『トリフィド時代』(原題:THE DAY OF THE TRIFFIDS)
ジョン・ウィンダム(訳:中村 融)
〈創元SF文庫 610-04〉
主人公で植物学者のウィリアム・メイスンは、トリフィドに襲われ視力を失いそうになったが、手際の良い応急処置と適切な治療によって幸運にも失明は免れた。
“トリフィド”とは、食用の油を穫るために品種改良された有毒な植物だ。
トリフィドは密かに開発され秘密裏に売買されていたのだが、いつの間にか勝手に自生して繁殖してしまった。
しかし、このトリフィドには問題があって、発芽して何年かすると自分で根っ子を引き抜いて歩き出し、しかも頭部にある3メートルの蔓には沢山の毒の小袋が付いている。
その毒は、下手をすると人は死んでしまうし、ちょっと当っただけでも失明をしたりするのだ。
運悪くトリフィドに襲われたが、失明は免れたウィリアムだったが、包帯がとれる前夜、地球は緑色の大流星群の中を通過した。
世界中の人々は、夜空を緑に染める天体ショーを観たのだが、翌朝流星を観た人は全員視力を失ってしまった。
理由は分からない。
植物油を穫るために栽培されていたり、ペットとして飼われていたりしたトリフィドは毒の蔓を使いあ、失明した人間を殺して次々と食べて始めたのだった。
目の手術で流星の緑の光を観なかったウィイリアムと、たまたま緑の光を観ずに視力を失わなかった少数の人達が、生き残りをかけて新天地を目指す物語。
★☆★ ネタバレ・感想! ★☆★
面白かった!
今で言えばゾンビ物のSFストーリーだが、ちょっと違う。
そのちょっと違うところがとても良かった。
と言うか、ゾンビよりずっと面白い!!
なんといっても、この小説が書かれたのが1951年。
私が生まれる十数年前に書かれたものだと思うと、その点に関しても驚きと言うより感動を覚えるようなお話しだった。
明言はしていないが、緑色の流星群の原因は、宇宙に打ち上げられた戦略人工衛星の被破壊物とその落下物で、失明の原因はその放射能による・・・と言うような話のようだ。
今の映画や小説の雛形になってるようなストーリーだ。
この手のパニック物に付きものの、子供や女性への苛めや奴隷化の話も出てくるが、今のハリウッド的なネチネチした展開や、目的を達する為に嘘を吐いて味方を裏切ると言うような話がないので、嫌な気持ちにならずに最後まで読めた。
最後も、絶望的な状況にはなってしまったが、希望と選択肢が残された終わりになっていていいと思った。
最近の映画や小説で、何か極端な結末にして“問題提起”みたいな感じになるのが、だんだん鬱陶しくなってきていたから、本書のような結末はとてもいい感じだと思った。
グレート・ブリテン・ハードだ!!!!!
有名な作家らしいのに、ぜんぜん知らなかった!
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