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[チク・タク・チク・タク・チク・タク]最恐のロボットSF小説の感想・レビュー


正式名称は「チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク」です。

「SFが読みたい2024」のベストSF 2023[海外篇]で一位にランクインしており、気になったので読んでみました。

あらすじ

あらすじを文章を引用しながら、ネタバレしないように紹介します。

狂機誕生

家事 殺人 絵画 強盗 経営

すべてをこなすロボット、それがチク・タク

もはやロボットを使うことは当たりまえになった。家事から医療、さらにロボットの製造まですべての分野でロボットが使役されている。人間の安全のためにロボットたちにはロボット三原則を遵守させる「アシモフ回路」が組み込まれていた。

だが、チク・タクにはその回路が作動していなかった。ペンキ塗りをしていたチク・タクは少女を殺し、その血で壁に絵を描く。おかしなことにその壁画が美術評論家に評価され、チク・タクは芸術家のロボットとして世の注目を集める。使役から解放され金を手に入れたチク・タクは、人間への“実験”(殺人、強盗、扇動などなど)を開始する――。

アシモフ回路

舞台は家庭用ロボットが普及している、近未来のアメリカ。

アシモフ回路が搭載されている主人公「チク・タク」。

アシモフ回路とは、sf御三家ともいわれるアイザック・アシモフ氏が提唱した「ロボット工学三原則」を守らせる回路のことです。

ロボット工学三原則

  1. 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
  2. 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
  3. 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

しかし、主人公「チク・タク」にはその回路が働いていなかった?

「このクソボルトを数えろ! 回路図も!シリアルナンバーも! 五年保証を確かめろ! 本物だとわかったら、この銅のケツにキスしてみせろ!」

狂気の展開

あらすじに書いてあるので、紹介してもいいと思うのですが、微ネタバレです。

「チク・タク」は序盤で女の子を殺します。

というか、全編ずっと人を殺しています。

そして、衝撃なのが、その女の子の血を使って絵を描き、それが芸術家として評価されるのです。

もちろん、チク・タクが殺したというのはばれていません。

画家としての成功の一方で、ロボット解放運動団体〈ロボットに賃金を〉の指導者として君臨して、浮浪ロボットを率いて私兵組織を作り銀行を襲撃、果ては副大統領にまで上り詰めます。

チク・タクがこのような行動をなぜとるのか、目的は何なのか?

読みやすい文体

全編を通して非常に読みやすい文体で描かれています。

前項で人を殺していると書きましたが、グロイ描写は一切ないのでそこは大丈夫です。

基本、重い内容ではなく、ふざけています。

似ている小説としては、銀河ヒッチハイクガイドみたいな感じだと思います。

私が好きなエピソードは、チク・タクが使えることになるカルペッパー家の興隆です。

ピラミッドを建設することで、未来を予測しようとしているのですが、それが原因で貧乏になってしまいます。

ずっとふざけているというか、ブラックユーモアが含まれているというかそんな感じです。

しかし、その文体がチク・タクの冷酷さをさらに強調しているようにも思えます。

次のページではなく、次の行でいきなり人を殺し始めるので、人間のサイコパスとは一味違った、狂気のロボット感が漂います。

作品情報

作品情報です。

  • 出版年:2023年
  • 出版社:竹書房
  • ベストSF2023(海外編)
  • 英国SF協会賞受賞
  • ページ数:262ページ

作者

作者の紹介です。

作者はジョン・スデラックです。

「二〇世紀最後の天才」

「真の異色作家」

「不世出の天才作家」

「たぶん天才だったのだが、才能の使い道をまったくわかっていなかった」

などと評されています。

1937~2000

ミネソタ大学で英文学と機械工学を学んだそうです。

一九五九年に大学を卒業してからは職を転々とし、本人曰く、「コック、テクニカルライター、鉄道の転轍手、カウボーイ、合衆国大統領など」を経験。

純粋なパロディ作品として、アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラーク、コードウェイナー・スミス、J・G・バラード、レイ・ブラッドベリといった大物SF作家の文体と作風をオマージュした短編を書いているそうです。

他にも、本格ミステリ作家でもあり、1972年に短篇「見えざる手によって」がミステリ・コンテストで優勝。アメリカ人の素人探偵サッカレイ・フィンがイギリスを舞台にして活躍する長編『黒い霊気』『見えないグリーン』などを執筆した。『見えないグリーン』は日本翻訳時に本格ミステリファンから非常に高く評価されたそうです。

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