。苦しんだ方々の心に寄り添い、そのようなことが二度と起きない世界が来ることを祈る。
でも韓国がまだ謝罪が必要だと言っていることは理解できない。徴用工問題は、解決済みとなっていたはずなのに、どうして再度蒸し返されたのか、わからない。輸出管理について、なぜあのタイミングでの発表だったんだと日本政府には聞きたい。でも、GSOMIAを破棄した韓国にも、国民の平和や安全すら政治の前では軽いんだな、と非難したい。

だけど、私は反韓じゃない。反日でもない。

そういうこと。


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アールズ出版で、ジャニーズ研究者の福博充さんと対談した時のテキストです。
「著者対談 桃田万里子×福博充 トンペン×ジャニオタ 私たちは何を見ているのか?」

桃田万里子著 2017年刊 東方神起ヒストリーを、インタビューやライブMC、番組などのトークを引用しながらまとめました。 

連絡、仕事の依頼は、shinriet@yahoo.co.jpまで