民法 司法試験令和5年第10問肢イを考えてみよう

【前回のあらすじ】

前回は,民法司法令和5年10問肢アを検討しました。
次は,肢イからです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

はい,まあまあです。

スク東先生:そうですか。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

民法司法令和5年10問肢イです。

「Aが所有し占有する動産甲をBが詐取した場合において,CがBのもとから甲を窃取したときは,Bは,Cに対して,占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができない。」

正解はどうでしょう。

誤りです。

スク東先生:なんででしょう。

条文ですかね。

スク東先生:なるほど,確認してみましょう。

(占有回収の訴え)
第200条
1.占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2.(略)

スク東先生:確かに,CはBの元から窃取しており,Bの占有は奪われたといえます。

はい,だから,Bは,Cに対して,占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができると思います。

スク東先生:なるほど,結論は確かにそれでいいのですが,なにか物足りない感がありますね。

えっ,どうしてでしょう。結論はあっていると思うのですが・・・。

スク東先生:いやいや,まあ気持ちはわからなんでもないですが・・・。問題文の最初の事情を使っていないでしょ。「Aが所有し占有する動産甲をBが詐取した場合」とあります。ここも少し指摘しないと。

なるほど,確かに,BはAを詐欺しています。違法な占有のように思いますね。それでも占有回収ができるかという問題ですか。

スク東先生:はい,そうですね。占有回収は,占有権を保護するためにあると考えられますが,Bの占有が保護に値するか疑問であります。だから,そのような問題意識が考えられます。ただ,結論からみてわかるように,Bのような占有であっても占有回収の訴えは認められます。なんででしょう。

うーん。

スク東先生:突っ込まれると,悩んでしまいますよね。気持ちはわかりますが,単純に考えればいいと思います。CはBから窃取をしている悪い人ですよ。Cを保護していいんですかね。また,Aからは所有権に基づく返還請求ができるはずです。しかし,Aから見れば,自分を騙したBに責任取ってもらいたいと思う場合もありそうですよ。

なるほど,Aから見れば,詐欺を取消せば,甲はBから戻ってくるはずが,Bの手元にはない。Cに言わないといけないというのは,面倒です。Bからもいえる必要性があるのがわかってきました。

スク東先生:そうそう,具体的な場面をイメージできれば,Bからも占有回収訴えを認める必要がわかるはずです。あとは,条文も特に占有の内容を問うていないので,Bにも占有回収が認められる説明すればよいでしょう。

はい,問いに答えるには,問題文の事実を拾うことが重要だと思いました。

スク東先生:そうですね。結果的に,考慮しないとしても,事実としてあがっているので,触れると題意に応えているといえるでしょう。ぜひ,そんな感じで,やってみてください。それでは,今日も時間となりましたので終わりにします。この続きはまた来週,お楽しみに。



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民法 司法試験令和5年第10問肢アを考えてみよう

【前回のあらすじ】

今日から,民法司法令和5年10問を検討することになりました。
まずは,肢アからです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

はい,まあまあです。

スク東先生:そうですか。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

民法司法令和5年10問肢アです。

「ア.Aが所有し占有する動産甲をBが窃取した場合、Aは、Bに対して、所有権に基づく甲の返還請求と、占有回収の訴えによる甲の返還請求とを同時にすることができる。」

正解はどうでしょう。

正しいです。

スク東先生:なんででしょう。

条文ですかね。

スク東先生:なるほど,確認してみましょう。

(本権の訴えとの関係)民法202条
1 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

スク東先生:確かに,202条1項がありますね。ただ・・・。

はい,やっぱり意味を確認する必要性があると思います。

スク東先生:そうですね。この機会にどうしてか考えてみたいですね。どうしてでしょう。

単純に,権利行使の自由があると思いました。また,仮に片方どちらかしか行使できないとすると,対応する裁判所もやりづらいように思います。

スク東先生:いいですね。法的安定性が大きいでしょう。仮に片方のみOKとすると,間違えたときどうする?とか,誰があっているのかチェックするのなどの問題が発生するでしょう。そう考えても,両方とも行使できるとする方が無難です。

