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行政事件訴訟法38条。

ご存知の通り、「取消訴訟に関する規定の準用」に関する規定です。

取消訴訟に関する様々な規定を、他の抗告訴訟でも使いましょうという規定ですね。

 

これがまぁとにかくややこしい。

どれくらいややこしいかというと、講師になりたての頃、これをネタにした模試の問題を作る場合、とにかく準用先の条文を細かくチェックしろと、わざわざ指摘されたくらいです。

特定の論点を取り上げて、作問上の注意を述べられるなんて、後にも先にもここくらいしかありません。

 

もっと言ってしまえば、行政書士試験の試験委員が、没問をかますくらいですね。:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

 

 

さて、そんな行政事件訴訟法38条ですが、ここ最近の「よし、まとめてみよう」シリーズのブームに乗っかり、ちょっと整理しておこうかと思います。

なお、規定を最も準用している訴訟が「無効等確認の訴え」(無効等確認訴訟)なので、無効等確認訴訟に絞ります(出ているのはここだし)。

 

 

上記のとおり、行政事件訴訟法38条は、取消訴訟の規定を準用するというものです。

では対象となりうる「取消訴訟の規定」とは何かというと、行政事件訴訟法の第2章第1節「取消訴訟」で、第8条から第35条までです。

ザラッと並べてみましょうか。

 

第8条(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

第9条(原告適格)

第10条(取消しの理由の制限)

第11条(被告適格等)

第12条(管轄)

第13条(関連請求に係る訴訟の移送)

第14条(出訴期間)

第15条(被告を誤った訴えの救済)

第16条(請求の客観的併合)

第17条(共同訴訟)

第18条(第三者による請求の追加的併合)

第19条(原告による請求の追加的併合①)

第20条(原告による請求の追加的併合②)

第21条(国又は公共団体に対する請求への訴えの変更)

第22条(第三者の訴訟参加)

第23条(行政庁の訴訟参加)

第23条の2(釈明処分の特則)

第24条(職権証拠調べ)

第25条(執行停止)

第26条(事情変更による執行停止の取消し)

第27条(内閣総理大臣の異議)

第28条(執行停止等の管轄裁判所)

第29条(執行停止に関する規定の準用)

第30条(裁量処分の取消し)

第31条(特別の事情による請求の棄却)

第32条(取消判決等の効力①)

第33条(取消判決等の効力②)

第34条(第三者の再審の訴え)

第35条(訴訟費用の裁判の効力)

 

今の時期であれば、上記の条文見出しだけでも、何となくどんな内容だったかを思い出すことができるのではないかと思います。

では次に、行政事件訴訟法38条により、無効等確認訴訟へ準用される規定をチェックしてみましょう。

 

第8条(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

第9条(原告適格)

第10条(取消しの理由の制限) ※2項だけ ※38条2項

第11条(被告適格等) ※38条1項

第12条(管轄) ※38条1項

第13条(関連請求に係る訴訟の移送) ※38条1項

第14条(出訴期間)

第15条(被告を誤った訴えの救済)

第16条(請求の客観的併合) ※38条1項

第17条(共同訴訟) ※38条1項

第18条(第三者による請求の追加的併合) ※38条1項

第19条(原告による請求の追加的併合①) ※38条1項

第20条(原告による請求の追加的併合②) ※38条2項

第21条(国又は公共団体に対する請求への訴えの変更) ※38条1項

第22条(第三者の訴訟参加) ※38条1項

第23条(行政庁の訴訟参加) ※38条1項

第23条の2(釈明処分の特則) ※38条3項

第24条(職権証拠調べ) ※38条1項

第25条(執行停止) ※38条3項

第26条(事情変更による執行停止の取消し) ※38条3項

第27条(内閣総理大臣の異議) ※38条3項

第28条(執行停止等の管轄裁判所) ※38条3項

第29条(執行停止に関する規定の準用) ※38条3項

第30条(裁量処分の取消し)

第31条(特別の事情による請求の棄却)

第32条(取消判決等の効力①) ※2項だけ ※38条3項

第33条(取消判決等の効力②) ※38条1項

第34条(第三者の再審の訴え)

第35条(訴訟費用の裁判の効力) ※38条1項

 

 

行政事件訴訟法38条によって準用されている規定に、色を付けてみました。

 

……気が付きました?

