瀬尾さんが好きすぎる『その扉をたたく音』 | 小田原暮らし

小田原暮らし

海と山の近い小田原から日々の暮らし綴り。

何かにしがみつくこと。

それを執着というのだろう。

 

しがみつけばしがみつくだけ、

その奥に隠された本当のことがどんどん見えなくなる。

 

このことに気づかせてくれるのは

やっぱり人なんだ。

 

「俺は音楽で生きていく」と決めた主人公は、

音楽業界の厳しい現実を目の当たりにした。

「これでいいのか、いいはずはない」とわかっているのに

そこに蓋をして、「俺は音楽で生きていく」にしがみつく。

そしてどんどん、本質の自分から離れていく。

 

その主人公がどのように気づきを得るのか。

ある程度予想しながらストーリーを追っていったが、

さすがは瀬尾さん。

わたしの安っぽい予想の思いっきり上を通って

はるか彼方の先の先に着地した。

泣かせるじゃないか。

 

そして驚いたのが、私のイチオシ愛読本である

『あと少し、もう少し』の渡部くんが、、、

大人になったあの渡部くんが、

またしてもここに登場するのだ。

もう泣くしかないじゃないか。

 

その渡部くんが放った一言が刺さった。

 

「時がいろんなことを解決してくれるのは、

 ちゃんと日常を送っているからですよ。」

 

そう。全くもって平凡な日常生活に

わたしたちはどれほど援(たす)けられていることか。

 

渡部くんはかなりイイ男に成長していた。

 

ということで、

またしてもわたしを裏切らない

(結末の予想は裏切られたが)

安定の瀬尾作品だった。

 

この本の中で出てきた

『赤毛のアン』シリーズと

星新一の『妄想銀行』が

次の読書リストに上がったのは言うまでもない。

 

 
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わたしは瀬尾まいこさんが大好きです。
 
小田原の図書館にある瀬尾作品は
あと少しで全部読み切ります。
 

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