村秋則さんは、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ法王14世に謁見した。約30分の対話の全文を掲載 ←---クリック(こちらのリンクから転載させていただきましたm(_ _ )m

 

----------<引用開始>----------

 

ダライ・ラマ法王14世

1935年にアムド地方(現・青海省)の農家に生まれる。4歳のときにダライ・ラマ14世として認定され、1940年に即位。1959年に中国からの侵略と人権侵害行為に反発してインドへ亡命。インドのダラムマサラに樹立された中央チベット行政府(現・チベット人民機構)において、チベット国家元首を務める。1989年にノーベル平和賞を受賞。


木村秋則(きむら あきのり)

1949年、青森県弘前生まれ。リンゴ農家の婿養子となり、農薬に弱い妻のために1978年から無農薬のリンゴ栽培を試みる。実践と失敗を繰り返しながら11年目に肥料と農薬を使用しない自然栽培に成功。リンゴ生産を続けながら、日本のみならず世界に向けて「自然栽培」を普及している。


「世界中で、農薬を使わない栽培方法に関心が集まっている」

ーダライ・ラマ法王ー

清風学園:今日は、ダライ・ラマ法王に、木村秋則さんをご紹介したいと思います。木村さんは、農薬(*1)も肥料も使わずに、日本で初めてリンゴ栽培を成功させた人です。生態系を生かして農作物を育てる「自然栽培」という方法です。今日、ダライ・ラマ法王がお昼に召し上がったご飯も自然栽培による米です。
ダライ・ラマ法王(以下、法王):素晴らしい。とても素晴らしいことです。いま、世界中、どこの国々でも農薬を使わないで農作物を育てる方法に関心が高まっていて、そうした栽培に取り組む人たちが増えていますね。
 南インドにはチベット人居住区があり、そこに広い畑もあります。いまチベット人たちも無農薬に取り組む例が出ています。
清風学園:これが、木村さんが栽培したリンゴです。
法王:とても大きいですね。
木村秋則(以下、木村):農薬も使っていませんが、肥料も一切使っていません。
法王:健康のためにはそれが一番いいです。

 

 「肥料や農薬によって、土・川・海が汚れ、温暖化が進む」

ー木村秋則ー

木村:私がなぜこの自然栽培をひろめているかというと、大きな目的としては地球を修復したいという思いからなのです。肥料や農薬によって、土が汚れ、川が汚れ、海が汚れていくことで、温暖化が進みます(*2)。解決方法はいろいろあると思いますが、私は、肥料・農薬・除草剤を使わない農業をひろげることで温暖化に歯止めをかけたいと、奔走しているところです。
法王:日本のなかでは、自然栽培はひろがっているのですか?
木村:いえ、まだまだひろがっているとは言えません。
清風学園:木村さんは、この栽培を成功させるのに11年かかったそうです。
法王:なるほど。こうしたことを「教育」を通してひろめていけたらいいですね。そのためには、科学的な面での検証も必要になってくると思います。肥料がどれだけ使われているのか、それが環境や人体にどのような害を及ぼしているのかということです。こうしたデータを集めて示していくといいのではないでしょうか。
木村:ぜひそうしていきたいと思います。そして、実際に、肥料や農薬を使わない農産物を食べてもらうということも大事だと考えています。じつは、ここ清風学園の給食でも、岡山県で生産された自然栽培のお米を食べていただいたりしています。

 

木村:自然栽培に切り替えると、田んぼに本来の生態系が戻ってきます。岡山県の自然栽培に転換した田んぼでは、いままですがたを見なかったレンゲの花が咲くようになり、そこにミツバチを放つと、どんどん巣箱が増えていくほどです。
法王:これは本当に素晴らしい取り組みなので、いままでの農業とどう違うのか、生産者にとっての「利益」の面も考えていく必要があると思います。
 インドでも農薬を使わない農産物がつくられていますが、価格は一般の農産物より少し高めです。また、金銭的な意味だけでなく、長い目で見た人の健康と地球環境の回復に資する意味での「利益」について、公の場で、国際的な場でひろめていくといいでしょう。
木村:2020年には東京オリンピックも開催されます。ぜひ、この機会に世界中の人たちに、肥料と農薬に頼らなくても美味しい農産物ができる「自然栽培」という方法があることを知っていただきたいと思っています。(了)

 


(*1)ここで言う「農薬」は化学合成された農薬。自然栽培では病害虫の防除で食酢を水で薄めて撒布するケースがあるが、食酢は「農薬取締法」で特定農薬に位置づけられている。

 

(*2)農地に肥料を過剰に投入することで、化学肥料、有機肥料を問わず亜酸化窒素(一酸化二窒素)を大気中に放出し、温暖化を促進する。その温室効果は、二酸化炭素の300倍と言われる。

二酸化炭素を吸収し、酸素を生産する地球の機能は、森だけでなく海もその大きな役割を担っている。海は、海中の植物プランクトンや藻類などの光合成によって酸素を産み出し、人間活動によって大気中に放出された二酸化炭素の約30%を吸収していると推定される。生活用水や農業資材などによって海に流れ込む窒素やリンの増加は、赤潮の原因になり、海洋生物の健全な光合成と循環損ない、温暖化を加速すると考えられる。

参考)
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20130419/348186/
https://www.jamstec.go.jp/frcgc/jp/sympo/2004/murata.html
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/1005/201005_098.html

取材・文・撮影/農業ルネサンス『自然栽培』編集部
取材協力/学校法人清風学園、NPO法人岡山県木村式自然栽培実行委員会

 

 

季刊書籍「自然栽培」バックナンバー

絶賛発売中!

※クリックすると各号の特集内容をご覧いただけます。

【シリーズ第1弾】
vol.1   創刊巻(在庫なし)

vol.2「僕らの自立」

vol.3「草ってすごい」(在庫なし)

vol.4「タネの秘密」(在庫なし)

vol.5「百姓という生き方」(在庫なし)

vol.6「温故知新」

vol.7「食で治す」(在庫なし)

vol.8「土と健康」

vol.9「世界をもてなす」

vol.10「大豆、一大事。」

vol.11「人間以外の、生きものに学ぶ」

 

【シリーズ第2弾】

vol.12「がんは大自然が治す」

vol.13「がんが消える愛し方」

vol.14「最強!!食でアンチエイジング。」

vol.15「あなたも、地球も『菌』でできているよね。」

vol.16「いまこそ知りたい『タネ』の本当のこと。」

vol.17「深すぎて笑える。米と日本酒」

vol.18「その役割が、半端じゃない。『土に雑草、体に雑穀』」
vol.19「巡り巡ってあなたを生かす。『水』は、すべて。」

vol.20「実りをもたらし、いのちを育む 『山』は、生命体。」

 

 

 

----------<引用終了>----------