we are not your kind slipknot
SLIPKNOT / We Are Not Your Kind (2019)

1. Insert Coin
2. Unsainted
3. Birth Of The Cruel
4. Death Because Of Death
5. Nero Forte
6. Critical Darling
7. A Liar's Funeral
8. Red Flag
9. What's Next
10. Spiders
11. Orphan
12. My Pain
13. Not Long For This World
14. Solway Firth

SLIPKNOTの5年振り、通産6枚目のアルバム。
Roadrunner Recordsからのリリース。

US出身のオルタナティヴメタルバンドです。
前作リリース後、Chris Fehn(Percussion,Vo)が脱退。バンドは新たなパーカッション奏者を加えています。
自分にとってはメタルの入り口となった大変思い入れの深いバンドです。
SLIPKNOTさえいなければ僕はメタルを好きにはならなかったんじゃ...いや、入り口が違えどどっかしらでメタルは好きになっていた気がしますね。
Joeyを解雇した前作に引き続いて本作はChrisの解雇と、何かしら後味の悪いトラブルがないアルバムを作れないのかと思ってしまいますが、ちゃんと新譜が出るのは喜ばしいことなわけで。
前作は今までの集大成というか、1st ~ 4thの要素を万遍なく取り入れてベテランらしく纏めた感じのアルバムで、初期衝動的な激烈さよりも自らのスタイルを手堅く守る保守的な作風だったと思います。それでもSLIPKNOTらしい格好良さは十分にあり、個人的には好きなアルバムでした。
で、本作の話。
まず作風はSLIPKNOTらしさを保った上で前作から変えてきています。
というのも過去作に比べるとエクストリーム性はいささか低めで、過去最高にダークな雰囲気を持っているから。
けたたましいスピード感や色んなパートが一体となってガチャガチャやってるジャンクなやかましさを控えて、不穏なメロディやネガティヴなヘヴィネスを底上げしている印象です。
なので初期のような激烈路線を期待する人には過去最高につまらないアルバムだと思います。
自分も初期厨なところがあるので、本作を「つまらない」という人の気持ちも凄く分かります。
激しくなくてイマイチという気持ちも分かります。

ただね、僕は本作、メッチャクチャ好きです。

悲しいことですが、Paul(Ba)もJoeyもChrisもいない今のSLIPKNOTが初期路線をやっても初期2枚の劣化版にしかならないことは前作である程度分かってしまいました。年齢を重ねてお金持ちにもなった今のSLIPKNOTじゃあの破壊的なテンションの高さは生み出せないだろうし、下手すりゃ「あぁ頑張ってるねぇ...」みたいに痛々しく映る可能性すらある。
しかし本作の提示している一貫してダークに腰を据えた"内省的なヘヴィネス"を孕む路線というのは年齢など関係なく普遍性を備えたサウンドだと感じましたし、現SLIPKNOTとしてはベストな路線を選択したのではないかと。
とにかく終始やかましくするのではなく、分厚くガチャガチャやるパートと綿密に音を重ねるパートを上手く切り替えてダイナミズムを作り上げている部分にミュージシャンとしてベテランの域に達した現メンバーによる優れた作曲センスの高さが表れています。楽器隊による音を詰め込む場面と隙間を持たせてウネりを生む場面の巧みさが突出していることで僕は本作のスピード感の減退に対して不満を覚えることはありませんでした。
また、本作ではシンセやエレクトロ、ノイズなどが大きくフィーチャーされている場面が多いんですけど、時に無機質さを強め、時に官能的に溶け、時に恐怖感を増長させるなど、ネガティヴな雰囲気でアルバムを纏め上げるのに大きく貢献しています。このアレンジ能力の高さがアルバムトータルで聴きたくなる要因になっているんじゃないかと。
最後に、本作を気に入った理由の一つとしては「クリーンVo中心の曲にSLIPKNOTでやる必然性を感じられたから」というのがあります。
今までのSLIPKNOTのクリーンVoナンバーってどうしても「いやそれSTONE SOURでやればいいじゃん」って思ってしまう曲が多かったんです。でも本作の#4や#10、#12を聴いて「SSでやればいいじゃん」と思う人はいないはず。そのくらいSLIPKNOTらしい毒気や色気が充満していてゾクゾクする。演奏的にはメタル要素の高い曲ばかりではないんですが、そんなことは関係なくアルバムの流れの中でしっかりと聴かせるあたり、やっぱ凄いなぁと感じてしまうんですよね。

