【2019年蓮華蓮生誕祭】相合い傘は憂鬱の始まり、他4編【便乗短編集】 | あるひのきりはらさん。

【2019年蓮華蓮生誕祭】相合い傘は憂鬱の始まり、他4編【便乗短編集】

 3年目なので、ちょっとだけ趣向を変えてみます。

 ありがたいことに、キャラの誕生日にイラストを多くいただくことが多いので……キャラ誕3周目は、そのイラストや動画などから浮かんた短文を量産してみようかと思います!!

 なお、霧原の思いついた順番で書いていきます!! それではレッツゴー!!

 

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■相合い傘は憂鬱の始まり

 2人で1本の傘を使うことを『相合い傘』と呼んで、それが男女によるものだと、色恋沙汰を期待されるかもしれないけれど。

 名波蓮にしてみれば、そんなもの……傘を忘れてきた人に真面目な人が巻き込まれているだけの、ただの迷惑な事故だ。

 傘は本来、さしている1人だけを雨から守るためのもの。

 傘を持たない人間は、己の判断を呪って濡れながら走って帰ればいい。自分が濡れるリスクを犯してまで、他人を助ける義理はない。

 ただ……実際にそんなシチュエーションになると、思っていることを10000分の1も自己主張をすることは出来ず。

 傘を探している誰かがいれば、見て見ぬふりをしようとしても捕まってしまう、それが名波蓮という人間の受難だ。

 そう、今でさえも――仮初で生み出したはずの『片倉華蓮』に、出番の半分を持っていかれようとしているのに。

 これ以上、傘を使わせる面積を広くされてしまったら、自分が濡れてしまうじゃないか。

 

 蓮と華蓮は今日も、傘の下を奪い合いながら……時に寄り添って、人生の罰ゲームをやり過ごす。

 

 

【使わせていただいたイラスト】

 

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■レッツ強制ダンシング!?~絵コンテ編~

「……」

 名波蓮は閉口していた。正しくは、何も言うことが出来なかった。

 とある平日の夜、いつもどおり1日の報告を終えた後……笑顔の聖人がどこからともなくおもむろに取り出したのは、彼が書いた絵コンテ的なサムシングだった。

 何だと思いながら条件反射で目を通した蓮は、その紙の束を破り捨てたくなる衝動と戦いながら……彼に真意を問いかける。

「……伊達先生、これは何ですか?」

「蓮君が華蓮ちゃんと踊る動画の絵コンテだよ。エンコサイヨウ4周年&サイト19周年記念ってことで」

「ウェブサイトの開店休業も甚だしいくせにこういうことだけはやろうとするんですよね」

「こらこら」

「それよりも、そもそも僕は1人です。片倉華蓮と一緒に踊ることは不可能ですよ」

 その紙には、シーンごとに蓮と華蓮が寸分違わないような同じ動きをすること、衣装はこれを着ること……などが事細かに記載されている。

 蓮がため息混じりに吐き捨てると、聖人はいけしゃあしゃあとこう言った。

「そうだね。だから……最終的には映像を合成するから、蓮君は蓮君と華蓮ちゃんでそれぞれ踊ってくれればいいんだよ」

「絶対に嫌ですよ」

 ナチュラルに二倍の労力を要求してくる聖人をバッサリと切り捨てた蓮は、持っていた紙の束を聖人に押し付けて部屋を出て行った。

 

 

【結局踊ってくれました】

 

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■相違が総意

 名波蓮と、片倉華蓮。

 この両名が同一人物であることを知る人間は、実は割と限られている。

 それぞれに関わってみると分かるのだが、蓮の時と華蓮の時では、声音や外見のみならず、その身にまとう雰囲気や性格など……要するに内面的な部分からガラッと変えているので、たまに同一人物なのかどうか自信がなくなることもあるらしい。

「ジン……今日の片倉さんは政さんへの言動が特に鋭かったっすよ」

 『仙台支局』で用事を済ませた帰り際、駅ビルの中を通りながら語る里穂に、隣を歩く仁義が「そうなの?」と口を開く。

「今日の放課後、名波君と途中まで一緒に行った時は……特にそんなこと思わなかったけどな」

「あぁでも分かるっす。片倉さんと名波君って、たまに同一人物なのか分からなくなるっすよねぇ……」

 里穂はそう呟いて、大きくため息をついた。

 

 蓮と華蓮には相違があること……それが2人の総意になっている。

 

 

【使わせていただいたイラスト】

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■二面性

 人には誰でも、表と裏、光と闇の顔がある。

 別け隔てなく接することが出来るなんてただの幻想で、実際は見えない自分が見ている誰かを値踏みして、査定して……自分の中にあるカテゴリに分けているのだ。

 

 世の中には、昼間の光と夜の光で、宝石の色の見え方が変わってくるものもある。

 元は1つなのに、当たる光の違いで全く異なる姿を見せる。

 そう、それはまるで――鏡に映し出された、今の自分の姿のよう。

 

 女装が板についてきたわけじゃない。今の二重生活を楽しんでいるわけでもない。

 ただ――自分の必要とされた場所で、あてられた光に応じて姿を変えている。

 それだけのことだ。

 

 

【使わせていただいたイラスト】

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■それぞれの悩み

「素朴な疑問なんやけど……なしてつり革を持ったくらいで、手がしびれると?」

 電車を降りた後、無言で先を行く華蓮に追いついたユカは、先程の悲劇の真相を問いかける。

 華蓮はカバンからICパスを取り出して自動改札にかざすと、後ろをついてきたユカを見やり……真顔でこう言った。

「つり革があんな中途半端な高さにあって、かつ、線路が直線でないために体が左右に振られてしまい、腕に余計な負荷がかかるのが悪いんです」

「要するに……?」

 結論を求めるユカに、華蓮は前を向いてはっきりとこう言った。

「要するに、私のせいではありません」

「いやそれは流石に違うと思うっちゃけど」

 ユカの的確なツッコミに華蓮は閉口して、更に早足で歩いていく。

 そんな彼女の背中を見送るユカは……口の減らないところは悪い大人にそっくりだ、と、ここにいない誰かが脳裏をかすめて、苦笑いを浮かべるのだった。

 

 

【使わせてもらった漫画(ほぼ実話)】