ShortStory.488 永遠の愛 | 小説のへや(※新世界航海中)

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 1話完結の短編小説を書いています。ぜひご一読ください!
  コメントいただけると嬉しいです。無断転載はご遠慮ください。

 

 私としたことが、久しぶりにこんな話を書いてしまいました。

 これは世の閉塞感に対する反動か何かなのでしょうか…?(←違う)

 

↓以下本文

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 ボクは三途川ユナン。祝福の天使さ――

 

 

 

 

 

 

 ああ。ちょっと落ち着いてよ。お兄さん、お姉さん。

 決して怪しいものではないから安心して。

 ほうら、見て? この綺麗な白い翼。

 こんな風に動かせるんだよ。すごいでしょう。

 それに、この天使の輪。きらきら光って立派でしょう。

 壁だって床だって天井だって、ほら、こんな風に

 すり抜けられるんだ。手品じゃこんな事できないよ。

 

 頬をつねってもダメダメ。夢じゃないよ。

 探してもムダムダ。撮影クルーだってどこにも居やしないよ。

 

 あっ! えいっ!!

 

 ダメだって言ってるでしょう。警察に電話したら、

 大きな騒ぎになっちゃうじゃないか。ああ。お姉さん安心して。

 白目むいて死にかけのゴキブリみたいに痙攣しているけど、

 お兄さんはボクの魔法でそうなっているだけだから。

 

 それにしても面白い顔。泡まで吹いちゃってさ。

 ねえ、もう警察に連絡したり逃げたり騒いだりしないって

 約束してくれる? そうしてくれれば、すぐに魔法を解いてあげる。

 

 本当に? 絶対だよ。じゃあ、それっ!

 

 ほら、元通り。言った通りでしょう? うん、いいよ。

 いったん水飲んで落ち着いてね。……あ、ボクはいいよ。

 下界の水は、下水だから飲むなってパパに言われているから。

 

 改めて、ご結婚おめでとうございます。

 先日はボクたちの教会で式をあげてくれてありがとう。

 今日はボランティアで二人を祝福に来ました。

 玄関の鍵? ああ、平気平気。ボク壁をすり抜けて入って

 きたから、ちゃんと閉まっているよ。確認しに行くって?

 

 ストップ、ストップ。はい。動くな。

 

 そうやって、外の誰かに助けを求めに行くつもりでしょう?

 心? 読んでいないよ。読めるけどね。

 だって、お姉さん。さっきから玄関気にしているじゃない。

 それって、外に行く機会をうかがっているってことでしょう?

 そんなことしたら、今度はお兄さんの目玉をマシュマロに変えちゃうよ?

 そろそろ状況わかるよね。だからいい加減大人しくして。

 心は読めなくても、空気は読めるよね?

 

 そんな顔しないでよ。ボクは二人を祝福しに来たんだから。

 永遠の愛を誓った二人にプレゼントをあげようと思ってね……

 

 じゃあん! 『天使の輪』!

 これを頭に付けて、一緒に天国へ行こうよ!

 

 え、ちょっと……何難しい顔して黙っているのさ。

 ここは 『それじゃあ死んでしまうやろ!』 とか言って、大げさに

 突っ込むところじゃないの? 聞いてなかったの? 寝てたの?

 ちゃんとリアクションしてくれないと、また泡吹かせるよ?

 

 なんてね。冗談、冗談。

 本当のプレゼントはこれ。『未来永劫一緒に銃』!

 腕時計型になっていて、こうして二人の首に打ち込むと、

 その二人は、来世もその次も運命をともにできるって道具なんだ。

 この一生だけじゃなくて、来世もそのまた来世も、

 ずうっと永遠に二人は一緒でいられる。すごいでしょう。

 

 永遠の愛を誓った、お兄さんとお姉さんにこそふさわしいプレゼント。

 

 さあ、そこに並んで。

 今からばっちり撃ちこんであげるよ。

 ほら、早く早く。急げ。

 ボク次の予定もあるからさ……

 

 え、どうしたの? なんで二人とも動かないの?

 心配? 大丈夫。失敗なんてしないよ。確実に未来永劫、

 二人が一緒にいられるようになるんだから。

 ふざけて目に撃ちこんだりもしないし。ほら、ボクだって

 ふざけちゃいけない時がいつかは弁えているから。

 こう見えて、中身は大人だからね。

 

 あれれ~、何か不満なの? だって、永遠の愛を誓ったんだよね。

 病めるときも健やかなるときも、ずっと一緒ですって、

 この前言ってたじゃない。ずっと一緒にいたいんでしょう?

 この道具を使えば、現世だけじゃなくて、来世もその次も

 ずうっと一緒にいられるんだよ?

 

 ……。

 

 あれれ~、なんか気まずい雰囲気にしちゃったかな。ボク。

 そっかそっか、永遠ってそういうことじゃなかったんだね。

 ボクが勘違いしていたかもしれない。そうだよねえ。

 二人の生活もここからってときに、いきなりそんなこと言われても

 困るよねえ。これから何があるかもわからないし。

 まあ、何があっても二人で乗り越えていきますって、パパの前で

 約束していたわけだけど。まあ、人間いろいろあるよねえ。

 

 ……

 

 何か言ってよ~。

 まるでボクが悪いことしたみたいじゃないか。

 そんなことないよね? うん。無言は肯定ととらせてもらうよ。

 

 まあ、元気にやってよ。ほら、笑顔笑顔!

 道具の力に頼りたくなかったってオチだよね、これは。

 二人の愛に、天使の助けなどいらない。

 素晴らしいオチだよ。美しい。よっ、さすが人間!

 

 ……

 

 あれれ~、この空気、何?

 ボク、子どもの天使だからわかんないや~。

 

 ……

 

 じゃあ、ボク、塾あるから帰るね――

 

―――――――――――――――――――――――――――――

<完>

 

※以前つくった小説に、今回の物語とテーマが近いものがありました。

内容は全然違いますね。こっちはふざけていないというか…w 『愛する人』

https://ameblo.jp/1a2c3a4p5p6p7pm/entry-12162771012.html

 

※全然関係ないですが、ちょこちょこ昔の話を読んでみたら、

過去にも奇妙な物語がたくさんありまして…そのひとつがこちら 『太鼓持ちの末路』

https://ameblo.jp/1a2c3a4p5p6p7pm/entry-12158048900.html