liverpoolfc.comより。

 

リー・リチャードソンの人生は一周して元に戻りました。

 

ケニー・ダルグリッシュのリヴァプールにスカウトされてから30年後、かつて選手で現在はスポーツ心理学者のリチャードソンは、ユルゲン・クロップのスカッドと共に仕事をする為に昨年の夏にクラブに採用されました。

 

元チェスターフィールドの監督-クロップからは“本当にとても面白い人”と評されています-は、ファースト・チームの体制において追加されたリソースで、心理学的な指導やアドバイスを求める人に提供しています。

 

それはリチャードソンが重要なものと信じているエリート・スポーツの要素です。それはとりわけ、後知恵が彼自身のピッチでのキャリアに恩恵をもたらしていたと確信しているからです。

 

「ワトフォードに行く前、若手の頃にリヴァプール加入寸前だったんだよ。」と彼は幅広い会話の中で語ってくれました。

 

「彼(ダルグリッシュ)がハリファクスまで私を観に来たことは知っていてね。なんで私と契約しなかったんだって一度彼に尋ねた時に冗談を言われたよ-まぁワトフォードがかなりの金額で私と契約してくれたからなんだが-お前にそんな値打ちはなかったからだってね!」

 

「若い頃の私は少々怒りっぽくてね。上手くなりたいっていう強い意欲はあったんだが、たまにちょっと怒りっぽくなりすぎてしまっていたんだ。だから、そうだね。私のようなヤツとは私だって縁を切っていたかもしれないね。」

 

「正直なところ、現在の私の役割であれば、助けてもらいたいと思っている選手は皆、助けられると信じているんだ。これは心理学者としてなんだが、最大のチャレンジだね。しばしば、助けられたく思っていない人にも対処するんだが、これは彼らがそれを必要ではないと思っていたり、メンタルヘルスのことを話す人に対してしばしば付いて回る潜在的な汚名のようなものを感じていたりするからなんだ。リヴァプールの若い子たちは、雑談や話し合いをすることにオープンだという点では最高だと言わなければならないね。」

 

「これはマスタリー・アプローチと呼ばれるものを持っている人たちのサインだ。彼らはただもっと良くなりたいだけなんだ。私が選手だったり、コーチや監督を務めたことがあるという事実は、私に少しだけ余分に考え方を与えてくれると思っている。」

 

「選手が話をしたくない時は分かるし、そんな時は私も話をしようとはしないよ。いつもという訳ではないが、何時ごろ人にアプローチするのが適切なタイミングなのかは感じ取ることができるんだ。場合によっては、率直であり前向きに正面から物事に取り組む必要がある。場合によっては、馬と心が通じ合える人のようなアプローチを取る必要があるとも思う。」

 

「選手たちにはいつも聞くんだ。“君は最高の状態でプレイできているかい?10点満点だったらどれくらいだい?”とね。選手が10点中8点だとか9点だと答えた場合は、彼らに対してそれ以上できることはないだろうね。」

 

「だが、あらゆるレベルで常にそうだとは限らない。最高の選手でさえ、パフォーマンスが落ちて苦しむことはあるんだ。そうした雑談するだけでも悪いことではないんだよ。」

 

 

リチャードソンの選手としてのキャリアは、彼をワトフォード、ブラックバーン・ローバーズ-そこでは1990年代初めにダルグリッシュと一時的に共に仕事をしました-、アバディーン、オールダム・アスレチック、ハダーズフィールド・タウン、そして最後にチェスターフィールドに連れて行きました。後に彼はそこで2年間監督を務めました。

 

スパイアーズを去って、競技から距離を置いたことが再考を促しました。

 

既に心理学の学位を取得していたリーの岐路に立った10年前の選択肢に対する熟慮は、大胆なキャリアの転換に繋がりました。

 

「私は選手をやり、コーチを務め、監督も務めたことで、ある種のユニークな視点を持っているんじゃないかと感じたんだ。」と彼は思い起こしました。

 

「それでもっとたくさんの資格を取得して、活動の中心を変えたんだ。もう10年間これをやって来ているね。正しい決断を下したと思っているよ。」

 

「私の見方では、以前の私はコーチであり監督だった。私もプロ・ライセンスを持つコーチだった訳だ。フットボールのことには特に触れないが、コーチングにはしっかりとしたプランニングが必要なんだ。選手たちのことをプランニングし、自分の考え方をプランニングするし、必要に応じて、物事を達成したい方法に対する独自のアプローチも必要だ。」

 

