フェラーリF355ベルリネッタです。
当初は操作スイッチパネル脱落修理と、
オイル交換などの点検整備での入庫予定でしたが、
フリークに乗って来られている途中に、エアコンの風が出なくなったというトラブルが発生。
順番に診て行きます。
約20年の時を経ても色褪せない色気。
シフトレバー右横にある操作スイッチパネルが陥落していて、
スイッチ操作が出来ない状態になっていました。
シフトゲートを取り外して、コンソール周辺を分解していきます。
センターコンソールのフェイスパネルです。
スイッチボックスの固定ボルトが止まる土台が割れていて、
4ヶ所止まっているはずなのに、2箇所しか止まっていません。
こちらがスイッチボックス。
スイッチはそれぞれ単体で取り外し&交換が可能です。
まずは無くなっているミニマムボルトを新しくします。
多種多様なミニマムボルトを集めて置いているのですが・・・(笑)
久しぶりに日の目を見る事に!!
しかし、ボルトがあった所で、
土台が割れていてまともな固定が出来ませんし、
どうにか残っていた2箇所のボルトも、土台が割れ掛かっていて
いつ抜け落ちてもおかしくない状態。
この接着剤を使います。
このセットで、1万円位します(^^;
接着剤に1万円って・・・って感じですが、信頼性が違います。
硬化後はプラスチック部品の一部として、
削ったり加工したりも可能という、
接着力に非常に優れたシアノアクレート接着剤です。
もっと深く知りたい方は、こちらもどうぞ → シアノアクレート
専用プライマーで接着前処理をして、このボンドで接着、
ファイナルロックで仕上げです。
接着剤にてしっかり固定した後、
ボルトにてしっかり固定させます。
組み付け完了!
ボタンもしっかり使える様になりました。
続いて、エアコンの風が出ないという症状。
ブロアモーターに向かうヒューズは、ヒューズボックスごと溶解しています。
取り外そうと摘み上げると、パリパリと壊れて行きました。
配線をカットして、30A対応のヒューズボックスに差し替え。
ブロアモーターは回り出し、涼しい風が出て来ました。
接触抵抗が原因である事を願っていましたが、
残念ながら・・・
エンジン始動。そしてエアコンをオン!!
ヒューズ部の温度を、非接触式温度計で計測します。
80℃超え(-_-;)
配線行き帰りの接続部温度も計測。
どちらも60℃程。
ブロアモーター、ステージ4。
写真はピーク時ですが、36~39Aが流れています。
エアコン始動直後はさらに温度が上がります。
落ち着いてくると80℃前後をうろうろ。
「フェラーリが燃えた」はよく聞くけど、
「ポルシェやベンツが燃えた」はあまり聞かないのがこれです。
間違った対策を取る整備工場さんでは、
30Aが飛ぶから少し余裕をもって高めのアンペアヒューズを入れるという・・・
ただ、原因を究明していく中でそれが必要な場合もありますが、
その様な処置で最悪燃えてしまう繊細な配線&被覆がフェラーリには使われています。
対策としては、
当時の古い配線を新しいものに引き直す(信頼のおけるの物)など、
他にもまだやれる事はありますが、
現状で、アイドリング放置1時間半でも大丈夫である事や、
走れ走行風などで多少は冷却される事、
ブロアモーターを取り外すに至るまでの経緯で、
割れたり破損したりする可能性の高い部品が数点ある事から、
今回は現状で様子を見る事になりました。
電流の計測を続けて行きます。
ステージ3 で31Aちょっと。
ステージ2 で、27A。
やっと30Aを切りました。
ステージ1 で、25Aちょっと。
エアコンを使う時は、
出来るだけ風量1か2で使用して頂くのが良さそうです。
続いて、各所点検とオイル交換です。
まずはエンジンを始動してしっかりと暖気。
現在のオイル量を測ります。
ゲージの先端にも付いて来ません。
フェラーリのオイル消費は普通の事で、
1,000km走行で1リットルの消費がフェラーリエンジンの平均値です。
MINとMAXの間は2リットルと言われていますので、
最低でも2,000km走行ごとに、出来れば1,000km走行ごとにオイル量の点検をしてあげるのが望ましいですね。
アンダーカバーを取り外します。
オイルの排出口は2箇所。
まずはオイルパンから。
続いてオイルタンク。
それぞれのガスケットを新調します。
オイルタンクにエンジンオイルを充填。
ドライサンプの為、エンジンをかけてしっかり暖気してから、
エンジンをかけたまま量を計測、そして調整していきます。
ちょっと見えにくいですが、オイル量調整、ばっちりです!!
リフトで上げたついでに下回りを各所点検しました。
酷いオイル漏れも無く、冷却水漏れも無し。
排気漏れをよく起こすエキマニも問題無く、
前後ブレーキもしっかりありました!
それにして、フェラーリのエキゾーストノートは素晴らしいですね。
F355から特に官能的な音になっていますが、
これ以降のモデルでは、この音色を出す為の工夫が施されるという、その分岐点になった程の音色を持ったモデルです。
20年経っても色褪せない、羨望を集める車ですね。
今回の修理と点検では、
上記内容も含め以下の作業を行っております。
・操作スイッチパネル修理
・ブロアモーターヒューズホルダー交換
・一部配線加工
・ヒューズ(30A)
・エンジンオイル(ASH PSE 15W-50)交換
・各所点検
今回の修理ご請求額は、 ¥ 69,800- となっております。
ご用命、ありがとうございました<(_ _)>
<参考データ:車両走行距離 49,300km>
※同じ内容の故障事例でも、作業内容や手順、個体差や経年劣化、部品価格の変動等により必ずしも同一価格・同一修理とはなりません。上記価格や修理内容を他の整備工場さんに強要する様な行為はご遠慮下さい。
ブログランキングに登録しています。
クリックして頂けるとランキングが上がりますので、お願い致します(^^)
★愛媛新聞社の「マイベストプロ」に掲載されました