今週の「常識がひっくり返る消費税ミニ！」はインボイス制度を取り上げる。この時
にポイントになるのは、下記3点の前提知識。
(1)消費税は「前段階の売上税額控除型」の付加価値（売上－仕入）税
(2)したがって、前段階の売上税額の「伝達」が必要
(3)その手段がインボイス（売手が発行する「税率と税額」を記載した取引伝票）
そして、絶対に外せないのが、免税事業者についての下記2点の前提知識だ。
(4)免税事業者は消費税の課税対象者ではなく、売上に消費税は存在しない
(5)インボイス導入前の帳簿方式では、免税事業者からの仕入れでも見做し税額控除が容認されていた（消費税導入時から）
消費税基本通達11-1-3（課税仕入れの相手方の範囲）
しかし、免税事業者の前提知識(4)(5)は、ご存じない方がほとんどだと思う。少なくとも自分は自分の発信以外で見聞したことが無い。インボイス制度に反対する税理士でさえ、なぜか(4)(5)に言及しないのだ。
皆様は疑問に思われたことは無いだろうか？「なぜ、インボイス制度の導入で、免税事業者からの仕入れが急に『仕入税額控除』が出来なくなったのだろう？」
だから、自分は自分で調べて、本当に幸運な事に(4)(5)に辿り着けた。
(4)を知れば、免税事業者は(2)(3)に絶対に対応できない、つまり「前段階の売上税額控除型」では、免税事業者は商流の途中に存在できず、必然的に取引から排除されることが分かる。売上税額の伝達が免税事業者で途切れてしまうからだ（商流の最初と最後であれば可）。
そしてなぜインボイス制度導入前の「帳簿方式」では、商流の途中でも免税事業者が存在できたのかの回答が(5)だ。もう一度繰り返すが、消費税導入時からである。この措置は消費税法には規定されておらず、運用について国税庁から出される「通達」に基づくもの。「通達」が「法律」なのかについては、議論が分かれる所だが、行政側はこれに基づいて、税務を執行する。
「通達」の量は多いが「税の専門家」たる「税理士」は知っていなければならない。
ではなぜ、インボイスに反対する税理士でさえ(4)(5)に言及しないのか。単純に知らなかったという可能性も、もちろんある。だが、自分はそれに疑念を抱いている。
実は(4)は、裁判で最高裁まで争われた。原告は「存在する」と主張。被告の税務署は「存在しない」と反論。判決は原告が敗訴した。この時、敗訴した原告を支援していたのが「税経新人会」であり、当時、多くの税理士や弁護士が支持していた。税理士の神様である湖東京至先生（税経新人会全国協議会事務局長）も例外ではない。原審において、原告の証人として消費税法の鑑定書を意見として開陳されている。
如何だろうか。神様が証人として意見を開陳してまで支援した裁判に「敗訴」した。だから(4)について、税理士は誰もが口を貝のように閉ざして、黙して語らずなのではないか。
昨年夏の「政治団体赤字黒字と語ろう」会で、自分は安藤先生と神田先生に直接、(4)(5)について訴えた。これを知らずして、インボイス制度が「免税事業者から仕入れた課税事業者への見做し仕入税額分の増税」だと、筋道立てて説明が出来ないからだ。神田先生は「税経新人会」の新潟支部長なので、言及できない立場なのは分からないでもない。だが、安藤先生は動画で一度、事件番号は明かさずにこの件に触れられたものの、それっきりダンマリだ。
【事件番号】
第一審 東京地裁 平成9年(行ウ)第121号 平成11年1月29日 請求棄却
第二審 東京高裁 平成11年(行コ)第52号 平成12年1月13日 控訴棄却
第三審 最高裁第三小法廷 平成12年(行ヒ)第126号 平成17年2月1日 上告棄却
ということで(4)(5)について、自分は孤立無援状態である。それでも主張し続ける。税理士業界とは無縁でしがらみの無い自分でなければ、この真実を言及できないのであれば、むしろ、主張し続ける義務と責任がある。
↑この図面は、転載・流用フリーです。オリジナル図面のURL↓
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