「選手たちがやりたいことや達成したいことに関するプランを立てるのを助けるんだ。問題解決。これは物事がどう彼らに影響を与えているのか、彼らがそれをもっと上手く扱うにはどうすれば良いのか考えるのを助けることだ。」

 

「大抵のフットボールクラブでは、そういった個人の1対1の仕事が本当に好きな選手とそうでない選手とでスカッドの中で分かれる傾向にあることを見つけ出したんだ。グループのようなものでも行われるんだが、これは間違いなく監督次第で、監督がそれを行うことで満足する時に行われる。リヴァプールでは私はそれほど多くのことをする必要はないし、それは必ずしも大きな焦点となるものではなかったんだ。間違いなく“私はリソースとしてここにいる。”ということだね。」

 

「私が初めてここに来た時には、監督が本当に良い形で引き入れてくれたと思うね。選手たちが利用できるリソースとして、とてもよく会っているよ。それが起こると、その週の日記からある種のプランを見つけ出す傾向にあるものでね。」

 

「私にとっては幸いなことに、現在のところフットボールがないという事実を除けば、私の仕事はまったく妨げられることはないね。皆と話をすることはできるし、同じ部屋にいるのとほとんど同じだよ。」

 

もちろん、リチャードソンはCOVID-19のパンデミックについて言及しています。

 

プレミア・リーグ・フットボールの中断と政府によるソーシャル・ディスタンシングのガイドライン実施は、選手たちが現在、オンライン・トレーニング・セッションを通じて、スカッドとして連絡を取り合いながら、自宅で個別にトレーニング・プログラムを続けていることを意味します。

 

コロナ・ウィルスのアウトブレイクが先月加速した際にクロップが説明したように、このような困難は世界中で対処しているより大きな問題と比べれば些細なものでしかありません。

 

リチャードソンは、現在の状況における自身の特定の役割を詳しく説明すると共に、プロフェッショナルな目的が突然止められたエリート・スポーツのスターにとって、心理学がいかに重要かを説明してくれました。

 

「フットボーラーとして、スポーツパーソンとして、自分のアイデンティティは肝心なものだ。それは皆の為でしかない。君が毎日やっていることはできないぞ、と誰かに言われたら-突然にストップしてしまった場合だ-それは影響を受けるだろう。」

 

「そして、フットボーラーにとってのプレッシャーのいくつかは、怪我をしたり、候補から外れることで、プレイできないということだ。間違いないのはこれが長く続くほど、心理的に彼らが何らかの影響を受ける可能性が高くなる。自分のことがどう見られるか、それが彼らのアイデンティティだからね。だから、それを奪われてしまうと、不快感を感じたり、困難となってしまう可能性があるんだ。」

 

「こういう若者はとてもやる気があって、可能なかぎり多くの成功を成し遂げたいと考えている。彼らは心理的にリソースが豊富だし、逞しいんだが、それはすべて相対的な話なんだ。プレッシャーは様々なレベルがあって、誰もが違うんだよ。」

 

「人生で多くの苦しみを抱えている人は大勢いて、我々皆がそれを分かっている。ただ、我々皆が祝福されているし、他の人がどのように苦しんでいるかを見る視点を持つべきなんだ。とはいえ、これは真実なんだが、選手たちはプレッシャーを抱えている。とても、相当なトップに立っていたとしてもだ。彼らはそれに対する免疫がないんだ。」

 

「この経験で強調したいのは、我々がいかに繋がっているか、どのように繋がることができるのか、そしておそらく何年にもわたって我々がどのように様々な人たちと繋がってきたのか、ということだよ。」

 

「現在ほぼ一年中プレイしている選手たちにとって、家族の犠牲はとても重大なものだよ。ポジティブな面を見ると、この期間-恐ろしい期間ではあるが-は一部の若者にとっては家族とちょっとした時間を過ごす機会になってくれたね。」

 

「彼らは時々超人じみたことをするかもしれないが、超人という訳じゃないんだ。プレッシャーは彼らにのしかかってくるし、時間は彼らにとって貴重なものだよ。」

 

クロップは最近、バランスの取れた関係について話していましたが、彼は理想的には監督とスカッドの個々のメンバーの間で共有されるべきだと信じています。

 

“本当に選手たちとは友人になりたいんだが、彼らの親友になることはできないんだ。そういうものだよ。”と個人的にも建設的なプロとしても双方が近くなることの必要性についてコメントしていました。

 

リチャードソンが最も重要な仕事のいくつかを成し遂げられると感じているのはその領域-特定の試合で起用されなかった選手など-です。

 

 

「確かに、ユルゲンは人間をマネージングすることに関しては、おそらく私が出会ってきた中でも最高の監督の1人だろうね。」と51歳のリチャードソンは語ります。

 