#1は反復する警告音や物憂げなメロディが漂うイントロ。
続く#2は耽美な女性クワイアや分厚いパーカッションをバックにCoreyが甘いクリーンVoを重ねる導入 ~ ドッチャッ!!ドッチャッ!!!と跳ねるリズム隊とウネりまくるギターを中心にCoreyのスクリームを乗せてテンポを上げていく曲。ヌーメタ的スクラッチ音をまぶしたダウナーパートや軽やかなブラストパートなど、中盤から後半にかけての展開が格好良い。
工場ちっくな金属音に分厚い演奏を重ねる演奏にCoreyのルーズなクリーンVoが乗っかる導入の後、ワルいグルーヴ渦巻くミドルテンポと怒気の強いスクリームで進めていく#3。キレてるスクリームと決して声を張らないダルそうなクリーンVoとの対比がGoodですね。
#4は耳障りな電子音をバックにCoreyとコーラス隊がタイトルをひたすら繰り返して歌う1分ちょいの曲。
リズミックなヘヴィリフを刻むイントロの後、どっしり構えつつもノットらしい躍動感を持った演奏にラップ調のスクリームを加えてリズムのキレを増幅させるヴァースからコーラスは合唱隊のファルセットとCoreyの早口スクリームの掛け合いでメリハリを付ける#5。
ブワァンブワァンうるさい電子音にガッチャガチャ手数を重ねる演奏を加えたイントロ ~ ヌーメタらしい重低音をズンズンぶつけていくリズミックなミドルテンポに清濁入り乱れたスクリームを乗せるヴァースから、力みのない涼しげなクリーンパートへ展開する#6。
シンプルなアコギやKeyメロを鳴らす静寂に悲哀を含んだCoreyのクリーンVoを重ねて進行するも、Coreyの"ライアー!!!"の絶叫と共にどん底へ堕ちる#7。
#8はCoreyが叫び倒し、ヒズんだ重低音ギターと分厚いパーカッション、うるさいノイズが一体となってガチャガチャ暴れまくる、本作においては過去のSLIPKNOTっぽさが最も強い曲。
#9はサーカス風のメロディを古びたオルゴールのような音で鳴らす1分未満の曲。
妖しげなピアノの音色や遊び心のあるパーカッション、ねっとりしたギターを中心とした演奏にCoreyの気だるげなクリーンVoが乗っかる#10。メタル色は薄いんだけど、胡散臭さと収まりの悪さが共存した雰囲気がなんとも良い。
#11も往年のSLIPKNOTらしさが強い曲。不穏なメロディやビッグなヘヴィリフが疾走感を高めていく中に歌心のあるスクリームが混ざっていく様が非常に格好良く、涼しげに歌い上げるクリーンコーラスも非常にキャッチー。
不穏なエレクトロがノイズ混じりのウィスパーVoと混ざるイントロ ~ ミニマルに反復する電子音に温かみのあるKeyメロディや艶やかなクリーンVoが重なっていくスローな#12。冷酷な電子音に対しての優しいメロディやVoが逆に気持ち悪い。直接的なヘヴィネスはなくともヘヴィな雰囲気を纏っていて良し。
エレクトロをバックに切なげに歌うメロウなスローなヴァースからウネるヘヴィリフとどっしり跳ねる分厚いドラミングによるメタリックなコーラスへ展開する#13。ブレイクダウン気味のスクリームパートがメチャクチャ格好良いっすね。
ラストの#14は物憂げで沈み込んでいくようなクリーンVoで始まり、そのままガチャガチャとしたアップテンポに雪崩れ込む曲。デスメタリックなリフ使いやメタルコアちっくな単音リフ、鬱屈した静寂などを要所に忍ばせてダイナミックに聴かせていくスクリーム主体の曲。

初期2枚が好きなことには変わりありません。
あの2枚を超えることはもう不可能でしょう。
ですが、本作はそういった今までの路線とは違った魅力に溢れたアルバムです。
新たなフェーズに突入したことを感じられ、今後はどういう路線で来るのかというワクワク感もあります。
ただ一つ言いたいのは本作はアルバムとして完成されており、アルバムだからこそ映える曲が多数収録されているので、それがライヴではどうなるのかが全く読めません。
ライヴにおいて本作の曲が曲単位で切り出された時、メチャクチャつまらない可能性もあると思います。

評価:★★★★★