はい,そう考えると,202条1項は自然だなと思いました。

スク東先生:それで大丈夫でしょう。法律の問題は,難しく考えがちですが,変なルールだと問題ですよね。

改めて,条文はうまう作られいるんだなーと感じました。

スク東先生:その通り。無理に覚えようとするとかえって難しくなってしまいますね。こんな感じで,具体的な状況をイメージをして押さえるとよいでしょう。

わかりました。

スク東先生:はい,それでは,今日も時間となりましたので終わりします。この続きは,また来週お楽しみに。



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民法 司法試験令和5年第10問を考えてみよう

【前回のあらすじ】

民法司法試験令和5年第5問を前回まで検討しました。次は,何をやるのでしょうか。
それでは,はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは,東さん。

こんにちは,スク東先生!!

スク東先生:おお,なんか元気ですね。まあ,勉強頑張っていきましょう。

今日から,新しい問題ですね。

スク東先生:そうですね。1問検討が終わりましたからね。

今回,取り上げる問題は,こちらです。

民法司法令和5年第10問
占有回収の訴えに関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。
ア.Aが所有し占有する動産甲をBが窃取した場合、Aは、Bに対して、所有権に基づく甲の返還請求と、占有回収の訴えによる甲の返還請求とを同時にすることができる。
イ.Aが所有し占有する動産甲をBが詐取した場合において、CがBのもとから甲を窃取したときは、Bは、Cに対して、占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができない。
ウ.Aが所有する動産甲についてBが留置権を行使している場合において、CがBのもとから甲を窃取したときは、Bは、Cに対して、占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができない。
エ.Aが所有し占有する動産甲を窃取したBが、その事実につき善意であるCに甲を売却し引き渡した場合、Aは、Cに対して、占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができない。
オ.Aが自己所有の動産甲をBに賃貸し引き渡していた場合において、CがBのもとから甲を窃取したときは、Aは、Cに対して、占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができる。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ

ふーん,次は,民法司法令和5年第10問をやるんですね。

スク東先生:はい,今回も以前の勉強会で取り上げた問題を検討していこうと思います。

なるほど,次の勉強会は,いつでしたっけ

スク東先生:2024年4月28日(日)16:00~17:30です。(詳細はこちら

へぇ,行政法をやるんだ。わかりました。

スク東先生:はい,令和5年度の本試験の問題を検討します。それでは,早速,やっていこうと思うんですが・・。

ふーん,今回は予告だけですね。

スク東先生:はい,だいぶ流れわかってきてますね。しっかり,次回の検討までに準備しておいてください。それでは,今日はこの辺りで終わりします。
この続きは,また来週お楽しみに。



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民法 司法試験令和5年第5問肢オを考えてみよう

【前回のあらすじ】

前回は,民法司法令和5年5問肢エを検討しました。
次は,肢オです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

はい,まあまあです。

スク東先生:そうですか。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

民法司法令和5年5問肢オです。

「オ.Aがその真意ではないことを知りながらAの所有する甲土地をBに売る旨の意思表示をした場合において,BがAの意思表示が真意ではないことを知ることができたためにAの意思表示が無効であったとしても,善意のCがBから甲土地を買い受けたときは,Aは,Cに対し,その無効を対抗することができない。」

正解はどうでしょう。

正しいです。

スク東先生:なんででしょう。

条文だと思います。(93条2項)

スク東先生:なるほど,確認してみましょう。

(心裡留保)
民法第93条
1意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意でないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

はい,本件のCは善意の第三者です。したがって,93条2項により,Aは,Cに対し,その無効を対抗することができないとなります。

スク東先生:確かにそうなんですが・・・。

そうですね,それだと,覚えるだけになって忘れてしまいます。ちゃんと意味を考えないといけません。

スク東先生:そうですね。善意無過失だったり,善意のみでOKだったり,ごちゃ,ごちゃします。93条にしたって,第三者Cは善意で足りるのに,Bが確実に保護されるには,善意無過失だったりする。

