「表現したいこと」と「隠しておきたいこと」 | BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

ありふれた日常を考察する
<芦屋・三宮>

人には、自分自身のことを知ってもらいたいと思う部分と、
決して知られたくない、そんな部分とがある。
あっけらかんと「私には隠しておきたいところは何一つない」
と言う人もいる。
そんな人でも詳細に探れば「秘密にしておきたい」ものは
一つや二つはあるもの。
明治、大正、昭和といった時代を小説家として過ごした泉鏡花は、
ちょっと怪奇がかった小説を得意としていた。
その彼は、人に触れられたくない性禀(せいひん)があった。
その一つは潔癖症。
人が触れるものに直接 手で触れることができないのは、もちろんのことだが、
口に入れるもの、すなわち、食品類も熱を通さなければ食べることができなかった。
お酒も飲むがナマはダメ。冷酒は生理的に受け付けなく煮沸するほどの熱燗でなければならない。
そんな潔癖体質はどこまで?というほどだが、それも序の口。
「腐る」などの漢字も不潔感を感じて自らの手で書けない。
ここまでいくと、社会生活ができるのかい?
と思わせられるほど。
その彼の小説に『外科室』という短編小説がある。
これは、とある伯爵夫人が主人公。
この夫人は胸部を病み切開する外科手術を受ける以外に助かる道はないと諭される。
これほどの手術となると、全身麻酔でなければならないと医師が説得するが
頑なに、全身麻酔を拒否。
手術をしないと命に関わると説得されるが、そこで夫人は麻酔なしの手術を選択した。
だけども手術が行われている中で、こらえきれずに自ら命を絶つという話。
なぜ、そんなにまでして頑なに拒否したのか?
それは、麻酔を打つことで、無意識の世界に入り込み、安易に
「ある」ことを口走ってしまうことを恐れたためだという。
そのあることとは9年前のこと。
ある人への秘めた愛を、自らの口を通して語ってしまうこと。
このことを何よりも恐れた、というもの。
この小説は、いかにも泉鏡花らしさが表れていると言える。

この小説を読むと「隠しておきたいこと」こそ、
その人の存在を大きく語っているモノだと思えてくる...


*無断転載を禁止します*严禁复制粘贴**
本"Boots strap"博文禁止复制粘贴。如有发现,本人将采取法律措施。

*2カ所のブログランキングに参加しています。
↓↓下のアイコンにポチッとお願いします。押すとランキングのページに行きます。お手間ですが戻ってきて、もう一つ下のアイコン(にほんブログ村)にもポチッとして頂ければ、、。

エッセイ・随筆ランキング
↓↓ にほんブログ村は、こちら。  
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村

フレンドリーでリーズナブルな外国語スクール
*外国語リニア
芦屋市大原町7-8-403

*ALEX外国語スクール
神戸市中央区旭通5-3-3 5F

<了>