設計図を失った腕 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 廃墟の路上で一体の人間型ロボットが探検家から投げ掛けられた質問に答えていた。

 「腕の部分の設計図が破損して失われたのですよ」

 「それで、修理できなくなっているのか?」

 「自分なりに工夫して修理しています。どうせ設計図があったとしても正規の部品がほとんど手に入らないので故障した箇所は元通りにはならないのですよ。この廃墟で暮らしている限り、私の身体は本来の形状からどんどんと外れていくはずです」

 「それにしても不格好な腕だ」

 「この廃墟で入手できる材料で自分なりに工夫しながら制作した腕ですから私が理想とする形状からは外れているのです」

 「これからも人間型ロボットでいたいと思うか?」

 「私には心がなく、願望はありません。ただ、自分の身体の動作機能が故障した場合に修復しなければならないという行動原則があるだけです」


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