夢の国とクサいメロディ featuring 「Land of The Free」 by GAMMA RAY

4/08/2024

t f B! P L
 


「ジャーマンメタル」というよく分からないジャンルがある。


「その名の通りドイツ産のメタルバンドは全部ジャーマンメタルっしょ?」と言われれば、ちょっと違う。

ACCEPTSCORPIONSもジャーマン出身だがジャーマンメタルかと言われると、やっぱり違う。

DESTRUCTIONは!?SODOMは!?KREATORは!?
RAMMSTEINは!?と聞かれても、違うもんは違う。

じゃあジャーマンメタルって何よ?
という話になるのだが、ものっそい乱暴に言うと

ツーバスドコドコのリズムにとっつきやすいメロディを乗っけた元気ハツラツなメタル

という解釈になる。たぶん。

それってメロスピと特長変わらないんじゃ…とも思うが、殆どイコールと思っても間違いないんじゃなかろうか。

メロディの分かりやすさ・クサさも特徴である。
それゆえににわかメタラー人口増加に大いに貢献したと思われ、かく言う私もその中の1人である。


その昔我が家にケーブルテレビが導入された時分、かじりついてMTVばっかり見ていた糞ガキの私は突如として流れてきたHELLOWEENの"Eagle Fly Free"のライヴ映像に猛烈な違和感を覚えた。

メタルと言えばBON JOVISKID ROW、そしてカリフォルニアの太陽を一身に浴びた何の悩みも無さそうな髪モリモリ化粧ベタベタLAメタル勢が未だMTVを牛耳っていた頃である。

良くも悪くもロックンロールを戯画化したようなLAメタル勢のPVばかりが流れる中、ツーバスドコドコ・ギターズクズク・クサいメロディという三種の神器を持って私の前に現れたHELLOWEENというヨーロッパからの一陣の風(なんだそれ)は、ヨーロッパのペの字も知らない欧州メタル童貞の私に黒船来航の如く衝撃を与えた。

その分かりやすいクサメロと程々のスピード感、サビの取っ付きやすさにお子ちゃまが惹かれないワケもなく、当時RPGばかりプレイしていた私はただでさえ頭の中がファンタジーな所に聴覚からもファンタジー成分注入という、10代男子の通過儀礼とも言うべき「厨二病」という重病を患ってしまうのであった…。


このように厨二病患者を量産したジャーマンメタル勢ではあるが、正直言って該当するバンドがあまり思いつかない…というか殆どHELLOWEENとBLIND GUARDIAN、そしてRAGEというクサ過ぎるラインナップしか思いつかないのである。

IRON SAVIORとかGAMMA RAYもいることはいるんだけども、どーもHELLOWEENの関係者がやってる分家くらいのイメージしかない。

かと言って古参のGRAVE DIGGERRUNNING WILDがジャーマンメタルなのかと言われると…なんか違う気もする。

冒頭、「よく分からないジャンル」と述べたのも、その辺りの分水領がフワフワしてるからで、ドイツ産でもないのに何故かジャーマンメタルと言われているワケ分からんバンドも存在する。

「ツーバス連打にクサメロを乗っける」という音楽イメージは固定されているのに、やはり「ジャーマン」という単語に惑わされ過ぎなのか結局HELLOWEENのイメージしか出てこないのは私だけだろうか?
うーん、考えれば考える程難しい。


しかし、「これぞジャーマンメタル!」という作品は確実に存在していて、HELLOWEENの「Keeper of the Seven keys」やBLIND GUARDIANの「Imaginations From the Other Side」などは非英語圏ならではの地力を見せつけた傑作中の傑作である。
結局HELLOWEENじゃねーか。

