Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

10/8(月・祝)Hakuju Hall/青木尚佳&エマヌエーレ・セグレ/デュオ・リサイタル/抑制的な表現の中に繊細な抒情性がキラリと光る

2018年10月08日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
土曜ソワレシリーズ/女神との出逢い
青木尚佳&エマヌエーレ・セグレ ヴァイオリン&ギター デュオ・リサイタル

2018年10月8日(月・祝)17:00〜 フィリアホール S席 1階 1列 8番 3,500円(セット券)
ヴァイオリン:青木尚佳
ギター:エマヌエーレ・セグレ
【曲目】
パガニーニ:チェントーネ・ディ・ソナタ第1番 M.S.112
パガニーニ:大ソナタ M.S.3より第2楽章「ロマンス」
パガニーニ:チェントーネ・ディ・ソナタ第4番 M.S.112
シューベルト:ソナチネ 第1番 D384
ジュリアーニ:グラン・ポプリ 作品126

ファリャ:スペイン民謡組曲
     「ムーア人の織物」「ナナ」「カンシオン」「ポロ」「アストゥリアスの歌」「ホタ」
アルベニス:マリョルカ島 作品202 *ギター・ソロ
アルベニス:アストゥリアス 作品47 *ギター・ソロ
サラサーテ:アンダルシアのロマンス 作品22-1
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン 作品20
《アンコール》
 クライスラー:愛の悲しみ

 ヴァイオリン界期待の成長株である青木尚佳さんと、ギターの世界的な名手として名高いエマニュエーレ・セグレさんのデュオが実現し、国内で4公演のツアーが組まれた。10月6日神奈川県の葉山町、本日8日が東京のHakuju Hall、11日が静岡、13日が横浜市青葉区のフィリアホールの4公演とのことだ。
 尚佳さんもギターとのデュオは初めてということで、とまどうことも多かったことと思う。何しろ、クラシック・ギターは、いわゆるクラシック音楽で普通に使われる楽器に比べると、音量が極端に小さい。ヴァイオリンは場合によっては2,000人のホールでもソロで聴かせることができるが、ギターは300人のホールが限界に近い。しかし、和音が出せる楽器なので、歌唱や他の楽器の伴奏に向いていることも確かだ。私はヴァイオリンとギターのデュオはかなりの回数聴いているが、分野が異なる楽器であることも確かなので、聴いたことがないという人も多いのではないだろうか。

 ヴァイオリンとギターという組み合わせの楽曲では、第一に名前が上げられるのはパガニーニである。パガニーニはヴァイオリンの鬼才としては誰にでも知られているが、自身はギターも弾き、一時期はかなり入れ込んでいたと言われている。そのため、ヴァイオリンとギターのために作曲された曲がいくつも存在する。前半に演奏されたパガニーニの3曲は、いずれもヴァイオリンとギターのために書かれた曲である。パガニーニといえば、「24のカプリース」の余りにも有名で、その悪魔的と呼ばれる超絶技巧が強烈な印象を残しているが、ヴァイオリン協奏曲や「カンタービレ」などに現れる旋律は、きわめで歌謡的で伸びやかなものである。本日の3曲もいかにもイタリア的な明快さを持っていて、歌曲か民謡のような親しみやすい旋律がふんだんに盛り込まれている。
 一方、シューベルト以降はギター用の編曲ものとなる。「ソナチネ」はもちろんピアノ伴奏のヴァイオリン・ソナタであり、可憐な曲想で人気もあってしばしば演奏される。ギター伴奏だとぐっと静かな印象に変わる。そして、ジュリアーニの「グラン・ポプリ」はフルートとギターのために書かれた曲である。イタリア的な伸びやかな旋律は歌うようである。
 後半のファリャの「スペイン民謡組曲」は、元は歌曲集であるが、コハンスキがヴァイオリンとピアノのために編曲したものがヴァイオリンのリサイタルで時に演奏される。それをギター伴奏用に再編曲されたものである。元がスペイン民謡だからギターとの相性は良いが、オリジナルではないところが面白い。
 アルベニスの「マロリュカ島」と「アストゥリアス」はギター独奏の有名な曲。
 サラサーテはスペインのヴァイオリニストでスペイン音楽を基盤としたヴァイオリン曲を多く残しているが、「アンダルシアのロマンス」はヴァイオリンとピアノのために書かれた。名曲である。一方有名な「ツィゴイネルワイゼン」は超絶的な独奏ヴァイオリンとオーケストラのために書かれた曲。ピアノ伴奏用に編曲されて、実際にはそちらを聴く機会の方が圧倒的に多い。

 さて、実際の演奏の方であるが・・・・、何とも言いようがないくらい、セグレさんのギターの音量が小さく、尚佳さんがかなり抑え目に弾かざるを得ないような状況になっていた。セグレさんの音量については、彼の持ち味なのか、ギターとはいえあまりスペイン風の情熱的な演奏スタイルではなく、極めて上品で清楚なのである。セグレさんはイタリア人で、北米やヨーロッパを中心に活動してきた人であり、人柄的にも内向的な性格の印象。ただし、音量は小さくとも、繊細な表現力でとても音楽的、優しさが溢れていて、心地よい演奏である。ヨーロッパの小さなサロンなどで演奏されるとピッタリのイメージだ。
 ギターがそういった具合なので、尚佳さんのヴァイオリンも音量をかなり抑えている。それでも旋律を豊かに歌わせるためにはある程度以上のダイナミックレンジも必要になる。つまりは、弱音部を一層抑え込んで、抑揚に深みを出していた。弱音が続く中で、音の質感を豊かに保っていたのはさすがだ。派手な超絶技巧ではないが、こうした地味な技巧を巧く使った表現力は素晴らしい。今回のデュオ・リサイタルのツアーでは、いつものピアノ伴奏とは違った世界観の音楽を演奏することで、表現の幅が一層広がったのではないだろうか。



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