「彼はあるがままに生きる人間で、自然な形で人を奮起させ、自然な形で人と素晴らしいコミュニケーションを取っておるね。パブリックに対する彼のコミュニケーションは私が今まで見てきた中でも最高だよ。」

 

「当然のことなんだが、私が初めてここに来た時にユルゲンが言っていたのは、自分は決断を下していると。ポジティブな決定だが、選手たちにネガティブな形で影響を与えるものなんだが、いつもそうしたネガティブな結果に対処することはできないとね。」

 

「おそらく、私が入ったポジションは、選手たちがそうしたネガティブな結果を目にしても、それをポジティブなものに変える時に手助けできる場合があるものなんだ。監督と私の関係という観点から自分の役割を理解しているよ。私はバッファのようなものとして彼の為にここにいるんだ-必要であればだがね。」

 

「他のコーチたちと同様、私だけじゃないよ。この環境の中にいる誰もが、お互いと選手たちの心理的パフォーマンスと幸福に関わっている。我々皆が一緒でいるんだ。」

 

「監督は最も重要な人物だし、いつでもどのフットボールクラブにもいる。彼は掌の上に選手たちの運命を握っていて、他の誰もが彼がそうした選手たちを最大限に活用しようとするのを手助けする為にここにいるんだ。」

 

「私の感覚からは、そうだね、そうした要素はある。監督が下したポジティブな決断のネガティブな影響に対処するのにおそらく苦労している選手がいれば、おそらく私はそこに入っていくことができるよ。」

 

これら前例のない状況は、パンデミックに対処する最前線にいるキーワーカーたちから無期限に家にいることを求められている人たちまで、あらゆる人に様々な難題をもたらしています。

 

しかし、リチャードソンは、結論に関するメッセージにおいて、楽観主義のレベルを維持すること-そしてそれを共有すること-は有益であり得ることは間違いないと語ります。これはファンも選手たちも同様だと。

 

「それは絶対に重要だし、必ずや監督がベストを尽くしてくれているよ。監督は他のスタッフと共に選手たちを未来に導いてくれる。私はそれをサポートする為にここにいるんだよ。」

 

「楽観論と悲観論は、我々皆が人間として自分の内側に持っている連続したものの両極端にあるもので、それは我々の性格によって大きく定義されているね。繰り返しになるが“バランス”という言葉に戻るんだ-現時点で我々のまわりにある難題への警戒や意識を維持することは本当に大切だと思う。だが、楽観的でいて、先を楽しみにして、一緒に乗り越えようと言うことも大事なんだ。」

 

「リヴァプールのファンは、いつかはまたアンフィールドに戻って、このチームが素晴らしいプレイをしているのを観るだろう。いつになるかはまだ分からない。だが、楽観的になることが大事だよ。楽観的になれることはたくさんあるんだ。」

 

「そして、おそらくこれは変化のきっかけになるだろう。つまり世界中の人たちがある物事を見て、その価値観を目にして、おそらくより良くなる為に行動する必要がある。それが私が手にした楽観主義だ。それは大切だよ。」

 

リヴァプールFCで普段注目を集めない仕事をしている人たちにフォーカスを当てるシリーズ。
今回は心理学の側面から選手たちをサポートしているリー・リチャードソンです。

 

同じような扱いのスタッフは他にもいらっしゃるんですが、彼もリヴァプールの公式HP上はスタッフの中に名前はありません。
おそらくフルタイムでリヴァプールの仕事をしていないのでしょうね。彼のTwitterアカウントのプロフィールを見ると、リヴァプールのパフォーマンス/スポーツ心理学コンサルタントとあり、他にもランカシャー・クリケットクラブというクリケットチームでも同職に就いているようです。

似たような立ち位置での仕事は、現在はイングランド代表フットボールチームで仕事をしているスポーツ精神科医のスティーブ・ピータースが2012年11月~2014年3月に関わっていましたね。

 

ピータースがリヴァプールの仕事を離れてから、リチャードソンがリヴァプールでの仕事を始めた昨年の夏までの間、同じような役割を務めた人がいたのかは定かではないのですが、他のBehind the Badgeを読んでいても感じることですが、クロップたちは(ファースト・チーム、アカデミーにかかわらず)選手たちの精神的なケアに心を砕いているようです。

 

メンタルヘルス、というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、世界的に有名なフットボール選手も精神的な問題を抱えている人は多数います。戦術だとかテクニカルな面、フィジカル面だけでなくこうした分野にも力を入れなければならない時代なのかもしれませんね。

 

 

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