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本家ブログ「常識がひっくり返る消費税」のミニ版3週目の第11~15回は他のサイトや動画では説明されていない免税事業者の真実とインボイス制度とは何かを解説!

Ⅹ(旧 twitter)で、平日8・12・18時に投稿している分の1週分の纏め。

 




https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/itn_comparison/110.pdf


今週で先ず重要なのが第11回の「免税事業者の売上に消費税は存在しない」だ。これは裁判で最高裁まで争われ、判決が確定している。
 原 審 東京地方裁判所 平成9年(行ウ)第121号 平成11年1月29日 請求棄却
 控訴審 東京高等裁判所 平成年11(行コ)第52号 平成12年1月13日 控訴棄却
 上告審 最高裁第三小法廷 平成12年(行ヒ)第126号 平成17年2月1日 上告棄却
裁判所サイトの原文PDFは行間が詰まっていて読みにくいので、下記に転載。


この裁判は、事業者が当年度に課税事業者か免税事業者かの判断は、2年度前(基準期間)の課税売上高(税抜き売上)によるが、基準期間に免税事業者であった場合、課税売上高が、
 原告:売上総額から課される消費税額Aを差し引く(免税事業者もAが存在する)
 被告:売上総額そのまま(免税事業者には課される消費税額Aが存在しない)
のどちらなのかが争われた裁判である。ちなみに被告は税務署。
裁判当時とは免税点が違うが、現在で言えば、2年度前の売上総額が1000万円の時、
 原告:免税事業者でも課税売上高は909万円で、当年度も免税事業者
 被告:免税事業者なら課税売上高は売上総額で、当年度は課税事業者
判決は、被告の主張を認めた。その根拠が『国と国民との間の課税関係(納税義務の発生)は、納税義務者につき課税物件(課税の対象とされる物、行為又は事実)が帰属したときに成立するものである。』(原審の判決)だ。

次に重要なのが、第13回。先の判決を踏まえた時、税額控除型の付加価値税では免税事業者から仕入れると「仕入税額控除」が不可能であり、免税事業者は取引から排除されることが分かる。しかし、消費税は導入時に3000万円の免税点を設けて、事業者の6割以上が免税事業者であった(売上は数%程度)。そこで国は免税事業者からの仕入れでも「税額控除を容認」する措置を設けた(消費税法基本通達11-1-3)。

 

その理由は、預り金裁判の判決で示されている。(東京地裁 平成元年(ワ)第5194号)

~~~ここから~~~
判 決
二 消費税の問題点
1 消費者に対する過剰転嫁の危険性及び事業者間の不公平(請求原因2(一))について
(一)仕入れ税額控除制度
(1)先に述べたように、消費税の納税義務者が消費者、徴収義務者が事業者であるとは解されない。したがって、消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者に対する関係で負うものではない。
 もっとも、消費税の実質的負担者(筆者注:価格支払者)が消費者であることは争いのないところであるから、右義務がないとしても、消費税分として得た金員は、原則として国庫にすべて納付されることが望ましいことは否定できない。
(2)仕入税額控除制度は、事業者が行う仕入れにつき仕入れ先が免税業者であるか如何を問わず一律に仕入れ額の一〇三分の三を税額控除することを認めているが、免税業者からの仕入れには消費税相当額は上乗せされないから、一部に過剰控除が生じることになる。事業者が、このような過剰控除分の存在を考慮しないまま、商品等の本来の対価に対して一律に消費税分相当の対価三パーセント分を上乗せした場合、事業者が消費税として国に納付している額以上の額を消費者に過剰転嫁することになる。これを消費者の側から見たならば、消費者が右三パーセント分を消費税相当分の対価として支払いながら、前記過剰控除により右消費税分の一部については事業者が国庫に納付せず、事業者自身が取得するといういわゆるピンハネをしたような結果になることも否定できない。
 しかしながら、消費税の転嫁について、税制改革法一一条一項は「適正に転嫁するものとする」と抽象的に述べているだけであり、具体的な転嫁額については事業者の取引上の意思決定に任されている。そして、その対価の決定は、同業者との競争といった取引上の事情や商品内容に関する事情、その他諸般の事情を総合的に判断したうえで決定されるものであることを考慮すると、消費税分の価格への転嫁が、必然的に過剰転嫁を生ぜしめるともいいがたいし、消費税法自体が右過剰転嫁を積極的に予定しているものではないことも明らかである。
(3)消費税法は、仕入れ税額を把握する手段としては、事業者の事務処理上の負担の軽減を図るため、いわゆるインボイスによる必要はなく、事業者の帳簿記載や取引に際して交付を受けた請求書等によることとしている。事業者が仕入れ取引を行うに当たり、逐一その相手方が免税業者であるか否かを確認しなければならないとすれば、その事務が極めて複雑になるから、右確認を要しない仕入れ税額控除制度としたのである。右制度の下では、右(2)で述べたとおりの過剰転嫁の生じる危険性があるものの、それは必然的に過剰転嫁になるという程度のものではなく、市場経済の中での適切な転嫁を期待することによってある程度回避可能なものと認められる。
 そうすると、免税業者の売り上げ割合がさほど大きくないと推測される点も勘案すると、右制度が政策目的に照らして著しく不合理な制度であるとまではいえない。
(4)そうすると、仕入れ税額控除制度は、運用如何によっては、消費者に対する実質的な過剰転嫁ないしピンハネを許す余地があるという点で問題がなくはないが、これを不合理とまではいえない。
~~~ここまで~~~

