おめでとう銀之丞 —— 何のお祝いかと言いますと…? | COCOのおいしい話

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Gin's Retirement Celebration Dinner

 

大統領選ではないんです(笑)。

 

またまた更新が空いてしまいましたが、皆様お元気ですか?

 

 

突然ですが。

 

先週の11月6日をもちまして、夫銀之丞が退職致しました。

 

アメリカには「定年」と言う制度はないのですが、夫はまだ50代…年齢的には日本で言うところの「早期退職」に入るのかしら?

 

あ、特に健康上や、その他の問題があっての退職ではありません。


7月の半ばに、「仕事を辞めたいんだ」と打ち明けられた時は、「えっ、まだ若いのに…?」と戸惑わないではなかったのですが。

 

就職して34年、本人が「もう十分働いた」と思うのなら、辞めどきなのでしょう。

 

退職願いを提出してから3ヶ月と少し。

 

6日の金曜日に最後にオンラインで同僚とお別れのミーティングをして、銀之丞、晴れて自由の身となりました。

 

そんなわけでこの日の夜は、ささやかながらお祝いのディナーを用意しました。

 

 

久しぶりのレストランごっこ(笑)、張り切ってテーブルセッティングをしました。

 

姉のジャスミンが贈ってくれたお花がテーブルを彩ってくれました。

 

 

 

 

「新たな人生への出発」と言う意味を込めて、ナプキンは「帆船」に折りました。

 

 

*Napkin Boat for New Voyage

 

料理が佳境に入ったところで新たにお祝いのお花やお菓子、バルーンが届き、テーブルのセッティングをし直したり、写真を撮ったりで…。

 

 

 

 

ディナーのスタートが予定より1時間近くも遅くなってしまいました。

 

しかもメインは夫に丸投げと言う体たらくでしたが。

 

ともあれ、ととのいました。

 

 

Gin's Retirement Celebration Dinner

 

「今まで長い間お疲れ様でした。ありがとう!」とクリュグで乾杯!

 

メニューには、とにかく夫の好物を揃えようと思いました。

 

前菜はキャビアです。

 

 

Caviar with Blini, Crème Fraiche, Lemon, Chopped Chive and Shallot

 

ブリニとクレームフレーシュ(マイルドなサワークリームの一種)にエシャロットのみじん切りとチャイブ、レモンを添えて。

 

「夫の好物」がこのディナーのテーマの筈ですが…実は食べたかったのは私の方かも(笑)。

 

でも、夫には多めにあげたんですよう!(多分、半サジ分くらい…?)。

 

クリュグを飲みながらの久しぶりのキャビア、夫も堪能したようです。

 

シャンパンがすすんで、私は3口目を食べる頃にはお腹が…いや、胸がいっぱいになって来たのですが、いんや、まだまだ。

 

 

サラダは銀之丞の好物の「カニ」と「リンゴ」と「マンゴー」を使ったものにしました。

 

 

*Snow Crab Salad: Bottom Layer with Celery, Fuji Apple, Watercress and Red Wine Vinaigrette; Middle Layer with Snow Crab & Lime; Top Layer with Envy Apple, Basil, Dill served with Mango & Mayonaise Sauce and Capers & Pink Peppers


セルクル型を使って、一番下にはクレソンとレタス、セロリとリンゴ(フジ)を赤ワインビネガーベースのフレンチドレッシングで和えたものを。

 

その上にほぐしたカニ(Snow Crab、スノークラブ=松葉ガニ)とライムの果肉を混ぜたものを乗せて。

 

更にその上には、細切りにして白ワインをふりかけてさっと煮たリンゴ(Envy、エンヴィー)とバジルの葉をホンの少々混ぜて盛り、トッピングにディルの葉とバジルの花をあしらいました。

 

この「エンヴィー」と言うリンゴは、甘みと酸味のバランスが良く、シャッキリした歯ごたえもあって夫の大好物なのですが…煮ても煮ても、煮崩れないのです。

 

