我が家には、PIONEERの1994年製レーザーディスクのコンパチプレイヤーあります。
CLD-HF9G という機種ですが、
この機種特有の不具合(持病ともいう)があることが有名で、私の個体もついにその症状が起きてしまいました。
エラーコードは "P5" です。
これは本体のディスプレイ部分に表示されます。
読み込みができないことを意味しているようです。
何が起きているかというと、
まず正常な動作は以下のとおり。
1. プレイヤーにレーザーディスク(LD)をセット。
2. 再生ボタンを押す
3. ディスクがモーターのスピンドル(軸)に取り付けられたターンテーブル部と、上部にあるクランパで挟みこむという形で、ディスクをモーターに固定
4. そして高速回転を始め、読み込みがスタートするわけです。
読み込みエラーとなると、普通はレンズが汚れているのではとかそういったことを連想されると思いますが、
この機種の場合、他に有名な症状があり、
今回の場合、明らかに異音がするのです。
それは、ディスクの回転始めにディスクが滑っているのです。
再生ボタンを押すと
「ガゴッ!シュルシュルシュル~」と何か擦れている音がし、"P5"と表示されます。
そして、ディスクを取り出すと、ラベル部分が擦れて傷つくという、なんとも悲しいエラーなのです。
慣性の法則で、静止している直径30センチの巨大なディスク(アナログレコードと同サイズだがそれより重い)をいきなり高いトルクのモーターで高速回転させようとすれば、固定する力が重要となります。
クランパ部分のバネの力によって固定するわけですが、バネが経年劣化で弱くなるのか、スピンドルのターンテーブル部のゴム部分が劣化するためか、機種によって滑る原因は違うかもしれません。
この原理から、重たいLDよりはるかに軽量なCDは再生可能でした。
レンズの問題ではないことがこれで分かります。
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さて、どう対処しようか。
まずは開けてみないことには分かりません。
なかなか重量のあるサイドパネルを外し、ボンネットカバーを取り外した状態が以下の写真です。
厚みのあるアルミ製サイドパネル、銅めっき、製造にもおカネがかけられていることが分かる機種です。
問題の回転部分は以下の箇所。
モーター上部に取り付けられたクランパを外します。ネジまで銅めっきです。
取り外しました。
さあ、裏返して問題の滑ってる部分はというと、以下の写真。
特に摩耗があるとかそういったことは見受けられません。
クランパとは、この円形の部分をいいます。
クランパ部分をもっと寄って見てみましょう。
パッと見では、どこがどう滑って擦れたのか分からないと思いますが、
白い部分の外側に黒いプラスチック製の部分がありますが、
ここがディスクに当たる面です。
これだけしかディスクとの接触面がないとなると、滑りやすいなと理解できます。
外側の金属の部分は回転を安定させる重りのような意味があるのでしょうか、
直接ディスクには接しません。
さて、
クランパと逆側、すなわちモーター側を見てみる。
もうちょっと寄って見る。
ん!
表面のゴムのコーティングがない!?
一部ほんとに一部だけ残っているのがわかりますが、摩擦係数を増すための凹凸は残っていてこれだけで滑るかな~?という感じ。
この機種固有の症状ということで、他のメーカー含めてモーターのスピンドルまわりの構造や素材はどういうものになっているのか、いろいろ画像を検索してみた。
(便利な時代だ 笑)
結果、むしろツルツルしてるものや、プラスチック製のものまであった。
やはりクランパ側に問題があるのではないか。
押さえつける力が弱いからそうなるのだと思い、
クランパの、ディスクと接する部分に何か滑り止めになるものが欲しいなと思いました。
極薄なゴムシートなんて一瞬よぎりましたが、劣化したらディスクに貼りついたりしそうだなと思い、
私は薄いフェルトを選びました。
フェルトは適度に滑り止め効果もあり、滑ったとしてもガリガリと削れたりはしないからです。
フェルトを同じサイズにカットして両面テープで貼りつけたら完璧じゃないか!
