それから1日で退院でき、無事に平戸教会へ戻ってまいりました。そしてすぐに黒衣に着替えさせていただき、3日ぶりにお結界に座らせていただきました。あの怒涛の日々からたった3日しか経っていないのに、お結界に座らせていただくことが、とても久しぶりに感じていました。
     
お広前には誰ひとりとして姿は無く、とても静かでした。でも座らせていただき、何時間でも、何日でも、何年でも、待たせていただこうと思いました。
     
「神様、このお広前に難儀な氏子をお引き寄せください」とご祈念させていただきながら、ただひたすらお参りの方を待たせていただいておりました。
    
早く神様に信用していただきたいなあ…神様が、いつでも氏子を参らせても良いような自分にならせていただきたいなあ…そう思いながら。
   
     
私はやっぱり、お取次をさせていただくことが"生きがい"なんだなあと思います。それはお結界だけでなく、流産した日、手術の日、入院している時でもベットの上でパソコンを開き、私は氏子のお取次をさせていただいておりました。
    
「死にたいです」「助けてください」「聴いてください」
     
そうやって助けを求めて連絡をくれる氏子。その存在は我が子と同じく、ずっと一緒に生きていきたい、生きていてほしい、大切な大切な存在です。それに、心の叫びを聴かせていただく度に、「助けるぞ〜!」とこちらのほうが心に元気をいただいているのです。
        
神様がお引き寄せくださった氏子と私は、血の繋がりはないけれど、神様からお授けくださった大切な大切なお子様なのです。私にとって可愛くて、愛しくて仕方がない存在なのです。
   
    
ただ最近思うのは、メールや電話でのお取次(悩み相談)が多いなあ...と感じていることです。心に問題を抱えておられ、最初はメールでないとお取次をいただけない方も大勢いらっしゃいますから、メールや電話自体はとてもありがたいのです。
    
問題なのは、ずっとメールだけの繋がり、ずっと電話だけの繋がりだと、私も人間なのでだんだんと寂しくなってくるのです。この子と同じ地にいるはずなのに。同じ空を見ているはずなのに。なんだかとても遠くに感じます。    
    
 
お参りすれば、必ず神様が助けてくださいますし、何より私は、氏子が実際にお広前に参ってきて、顔を見せてくれると、安心するしとても嬉しくなります。顔を見ながら直接話を聴かせていただくと、より氏子の苦しみ、悲しみが伝わってきます。時には喜びや、嬉しさだって伝わってきます。そして私の想いも、神様の想いも、伝わっていきます。
     

    
そうやって、時間と空間を共にして、一緒に喜怒哀楽を共にすると、思い出が一つ、また一つ、と増えていくのです。
そして思い出が増えていくと、愛しさも大きくなっていくのです。
それは目に見えない絆となっていくのです。    
笑った顔や、泣いていた顔が、ふとした時に思い出され、その度に祈らずにはいられないのです。
    
     

    
      
流産の辛さ・・・その中の一つには、思い出の少なさがありました。可愛くて、愛しいのに、残っているものがほんの一握りなのです。私の手元に残っているのは、妊娠2ヶ月の小豆くらいの写真と、出産した時の体調3センチの写真だけ。どれだけ、我が子を思い出そうとして、笑顏や、泣き顔や、話し声を、思い出せないのです・・・それが悲しいのです。思い出が少ないことがとても寂しいのです。ぽっかりと穴があいたような感覚で、やりきれない気持ちになるのです。
    
   
   
メールで、電話口で、「死にたい」と泣いている氏子。「先生もう死にます」という氏子。 

泣くことだって、ひとりで涙を流すのと、神様の前で涙を流すのとでは、全然違います。       
 

私は生きて会いたいです。泣き顔でも、怒り顔でも、なんでもいいので見せてほしいです。        
そう願いながら、今日も神様と一緒にお広前で、氏子のお参りを待たせていただいております。           
 

そうやって待たせていただくこともまた、ありがたいなあと感じております。

    

 

(つづく)

 

 

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