一度、そうとは知らずにこのリンゴでアップルソースを作ろうとして、最後は力尽くで押し潰さなくてはならず苦労したのですが、しんなり柔らかくしたい、でも歯ごたえは残したい、と言うこのサラダにはぴったりでした。

 

そして、少し前にやっていた日本の某ドラマ(美食家の探偵サンが主人公^^)で見て以来、一度やってみたかったのが、この2色のソースのハート盛り(?)。

 

 

 

 

黄色い方は裏ごししたマンゴーを軽く煮詰めたものにオリーブオイルと塩少々を混ぜたソース、白い方はマヨネーズにマスタードとレモン汁、生クリーム少々を加えたソースです。

 

この2種類をそれぞれ絞り出し用のビニール袋に入れて(口金は不使用)交互に絞り、竹串で真ん中に一本線を引くようにしてハートの形に。

 

アクセントにピンクペッパーとケイパーを飾り、サラダと混ぜながら食べました。

 

頭の中で味を想像しながら作った、ぶっつけ本番のオリジナルサラダなのでドキドキでしたが。

 

夫は「このサラダはマスターピースだね。名店で出てくる料理だよ」と言ってくれました。

 

 

さて、そしてメインは。

 

 

*Porterhouse Steak with Grilled Broccoli, Cauliflower, Golden Beet, Japanese Mountain Potato & Zucchini

 

もうこのブログに何度も登場している(→「お家で外食風?——」ポーターハウス・ステーキとオイスター・ロックフェラー」)、スネークリバーファームからお取り寄せ、アメリカン和牛のドライエイジド(乾燥熟成)ポーターハウス・ステーキです。

 

調理はこの日の主役のはずの夫に頼ってしまいましたが…やはり夫は焼き方のプロ!

 

ちょうど良いレア加減に、美味しく焼いてくれました。

 

その分、私は彼の好きなベアルネーズソース作りに手間と時間を割きました。

 

 

Béarnaise Sauce

 

ソースの写真を撮るのを忘れてしまったので、写っているものを拡大しました。

 

この「ベアルネーズソース」は「フランス料理の伝統的なステーキソース」だそうで(Wikipediaより)、こちらのステーキレストランのメニューでも必ず見かけます。

 

銀之丞は必ずオーダーするのです。

 

これを、オンラインで見つけた「Classic Bearnaise Sauce」と言うレシピを参考に作って見ました。

 

白ワインとホワイトワインビネガーとエシャロット、タラゴン(生のものはなかったので乾燥)を鍋に入れ、1/3量になるまで煮詰め、ここに卵黄を加え、湯せんにかけます。

 

泡立て器で混ぜてとろみがついたら、ここに溶かしバターを極少量ずつ加え、塩とカイエンペッパー少々で味をつけて出来上がり。

 

…と、書くと簡単なようですが、何しろ初めて作るものだし、「バターが分離しないように気をつける」と注意書きがあったりして、ちょっとオッカナビックリ、及び腰でのトライでした。

 

何とか出来上がり、夫は「ベアルネーズソースまで手作り?!」と感激してくれましたが、肝心のお味の方は…。

 

実は私はタラゴンの風味(ちょっと石鹸を思わせるような…)があまり得意ではなくて、「あまりキツ過ぎても…」と思い、レシピより大分控えめに使ったんです。

 

ソースをそのまま舐めれば、リッチなバターと卵の風味の奥に微かにタラゴンの香りが残って美味しかったのですが、芳ばしく焼けた牛肉に合わせるには少し弱かったようです(反省!!)。

 

 

ステーキに合わせた赤ワインは、去年、ナパバレーを旅した時に試飲して感激した、Cakebread Cellarsのカベルネ・ソーヴィニョンでした。

 

 

 

 

デザートは昼のうちにこれも夫の好物のピーカンパイを焼いておきました。

 

 

*Pecan Pie

 

実は自分でピーカンパイを焼くのは初めてで…以前、夫を手伝ったことはありましたが。

 