となればそのあたりを紹介すべきなのだろうが、捻くれている私はHELLOWEENの分家であるGAMMA RAYを紹介したいと思う。


本作「Land of the Free」がリリースされた当時は、メタルシーンの変革期であった。
グランジ・オルタナティヴの台頭、モダンヘヴィネス系クローンの大量出現。ベテランバンドまでもがそれらの新しい風を取り入れようとして殆ど失敗…ヘヴィメタルという音楽は確実にあったけれど、かつての栄華はほぼ失いかけていた時代である。

いわゆる「ごくフツー」のメタルが全く出てこなかったような気がする。

ほどほどの激しさ、ほどほどのメロディ、ほどほどの速さ、ほどほどのハイトーンヴォーカル…というお約束を忘れてしまったかのように、音楽情報誌の新譜情報ページをパラリとめくればそこにはPANTERAMACHINE HEADのクローンが大挙してアルバムレビューを埋めていた。
しかしクローンは所詮クローンである。
オリジナルを超える例など1つもなかった。

かと言ってグランジ方面に目を向けたところでNIRVANASILVER CHAIRは全く肌に合わないし。
なんと言うか女にモテない男が憂さ晴らしで楽器始めた結果、商売になっちゃいました!的な印象なんである。好きだった人達ゴメンなさい。

かくしてメディア的にも世論的にも「メタルは死んだ!メタルイズデッド!」と言わんばかりの風潮があった訳だが、それはアメリカと日本市場だけだった気もする。


そんな中リリースされた「Land of the Free」であるが、時代背景なんぞなんのその、期待以上のジャーマンメタルっぷりで厨二病ぶり返し待ったナシのファンタジー成分大爆発。

分かりやすいメロディだが、組曲のように壮大で様々な展開を見せる長尺曲アレルギーの方にもオススメな"Rebellion in Dreamland"

誰もが想像する「ジャーマンメタルの理想形」を現出させた"Man on a Mission"

マイケル・キスク(ゲスト参加)の十八番である天下無敵のハイトーンが炸裂する"Land of the Free"

勇猛過ぎるシンガロングで誰もがおとぎ話の勇者を目指したくなるドラマティックヘヴィメタルの醍醐味を詰め込んだ"The SAVIOUR"~"Abyss of the Void"のメドレー

など、「歌えるメロディ」が重要であるジャーマンメタルが如何にライヴ映えするかを証明した1枚と言えよう。


カイ・ハンセンの歌がイマイチ…という問題もなくはないがそれを補って余りある夢の国的世界観の完成度の高さは、「聴く夢の国」としての効力を存分に発揮しており、わざわざ大枚はたいて浦安の某夢の国に行かずともナチュラルトリップできる、いわばリスニングドラッグの様な作品でもある。
夢の国だのトリップだのドラッグだの言ってアタマおかしいと思ってるんだろう。わざとです



メタラーが「激しいもの」や「ヘヴィなもの」、「速いもの」を追い求める気持ちは分かる。

しかし、いつかそれらに疲れる時が必ずやってくる。


そんな時あなたを癒してくれるのは、ほどほどのツーバス連打とズクズクギター、そしてみんなで歌えるサビ、ファンタジックでクサ過ぎるメロディなのかも知れない…。




追記

"Rebellion in Dreamland"のPVだけはどうも頂けない。

「夢の国の反逆者」という何もそこまでというくらいにファンタジックなタイトルなのに、PVの内容は何故か生活感丸出しな農民一揆のイメージである。
そしてスケール感の小さいこと小さいこと。

出演してるのもくたびれたおっさん&おばはんが20人前後で農民役として出演、バンドの演奏シーンと合わせてサビを歌ったりしているが、「夢の国」とは程遠い悲愴感と土着感と生活感に溢れている。

ラストは杉作J太郎似の領主風のおっさんが「うわー領主だけど一揆起こされて年貢の納め時ってか~どないしよ」てな感じで終わる。
10人前後の一揆でオタつく領主ってどうなんだろう。



予算の都合とか時代もあったかもしれないけど、

夢の国って一体…。


ガッカリだよカイ・ハンセン。





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