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 『パレス・メイヂ』の番外編。本編完結後の登場人物たちそれぞれの後日譚五編を収録。

 

 「東宮のピアッフェ」 東宮のお妃選びの顛末。

 「鹿王院宮の夫問い」 アスター夫人にプロポーズした鹿王院宮。

 「お律の藪入り」 職業婦人として充実した生活を送るお律に見合い話が。

 「陛下のプロトコール」 退位後の彰子と御園の生活。

 「柏木の屏風裏」 先帝からの仕人・柏木のショート・エピソード。

 

 という内訳です。

 特に予想外の展開やどんでん返しがあるわけではなく、おそらくこうなるんだろうな~という良い意味で予想通り・流れのままの期待を裏切らない展開でストーリーが進むのですが、それがこの上もなく心地よい。

 この漫画の収録作品のメインである「陛下のプロトコール」はまさにその最たるものですよね。

 普通こういうテーマだと、自分たちの恋の障害となる慣例やルールを打ち破って一緒になるぞ!というストーリーが多いものですけど、御園と彰子が選んだのは、この国の決まりの中でそれを破ることなく添い遂げるという道。なんて奥ゆかしくて凛とした二人なんだろうと思います。二人らしいというか。

 

 これが鹿王院宮のように慣習をバンバン打ち破っていくタイプだと、逆に普通の王道恋愛ストーリーになっちゃうので、二人の選んだ道がこういう方向で良かったと思います。そこにはたぶん悲しみや苦労もあると思うけど、こういう道もありなんだなっていう選択肢の提示ですよね。この進み方でも幸せになれるっていう。

 

 鹿王院宮が出ている「鹿王院宮の夫問い」はやっぱり真逆のストーリーなんだけど、実はこれが一番おもしろかったなぁ。ストーリーの組み立て型が秀逸すぎる。創作のお手本みたいな内容。

 これ、本編の貝合わせの段階で伏線張ってたのかなぁ。だとしたらすごすぎるし、逆に当時この話を考えていなくて、今回あの貝合わせの場面を伏線に利用することを思いついたのだとしたら、それはそれでもっとすごい!

 これは本当にきれいにストーリーが決まった作品ですわ。久世番子さんすごいな!

 『宮廷画家のうるさい余白』の時も思ったけど、ストーリーの組み立て力が半端ないわ。