彼が持っていた本のレシピで作ったのですが、ちょっと温度が高かったのでしょうか、表面は丁度良い焼き加減だったのですが(写真だと色濃く見えますが、黒焦げな訳ではありません)、中は柔らかめ…。

 

 

*Pecan Pie a la Mode

 

フィリングは卵とコーンシロップとお砂糖とピーカンナッツ、香りづけにバニラとバーボンを少々。

 

流石に銀之丞も満腹だと言うことで、小さめに切って、市販のバニラアイスクリームと一緒にサーブしました。

 

私にはちょっと甘過ぎましたが、カリッと焼けたナッツとさくさくのパイ皮が美味しかったです。

 

 

テーブルでは、夫が仕事を始めた頃のエピソードや、サンフランシスコで結婚したばかりの頃の思い出が話題に上りました。

 

夫が今の職場に臨時雇いの文書整理係として入ったのは25歳の時で、当時のお給料は月952ドルだったこと。

 

結婚した当時は共働きでしたが家賃が高く、年に一度の春の昇給に喜んでも、同じ金額だけ必ず家賃も上がるので、毎年ガッカリさせられたこと。

 

サンフランシスコから近郊のオークランドに移動になった時は、行きたくない、と言って泣いていたこと。

 

欲しい物があっても値段と折り合いが付かず、私がため息まじりに「買えないわねぇ」と言うと、銀之丞がいつも。

 

「Someday!(いつか買えるよ!)」

 

と、ごまかしでもやけっぱちでもない笑顔で言うので、こちらも明るい気持ちになったこと…等も、思い出しました。

 

 

私の小学生の頃からの愛読書に、シャンソン歌手でエッセイストの石井好子著の「東京の空の下オムレツのにおいは流れる」があります(当時は雑誌「暮しの手帖」に連載中でした)。

 

この本の中の「メグレ警視とシャンソンと」の章で紹介されている一節を、結婚してから折にふれ思い出し、読み返すことがありました。

 

「あまり知られてはいないが、私の好きなシャンソンに”Le Temps Des Cacahuètes”(カカウェットの頃)というのがある。カカウェットというのはピーナッツのことである。

 

  二人が若かった頃 貧しくて

  おいしいご馳走はたべられなかった

  二人でピーナッツを分けあって食べるとき

  「今に見ていて 何でも買って上げられるようになるから」

  とあなたはいった

  そう そうしてあなたは偉くなった

  今は何でも買えるようになった

  でもあなたは 家にいないときのほうが多くなってしまった

  大きなテーブルに一人で 私は坐っている

  そして ピーナッツをわけあった頃のことを思って つい泣いてしまう」

 

 

夫の仕事が忙しくなっても、私は幸い、この歌の女性の様に一人テーブルに残されることはありませんでした。

 

いつも一緒に食卓を囲んで来れたことに改めて感謝しています。

 

夫は夜中に仕事の電話で起こされたり、週末も電話を受けなければならなかったりと忙しくなるにつれ、やはり以前のように笑うことは少なくなり、苛立つことが増えたような気がして、少し心配していました。

 

でも退職を決めてからは、また以前の彼の雰囲気が戻って来ました。

 

 

夫は去年から在宅勤務に切り替えていたので、彼が家にいること自体に違和感はありません。

 

でも、「仕事をする夫を支える妻」だった私の役割は、微妙に…というか、案外大きく、変わって行くような予感もしています。

 

思ったよりずっと早くやって来た人生の転換期。

 

コロナじゃなければ、まず世界一周クルーズに出かけるところなのですが(ウソです)。

 

まずは、日本の温泉でまったり…したかったのですが、今はそれも叶わないので、アメリカ国内のドライブ旅行を計画中です。

 

とりあえず、あちこちを元気で回るための体力作り、が目下の目標でしょうか。

 

…目標からして、もう枯れてる気がしますが…。

 

 

まだまだ自粛生活が続きますが、大統領選もどうやら決着がついたようですし、明るい未来のためにもう一踏ん張り!

 

皆様も、どうぞお元気でお過ごし下さい。

 

では、また。

 

きっと近いうちに。

 

 

 

 

 

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