そうなんですよね。悪意または有過失だった場合,無効となりますから(93条1項ただし書)。だから,わかんなくなっちゃうんですよ。

スク東先生:本当にそうですよね。だから,混乱しないようにしっかり整理する必要がある。どう理解していきましょう。

えっと,結局,直接の相手方は本人の意思表示を実際に見てますよね。しかし,第三者の場合,本人の様子を見ていない。そこが大きく違うのではないでしょうか?

スク東先生:いいですね。直接の相手方(本件B)の場合,Aの意思表示を確認できます。そうすると,気づけることも多そうです。Bは善意無過失でないと保護されないそう理解すればよいでしょう。

なるほど,よくわかりました。字面で覚えるのではなく,状況をイメージすることが大事だと思いました。

スク東先生:そうですね。ぜひ,そんな感じで,押さえていきましょう。それでは,本日の検討はここまでとしましょう。次回は,また来週お楽しみに。



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民法 司法試験令和5年第5問肢エを考えてみよう その2

【前回のあらすじ】

前回は,民法司法令和5年5問肢エを検討しました。
その際,結論はでたのですが,なぜ転得者も含むのか,その点について,
あらためて考えることになりました。

うまく理解できるでしょうか?
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

まあ,ぼちぼちです。なんとか頑張っておりますが・・・。

スク東先生:そうですか。気張らずコツコツやっていきましょう。

では,早速,問題の検討してきましょう。

民法司法令和5年5問肢エです。

「エ.AとBとが通謀してA所有の甲土地をBに売買する旨を仮装し,Bへの所有権移転登記がされた後,Bが甲土地をCに売却し,更にCが甲土地をDに売却した場合において,CがAB間の仮装を知っていたときは,DがAB間の仮装を知らなかったとしても,Aは,Dに対し,AB間の売買の意思表示の無効を対抗することができる。」

(虚偽表示)
第94条
1.相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2.前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

スク東先生:前回で,94条2項の第三者に転得者が含まれるとなるのは,なぜかという議論になりました。意味を整理するのが宿題でしたね。整理してきましたか?

はい,一応。結局,94条2項の趣旨が,権利外観ということにあると思いました。

スク東先生:なるほど,方向性としては,間違ってはいないです。ただ,表現代理(110条)も趣旨が権利外観ですが,第三者は直接の相手方のみとしております。したがって,もう少し考えたいですね。

そうですか?うーん。

スク東先生:考え込んでしましたか。そうしたら,少し詰めていきましょう。趣旨が,権利外観といっておりましたが,どういう要件が具体的に必要ですか。

えっと,確か①虚偽の外観,②本人の帰責性,③相手方の信頼だったと思います。

スク東先生:いいですね。ポイントをしっかり押さえております。それをもとに,94条2項のケースと表見代理ケースを考えてみたいですね。違いがわかりますか?

なるほど,転得者Dが信じた外観は,虚偽の登記の外観ですね。一方で,表見代理の相手方の外観は,虚偽の代理人です。

スク東先生:そうそう。そこまでくれば,方向性はわかります。登記の外観であれば,転得者も信じうる。そこで,取引の安全のために保護すべきという説明になります。

はい,しかし,虚偽の代理人の外観を信じるのは,直接の相手方だけですね。

スク東先生:その通り!!結局,虚偽の外観を具体的に考えると方向性見えてきます。

なるほど,よくわかりました。ちょっとイメージすることが大事だと思いました。

スク東先生:そうですね。普段勉強するときも,表面的なことにとどまるのではなく,具体的にイメージをして押さえることが大事です。ひと手間工夫する感じでしょうか。ぜひ,その意識をもって勉強していただければと思います。ということで,キリがいいので,今日はこの辺りにします。この続きは,また来週お楽しみに。



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