見るなら、BLM問題が持ち上がっている今でしょう?・・・ってことでようやく見ました。
参った。
アカデミー賞取って当たり前の出来でした。
何しろ台本がいい。
配役がいい。
差別問題と言うと、どこか肩に力が入ってしまう。
作る方も、見る方も。
重いテーマだけど、逆に軽いエピソードを丁寧に積み重ねて行く手法を取っています。
決して、上から目線で作られていません。
ねえ、これって変だろう?オカシイだろう?と見る側を自然に巻き込んでしまう、そんな造りの大人の映画です。
ピアニストのシャーリーは、よりによってギャラも少ない、危険な南部の演奏旅行をしようと何故決心したのか?
これがテーマです。
大雨の中を走るシーンで、運転手トニー役のヴィゴ・モーテンセンが「オレは黒人以下の生活だ。イタリアの移民だから、底辺の生活しか出来ないんだ。教養があって、天才芸術家でお金持ちのオマエになんか解らないだろう」とキレます。
それを聞いたシャーリーが車を止めさせ降りてしまいます。
「オレは金持ちかも知れないが、孤独だ。白人たちは教養があると見せかけたくてオレ(黒人)の音楽を聴きに来る。そのとき以外は彼らにとって単なるニガーだ。それが白人社会だ。黒人社会ではオレは黒人でさえない。男でもないオレは一体何なのだ!」と雨の中で叫びます。(シャーリーはホモだったのです。)
このシーンがこの映画のキモです。
見ていただければ解るのですが、シャーリーは2ヶ月間トニーと過ごすことによって「変化」します。
そして、トニー自身も黒人と苦楽を伴に過ごすことによって、明らかに「変化」します。
ロードムービーの醍醐味です。
旅の始まりと終わりに変化(成長)するのです。
最後に映画を見終わったぼくら観客も、「変化」したことに気付かせられるのです。
実にしたたかに作られているものの、余韻が心地よい映画です。
★★★★★