つまり、帳簿方式は免税事業者と免税事業者から仕入れた課税事業者の双方に優しかったのである。逆に言えば、インボイス方式の欠点を補っていたのであるが、2023年10月からの「仕入税額はインボイス、売上税額は帳簿」のキメラ的インボイス制度の導入で、ご破算になった。
その結果、インボイス制度に反対しなければならない事を知らされてこなかった課税事業者は『逐一その相手方』のインボイスが正しいか否かを確認しなければならず、『その事務が極めて複雑に』なっている。

第15回で示した通り国民には何ひとつメリットが無いが、財務省には「免税事業者を取引から排除⇒課税事業者化」することで、税収増(増税)を実現できる。
インボイス制度の導入で、免税事業者が「課税事業者」になった場合、どれくらいの増収および消費税納税額になるのか。
2019(平成31)年2月の第198回国会の財務金融委員会での財務省の答弁によると

・増収見込み:2,480億円

・免税事業者:488万者(平成27年(2015年)国勢調査による)

・試算対象除外:116万者(農協等に出荷する農林水産業、非課税売上が主たる事業者)

・試算対象:残り372万者の内、BtoB取引の割合4割程度の161万者が課税事業者に
      転換するという前提(非転換者は211万者)。

・課税売上高:550万円程度(免税事業者の平均額)

・付加価値率:28%程度で粗利154万円、その10%を納税。

つまり、粗利=年収154万円から15万4千円。何と月収分以上を納めることになる。

もうひとつ、免税事業者の課税事業者化は、輸出取引での「とある制度」の正確性という面で国にはメリットがあるのだが、それは次週で。お楽しみに!


第12~14回の図を上下に並べた、2枚の比較図を作成したので、お役に立てれば。

↑これらの図面は、転載・流用フリーです。オリジナル図面のURL↓

https://www.mitsumori-yoichi.com/shohizei/wp-content/uploads/2024/05/VAT_Invoice_1.jpg

https://www.mitsumori-yoichi.com/shohizei/wp-content/uploads/2024/05/VAT_Invoice_2.jpg


消費税は、消費者の税金(預り金)ではない!

↑この図面は、転載・流用フリーです。オリジナル図面のURL↓
https://www.mitsumori-yoichi.com/shohizei/wp-content/uploads/2024/03/shohi_zei_diagram.png

↑この図面は、転載・流用フリーです。オリジナル図面のURL↓

https://www.mitsumori-yoichi.com/shohizei/wp-content/uploads/2024/03/shohi_zei_daiagram_akaji.png


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