鉛筆 こんにちは、花です 手

 

 

先月、読み終えたばかりの村上春樹著「街とその不確かな壁」のレビュー記事を

書いたつもりでいたんですが一文字も書いていないという事実に驚愕しております驚き

 

やったつもりがここまで来るとある意味達観しそうです・・・。

 

 

 

 
 
 

 

 

3.5センチの厚みでずっしりとした重みが物語とリンクする風貌の一冊。

 

口コミを見ると「村上春樹の最高傑作」「つまらない」など両極端な意見が並んでいます。

 

 

 

 

先に感想を言いたいけれど、まずはあらすじ的なところを。

(ネタバレ含みます)

 

 

物語は主人公「私」(あるいは「僕」)の少年時代からはじまります。

一つ年下の少女と恋におち、彼女が語る『壁に囲まれた町』の地図を描きます。

少女はその『壁に囲まれた町』に住んでいる人物の影だと言い、度々情緒不安定なところも見せる。

そして、ある日突然姿を消してしまうのでした。

 

主人公は、少女ほどに夢中になれる恋もできずに40代という年齢になっていきます。

夢読みとして『壁に囲まれた町』に住むことが出来てもある日突然【本当の世界】に戻されてしまいます。

彼女の姿を追い求めても再会は叶いそうもなく【影の世界】と【現実の世界】で暮らしている。

 

自分は【本物】なのか【影】なのか?

どちらの世界が【本当】なのか?

彼女と再会ができるのか?

 

 

そういう感じの物語です。

 

 

 

印象深かったシーンや気になったこと。

 

この本には珍しく【あとがき】があります。

その中で著者は、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの言葉を引用し

 

ー一人の作家が一生のうちに真摯に語ることができる物語は基本的に数が限られている。

我々はその限られた数のモチーフを、手を変え品を変え様々な形に書き換えていくだけなのだー

 

いろんなレビュー記事や考察記事にもこの一節に触れていて

 

この「街とその不確かな壁」にはノルウェイの森や1Q84の登場人物などに重ねる人が多いです。

 

 

作中には印象に残る様々な象徴があります。

図書館、四角い部屋、暖炉、子易さん(死者)、雪、影など

 

 

作中特に印象に残るのが子易さん。

ベレー帽をかぶりスカートを穿き、テニスシューズと出で立ちの死者。

彼もまた大切な人を失っていました。

息子を事故で失ってしまい奥さんが増水した川に身を投げる前にベットに残した日本のネギ。

あれは、奥さんからの「これを代わりに供養してください」的なメッセージだったのではないかと個人的には感じています。

 

子易さんがその後風変わりな様子を隠そうとしなかったのは

奥さんや子供へのメッセージのように感じてしまいます。

 

 

 

 

あと、コーヒーショップの女性が鎧のような下着をつけていたシーン。

なんとなく分かる。

性行為に積極的になれない女性としての劣等感や罪悪感。

心と体の乖離が気持ち悪いから「体も締め付けてしまえ」という感覚かな?と。

 

 

 

感想

 

読み終えて半月経っても余韻にひたっています。

終盤、「私」が「コーヒーショップの女性」と恋愛関係になるところから怒涛の勢いで

「私」が「少女」と再会して

「イエローサブマリンの少年」は「壁に囲まれた町」で生き生きと暮らし

「私」は再び「壁に囲まれた町」で夢読みとして働いている

のかと思いきや「影」と「本体」のパラレルワールド!!!

 

どちらが「影」であるかはどうでもいいんだなと。

「らしく」いられる世界が本当ということでいいのではないかしら。

 

もどかしい箇所は多々ありますがラストは

あるべき姿に、その人(が望む)らしい姿になっていく再生の物語なのかなと感じます。

 

全人類におススメする本ではないかもしれないと印象ですが

物語にどっぷり浸りたい人にはおススメの一冊ですニコニコ