と、フェルトなら以前近所のDAISOで買ったことがあったので行ってみると、
都合のいいことに、ちょうどいいものがありました。
なんと、好きな形に切って使えるシールタイプのフェルトです。
しかも、サイズもちょうどいい!
厚さも1mmあるかないかくらいなので、まさに!といった感じ。
カラフルなのがアレだが、白や黒やグレーもあるし、これだと思いました。
これを下側(モータースピンドルのターンテーブル側)に貼りつけてしまうとレンズとディスクの距離が変わってしまうので、やめておく。
同時に欲しいと思ったのが、円カッター。
確か前に見たことあったぞ!
と100均好きな私は思ったわけです。
...ありました!
DAISO完璧!
あとは作業するだけ!
さて、帰宅。
シールフェルトを円形にカットするわけだが、サイズが分からない。
サイズが、ネット上どこにも転がっていないので、ノギスを使って採寸。
同じ症状でお困りの方のために、
手書きメモを図面にしました。
(製図はあまり経験ないですが、一応ルールにのっとってはいるつもりですが、CADソフトを持っていなく、エクセル2003で描いたので、一点鎖線が破線に見えちゃいそうですがよく見ると一点鎖線です・・・汗)
単位はミリメートルです。
私の処置の場合、クランパ部分だけでいいのですが、やはり同じ症状でお困りの方のためにモータースピンドル側のターンテーブルのサイズも採寸して図面化しました。
さて、
これをもとに、シールフェルトをカットしていきます。
この円カッターのメモリはかなり大ざっぱなので、計測したノギスのゲージでサイズを合わせます。
いざ、カット!
まず最初に外側の円周をカットしてから内側をカットします。
※ 逆の順番でカットすると外側がカットできないので注意です。
カット後は以下の写真。
フェルトという素材は、ハサミでも切りにくい素材なので、ふにゃふにゃして切りにくいのなんのって。(裁縫用のハサミは別として)
失敗したくないので、外周をカットした時点でセロテープでガチガチに固定して内周をカットしました。
なので見苦しい写真ですがお許しを~~。
セロテープの固定をはがします。
クランパと並べるとこんな感じです。
これを剥離紙をはがして、クランパの黒い押さえ部分に貼りつけます。
すると、こうなります。
関係はないですが、この外側の金属部分も同じようにしてカットしたフェルトシール(白)で覆いました。
CDプレイヤーのアクセサリで昔よく見たスタビライザー的な感じで、制震目的です。
それと、万が一何かが起きてディスクと接触した際にレーベル面に傷がつくのを防ぐためです。
これについては写真を撮り忘れてしまいありません。スミマセン。
また開けて撮れよ!って?(笑)
さて、組み付けて終わりですが、
せっかくボンネットカバーを開けたので、本格的なレンズクリーニングを。
「無水エタノール」を綿棒に含ませ、ふきふきです。
不織布とかでもいいと思います。
あくまで、ソフトタッチで・・・やさしくやさしく~
レンズはもともと見た目には綺麗でしたが、拭いてみると少し汚れていたようです。
さぁ!
動作チェックといきましょう!!
