こめられた弾丸 ★★★★☆

 銃によって人生を狂わせて、または狂わされてしまった男女の群像劇風ストーリー。

 銃社会と、あと人種差別についても触れています。

 怪異や怪奇現象などは一切出てこない、極めてリアリスティックな作品で、ホラーというよりサスペンスと言った方がいい。

 

 人がバンバン死にますが、赤子も幼児も容赦なく殺されるので、そういう描写が苦手は方はご注意。

 ひとつひとつのエピソードが後味悪すぎる上に、結末もバッドエンドでまったく救われないので、読んでいる時も読み終わってからも「えぇ・・・」とテンションの上がりどころがなく・・・。

 悪人勝利で終わる作品って、それはそれでアリだとは思うけど、やっぱり読後がスカッとしなくて苦みだけ残していくので、あまりカタルシスを得られませんね。

 

 最後は「もし銃を持っていたら、この話は違った結末を迎えていたかも」というような印象的な文章で締められていますが、これ逆に、もし作中の彼らが銃を持っていなかったとしたら、みんなもっと違った結末を迎えられていたのかなと考えずにはいられません。

 

 森林火災がもっとストーリーに絡んでくるのかと思っていたけど、そうでもなかった。

 

雲島 ★★★★☆

 若くして亡くなった友達を追悼するためにスカイダイビングに挑戦することになった仲間たち。

 ダイビングを人一倍怖がっていた冴えないチェロ奏者の青年オーブリーは、なぜか巨大な雲の上に着地してしまうが・・・という話。

 

 未知との遭遇SF。

 主人公のとぼけた性格のせいか、なんとなくコミカルな出だしのせいか、どこかのほほんとした雰囲気が漂う。

 

 謎の物質が脳内イメージを読み取ってその姿をとる、という発想は目新しいものではないけれど、主人公の実らない片思いからの脱却をうまくストーリーと重ねて表現していると思う。

 

 前の「こめられた弾丸」と次の「棘の雨」という重いテーマの作品の間の箸休めとしてちょいどいい。