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「Gotoイート」がよく報じられています。
いつも言ってますが何もしないよりはマシなので、やってもいいと思います。しかし問題は、その規模と話題性のアンバランスさです。
まず予算ですが、総額で2003億円。うち業務委託費が469億円となかなか大した割合を占めており、残りは1534億円です。

もちろん、委託費の469億円は無意味だ…なんてことは言いません。食事券として使われる1534億円も、委託費の469億円も、誰かが働いて得る所得という意味では同じです。そのためには当然ながら経費もかかるので、波及効果もあります。
確かに「この委託業者に飲食店の469/1534程度以上に相当する働きがあるのかどうか?」というのは別の問題としてあるし、ほとんどを企業が懐に入れるようでは悲しい。また、そもそも高すぎるという指摘もご尤もです。
しかし、これらの点には、今日は触れません。

で、2003億円を使うことでどの程度の効果があるのか。
総務省の簡単な試算ツールを使ってみます。1534億円はもちろん「対個人サービス」に入れておきます。委託費の469億円ですが、ここでは一応「公務」としました。
その結果は、約3255億円(約1.63倍)です。
これ以上ないほど適当な計算ですが、まあ少なくとも、


夢のような数字には絶対にならないこと、

Gotoイートによって日本経済が有意なレベルで回復することはあり得ないこと(=誤差に近い程度でしかない)、


…くらいは確認できるでしょう。
まあ効果を思い切り「盛った」として、Gotoイート2003億円の予算で4000億円(約2倍・建設業なみ?)の経済効果があったとしましょう。その場合、


GDPを550兆円とすると0.073%分に相当します。

GDPを500兆円とすると0.080%分に相当します。


先日の内閣府の発表(GDPの四半期報・改定値)は多くの方の記憶に新しいかと思います。いま問題になっているのは、四半期ですら7~8%、年率では20%台がどうのという世界です。
繰り返しますが、もちろん2003億円の予算は「あった方がマシ」です。間違いなく。一部の飲食店には大きな効果があるだろうし、潰れるはずだった店が潰れずに済み、その後も経済効果を生み続けるのかもしれない。そこを無駄だと言うつもりは、全く、ありません。
しかし全体として見ると(そしてこのような状況では"全体"を見ることこそが政治の役割です)、どうもこう、国民の目の前にやせ細った人参を一本ぶら下げ、一生懸命テレビなどで報じて、国民は喜び、さあ1万円分買おうか、2万円分にしようかと騒いでいるだけのような…。

嫌な話をもう一つすると、Gotoイートで得をした分を完全フリーの予算として別途使うなら効果がありますが、その分を貯蓄に回すと(=単に「外食の出費が抑えられて良かったね!」…となると)効果はモロに減ります。
つまり上記の計算には、普段でも(Gotoイート無しでも)行くはずだった外食分は1円も算入できません。


Gotoイートが無ければやらなかったであろう、贅沢な食事を楽しんだ


とか、


Gotoイートが無ければそもそも行くつもりの無かった外食をした


場合、つまり「純粋に出費を増やした」場合だけが算入できます。
だからいつも言うのですが、お金に色は無いのです。
地域振興券などと同じ理屈で、得たプレミアムをそのまま懐に入れると意味はありません。



予定通り、外食で10000円使った。
出費は全て自己負担。


予定通り、外食で10000円使った。
出費は自己負担8000円と、Gotoイート2000円。
その後の消費行動に変化なし。


この②は、単に国のカネを使って食事したという財産移転の意味でしかなく、①と変わりません。つまり、せっかく積んだ財政赤字なのに、使った(=誰かが上乗せで働いて所得を得た)ことにはならない。結局は政府の赤字増、民間の黒字増となり、バランスが拡大しただけです。逆よりはマシなのでしょうが。
少なからずの人々が②のパターンになっても不思議ではありません。もちろん貯蓄(②の場合は2000円の増)という精神的余裕を無視してはいけませんが、さて、それで本当に0.073%に近いほどの効果があるのか…と言われると極めて疑問です。
というか、相当に「盛った」のに0.073%でしかないのですが。

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簡単に言うと、

さも目玉政策であるかのように誘導することで、2003億円というゴミのような誤差的出費で巨額の対策をしているかのような印象を与えようとしたのでは…。

ということです。
いや、まあ、考えすぎですな。ごめんなさい。

私のヘタの考えなんてどーでもいい話なのですが、いずれにせよ「Gotoイート」で日本経済が有意なレベルで回復する可能性はありません。だって単純に数字がそうなってんだもん。やっちゃダメとは言いませんが(むしろやって良いのですが)、話題先行が過ぎています。全く大したもんではありません。

なお、消費税では20兆円以上をかき集めていますが、2003億円とはその100分の1にも満たない。上記では波及効果として大いに話を盛り、倍の4000億円の効果があると設定しましたが、同じように消費税には逆の効果があります。乗数が具体的にいくらかは別ですが、20兆円を吸い取られると、20兆円以上のマイナスの効果があります。しかも消費税は「緊急的税制」ではないので、毎年、長期に渡って取られ続けます。完全にキチガイ沙汰です。
「消費税を下げても国民はすぐに慣れるから、減税に経済効果は無い」と言う人(甘利さんとか)がいますが、同じ口で「Gotoイートはプレミアム分だけ貯蓄に回りかねないから経済効果は無い」と言わないとしたら、なかなか不思議です。
もちろん私は、減税もGotoイートもやってほしいのですが。

アガってきた一部の人の気分に水をかけるのは景気に良くないのかもしれませんが、これは私のせいではない。意識として「Gotoイートという大規模な経済対策がある!」なんて勘違いする方が、木を見て森を見ないことになるし、より有害です。



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