ここからは動画です。
-- 検証動画① --
まずは、レーザーディスクの再生
<検証手順>
1. 電源ボタンを押す
2. OPEN/CLOSEボタンを押す
3. トレイにディスクを載せる
4. 再生ボタンを押す(OPEN/CLOSEボタンは省略)
5. 再生が始まり、エラーが出ないか確認
6. B面ボタンを押す
7. αターンメカによりモーターが逆回転を始め、ピックアップレンズ部がB面へ移動することを確認
8. 片面ディスクであることを告げる画面となることを確認
9. STOPボタンを押す
10. 滑らずに止まることを確認
11. OPEN/CLOSEボタンを押す
12. きちんとディスクが排出されることを確認
13. OPEN/CLOSEボタンを押しトレイを戻す
14. 電源ボタンを押し、電源を切る
https://youtu.be/qFS1-_L1d_A
使用したディスクは、"P5" エラーを最初に起こした当のディスク「松任谷由実 コンパートメント」(1984年作)です。定価はなんと、9800円。音声はアナログ音声のみ。
若干の反りがあるためか、余計に回転は不安定になりやすいのかもしれませんね。
中古でタダ同然で入手したもので、カビだらけだったののを丁寧にメンテナンスしたモノです。幸い見た感じでは記録層の腐食もなく、ディスク本体も溶けてもいません。そう、保存状態が悪いとLDは溶けるのです。。。キャー
-- 検証動画② --
CDプレイヤー機能をチェック Part1
<検証手順>
1. 電源ボタンを押す
2. OPEN/CLOSEボタンを押す
3. トレイにCDを載せる
4. 再生ボタンを押す(OPEN/CLOSEボタンは省略)
5. 正常に再生されることを確認
6. STOPボタンを押す
7. 滑らずに止まることを確認
8. OPEN/CLOSEボタンを押す
9. きちんとディスクが排出されることを確認
10. OPEN/CLOSEボタンを押しトレイを戻す
11. 電源ボタンを押し、電源を切る
https://youtu.be/5QFxDLpp7J8
-- 検証動画③ --
CDプレイヤー機能をチェック Part2
CDダイレクトモードでの再生
<検証手順>
1. 電源ボタンを押す
2. 「CD DIRECT」ボタンを押す
3. OPEN/CLOSEボタンを押す
4. CD専用トレイにCDを載せる
5. 再生ボタンを押す(OPEN/CLOSEボタンは省略)
6. 正常に再生されることを確認
7. STOPボタンを押す
8. 滑らずに止まることを確認
9. OPEN/CLOSEボタンを押す
10. きちんとディスクが排出されることを確認
11. OPEN/CLOSEボタンを押しトレイを戻す
12. 電源ボタンを押し、電源を切る
https://youtu.be/adCyovoJAhg
-- オマケ動画① --
「α(アルファ)ターンメカ」のトリッキーな動きにスポット当てて撮りました。
※ パイオニア独自の自動両面再生(オートリバース)機能のことです。
まずは、上から。
https://youtu.be/aWfUF599bzU
プレーヤと同じテーブル上に立てた三脚にカメラを固定して撮影してますが、
ディスクが僅かに反っているのもあり、振動がかなり伝わってますね。。。
-- オマケ動画② --
「α(アルファ)ターンメカ」
横からの撮影です。
https://youtu.be/47zt0F2Coo4
※ リモコンで操作しています。
ハイエンドな片面再生機を愛用されている方には、モーターが逆回転するというのが奇妙だそうです。
その後の機種ではハイスピードな「ε(イプシロン)ターンメカ」搭載のモデルも登場しました。映画再生等ではここのスピードは重要ですね。
最後に
レーザーディスクという映像メディアについて。
映像がVHSより美しく、見た目がCDをデカくしたみたいなレーザーディスクなので勘違いされている方が多いのですが、レーザーディスクの基本仕様はアナログ映像+アナログ音声です。CDが登場してからのものはCDと同等(44.1KHz/16bit)のデジタル音声をプラスで収録したものがほとんどですが、映像はアナログです。デジタルではないのです。デジタルによって圧縮もされていない生のアナログ信号が記録されているので、発展途上だった初期のDVDと比べるとLDのほうが画質がいいなんてことも言われてました。
アナログ映像はDVDでありがちなブロックノイズがないのがいいですね。
映画ソフトでは後期にはAC-3(今でいうドルビーデジタル)収録のものや、ハイビジョンのディスクも販売されました。
アナログ映像ディスクのメディアとしては非接触式のレーザーディスク(レーザービジョン)が主流でしたが、VHDという映像ディスクもかつては存在していました。
VHDはアナログレコードをカートリッジに入れたようなモノで、針で読み込む接触式のディスクです(確か)。
VHSとベータの戦いみたいなものがいつの時代もあるものですね。
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