実は、取消訴訟に関する規定のほとんどが、無効等確認訴訟に準用されているんですよね。

だから、(受験戦術上の)整理の仕方は、「原則:準用する」でOKなのです。

ただし、いくつかの規定に関しては、「例外:準用されない」となるわけだ。

 

こうやって、「原則:準用する」という、(正直かなり乱暴ではありますけど)ギュッとうまく整理してしまうことによって、覚える量をグッと減らすことが可能になるわけ。

 

あとは「例外:準用されない」規定を覚えれば終了なのですが……んじゃついでにその理由も含めて整理しておこう(一般的なテキストにはここまで書いてくれてないから)。

 

第8条(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

第8条は条文見出しにもあるとおり、「処分の取消しの訴え」と「審査請求(不服申立て)」の関係に関する規定です。

ここで、受験生であれば思いつくのが「審査請求前置(不服申立前置)」の話です。

 

元々審査請求前置の狙いは、裁判所が判断をする前に、まずは行政庁に判断してもらいましょうやという話です(行政庁の一次判断)。

しかし、今回は「無効等確認訴訟」です。

つまり、問題となっている行政処分(行政行為)について無効である(判例によれば、重大かつ明白な瑕疵を抱えている)疑いがある。

にも関わらず、まず行政庁に判断してもらいましょうというのは、原告に対して過大な負担を強いることになります。

 

それはさすがにおかしいでしょってことで、準用しないこととしたわけです(重大かつ明白な瑕疵を抱えているのなら、裁判所も判断できるっしょという判断もある)。

 

第9条(原告適格)

無効等確認訴訟には、行政事件訴訟法36条があります。

つまり、準用しなくても既に原告適格に関する規定がありますので、準用しないこととしたわけです。

 

第10条1項

今回は「無効等確認訴訟」です。

無効って……誰に対しても効力を有しないのですから、原告が自己に関係のない無効事由を主張しても支障はないでしょう。

したがって、準用しないこととしたわけです(もっともこれについては、「ん?」とツッコミが入ってます)。

 

第14条(出訴期間)・第15条(被告を誤った訴えの救済)

これらはワンセットで考えます。

元々出訴期間を経過した場合でも、処分の無効を主張して抗告訴訟を提起する者に対して救済の途を与えるという趣旨のもとに登場したのが、無効等確認訴訟でした。

となると、そんな無効等確認訴訟を出訴期間により制限するのはヘンな話でしょう。

したがって、出訴期間については、準用しないこととしたわけです。

 

また、被告を誤ってしまうと出訴期間の制限に引っかかってしまうことを想定して設けられたのが、行政事件訴訟法15条です。

上記のとおり、無効等確認訴訟には出訴期間の準用がありませんから、15条もまた準用する必要がないってわけです。

 

第30条(裁量処分の取消し)

行政事件訴訟法30条は、裁量処分について、裁量権の踰越・濫用があった場合に限り、裁判所が取り消すことができる旨規定しています。

このことから、裁量処分について無効確認判決を下す余地はないと考えられていたことから、準用しないこととしたそうです(このような説明の仕方には「?」ですが)。

 

第31条(特別の事情による請求の棄却)

重大かつ明白な瑕疵を抱えているのに……事情判決!?ふざけるな!

ということで、準用しないと。

 

もっとも、この点については、元々事情判決の狙いが「原状回復が不可能な場合の措置」を明らかにするというものでした。

この狙いは無効等確認訴訟においても通じるはずで、なぜ準用しないのかと批判があります。

 

第32条1項・第34条(第三者の再審の訴え)

今回は「無効等確認訴訟」です。

この訴訟により下される判決は確認判決で、形成力がありません。

そのため、理論的には第三者効を認める余地がないため、準用しないということになりました。

 

第三者効がないとなると、第三者効のせいで困ってしまう人を救済する制度である「再審」を用意する必要がない。

なので、第三者の再審の訴えについても準用しないということになりました。

 

 

こんなところかな。