バイオリン奏者としてオーケストラのオーディションを受ける事を考えている方へ

という、

あまり需要のない解説です。

 

なぜオーディションをしてもしてもなかなか決まらないのか。

あの上手な人受けてくれてたと思うんだけど

(ブラインド審査の為受験生は全く見えない)

どうして残ってこなかったのかな、と。

それはもしかして受験生がオーディションで

「何を聴かれているか」を知らないからなのでは?

と、思い、

オーディションで我々は何を聴いているのか

という事について話してみよう思います。

因みに私が受験した時に徹底して心掛けた事は

審査員の気持ちを色々と考えた結果

「誰からも嫌われない演奏をする事」でした。

自由にソロや室内楽を弾く時と違って、

試験のニーズに対する演奏、という事です。

今となっては少し考え方が違ったな、

と思いますが、結果オーライです(^^;

 

※私はバイオリンTutti奏者ですので

 Tutti目線の評価基準となる旨ご理解下さい。

重要視する部分は人それぞれですが、

聴いている部分は大体同じです。

 

オーディションについて以前書いた解説は

コチラ

 

オーディションで聴いているのは勿論、

上手かどうかです。ただ、、、

コンクールで1位になった腕の持ち主でも

芸大を首席で卒業した人でも

受かるとは限らないのがオーディション。

単純に上手かどうかは基準の中の1つです。

 

次に、苦手な事が無いかどうかです。

これはオケスタで徹底的に聴いています。

例えば凄く上手だけど飛ばし弓は苦手とか、

上手なんだけどin tempoで弾けないとか、

そういった部分にも注目しています。

 

最も重要な審査基準は、

この人と一緒に働きたいと思う演奏かどうか、

オーケストラ奏者に向いていると思うかどうか。

※この解説では"Tutti奏者の場合"

普段オーケストラの中で弾いていて

「こういう弾き方の人、正直迷惑なんだよね」

という基準がオケマン皆夫々にあるわけで、

ダメなパターンがハッキリしているんですね。

 

Tuttiにオリジナリティ、求めていません。

・とにかくきっちり楽譜通り弾ける事。

・譜面上のルールを遵守する性格である事。

・何を求められているのか理解している事。

自由に弾く人は確かに一部の票は集めますが

人数で多数票となる弦楽器Tuttiの気持ちは

「この人とはちょっと一緒に弾けないな・・」です。

誤解の無いように申し上げておきますが、

一緒に弾きたいかどうかは室内楽とかではなく

あくまでオケTuttiとしての審査基準であり、

また、表現力を消して欲しいわけでもなく

まず楽譜通り弾けるかを聴いてるのよ!

という心の内があります。

※表現力を聴きたい曲がオケスタに1曲程度

 挿し込まれている事もあります。

 

さてその上手なのに基準に合わない人達。

本人は楽譜通り弾いているつもりなんだけれど

では一体どこが間違っているというのか。

オケスタのレッスンをしていて

「楽譜通り弾いてくれる?」と言うと

「え、どこか間違ってましたか?」と言う、

正確な音程だけが目標の人に知って欲しい。

試験で音程は合っていて当たり前です。

ここからは受験生によくありがちな、

無意識に弾いている部分を書いていきます。

 

・弓の使い方が適当で、音が中膨らみする。

 譜面上では「ターーー」と書いてある単純な音を

 弓の使い方が荒いせいで「ゥワアーァ」となる、

 なんとなく弾いている人にとても多いです。

 自分の演奏を録音して聴くと良いですね。

 

・テンポが揺れる。

 協奏曲でもオーケストラスタディでも、

 特にモーツアルトでありがちです。

 

・付点のリズム”ターンタ””ターータ”が甘く、

 ”タンタ””タータ”といい加減になる人。

 オケスタでは、これを判定する為に、

 付点のリズムが多く出てくる簡単な曲が1曲は出題されがちですが、

 曲が簡単な為に練習してこない人も。

 これはどのオケスタにも共通する事ですが

 「何故この(簡単な)曲が出題されたか」

 の想像力があると良いかなと思います。

 

・付点のリズムと同じように、

 音価を大事にせず、音符の長さが適当な人。

 8分音符と8分休符での1拍、この8分音符の長さと

 4分音符の長さの1拍、この4分音符の長さ、

 これを弾き分ける事なく同じ長さで弾く人、

 多いですね。作曲家が気の毒になります。

 

・spiccato指示に、ベタ弾き。

 跳ね弓が苦手だと思われます。

 出来る事はしないと出来ないと思われます。

 

・速く弾けるかどうか出している課題に対し

 ゆっくりテンポで弾く人。

 速く弾けないんだなと判断されがちです。

 

・アクセント付いているのを無視、

 逆に付いていない音に無意識に付くなど、

 細かな指示を守らない、

 また無意識な音がそこかしこに見られる。

 細かい部分は合奏で必ず注意されるので

 楽譜の情報をよく見て弾いて下さい。

 

・例えば、pは小さい音でという指示ですよ?

 fとffは音量が違うんですよ?

 というダイナミクスの無視も少なくありません。

 

・ターヤッパッパッという形のリズムを

 エンヤートットッと弾く。

 右手の技術を磨いて頂くか、

 弾ける腕を持っているなら意識を高く。

 

・タンタタというリズムがタァタタとなる。

 これも同じく右手に技術がないと思われるか

 細かいところを大事にしないと思われがち。

 

・フレーズの終わりの音が「バーン」と、

 謎の決めが入る人、意外と多いです。

 フレーズ感がない、もしくは意識が低いと思われます。

 

ザッとこんな感じでしょうか。

弦楽器は幼い頃から弾いている人が多い分、

なんとなく楽譜を見ている人も多いです。

管楽器は殆どの人が楽譜に正確ですね。

打楽器の人は最も楽譜に忠実且つ柔軟。

だからこそ、弦楽器だけではなく

管打楽器からの票を集める為にも、

楽譜通りとにかく正確に弾く事は重要なのです。

 

同僚たちを見ていると、

皆楽譜をよく見る事を心掛けている上に、

やはりきっちり弾けるほど表現力への余裕も感じられます。

そういった学習を持って、

何十年一緒に働くことになる同僚を

真剣に聴いて選んでいるのです、

頑張れ、と手に汗握りながら。

→オーディションは最も疲れる業務です。

 


人気ブログランキング