井上堯之バンドの時代~井上堯之バンド㉒ | edihの昭和音楽よもやま話

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1975年12月21日 ジュリーのオリジナル・アルバム「いくつかの場面」が発売される。

今回は初めてミッキー吉野、大滝詠一、加藤登紀子などがソングライティングに参加、ミッキー吉野グループ、ティン・パン・アレイ+大瀧&山下達郎や松木秀恒、矢島賢などスタジオ・ワークをこなす面々の演奏陣と趣を変えたアルバムとなった。「時の過ぎゆくままに」のコンペで残念ながら没になった加瀬テイクは「燃えつきた二人」と詞を変え収録されている。

「時の過ぎゆくままに」他5曲が大野のアレンジ、大野作曲の「外は吹雪」など4曲は新生堯之バンドで演奏参加となった。アルバムタイトルの「いくつかの場面」はショーケンに「酒と泪と男と女」を提供した“河島英五”の作品で、ジュリーがデビュー当時歌っていたこの曲を偉く気に入りレコーディングしたという話である。レコーディングの際、感極まって涙声となってしまうのだが、取り直しを望んだジュリーにディレクターも兼ねた大野が「このままでいこう」と涙声のテイクをそのままレコードにしたという話である。ジュリーはアルバム発売前の12月と76年5月に暴行事件を起こし6月から自ら謹慎、年末の賞レース、紅白を辞退する。

6月の事件が報道された当日はなんと盛岡公演で、中止になるかと心配されたがコンサートは通常通りにスタート、冒頭の事件の弁明が長かったが、中盤になってこの「いくつかの場面」を歌い上げた。前後「愛は限りなく」と「絆」の3曲を立て続けに歌った20数分間、場内はいつもの黄色い声援をあげる余裕もないほどステージに引き寄せられたような時間であった。数年見続けたジュリーのライブではこの時が一番、これほど鳥肌の立ったコンサートは後にも先にもない。レコード盤で東海林修のドラマチックなアレンジもまた一つではあるが、ライブでは1コーラスではギター一本で静かに始まっている。個人的に「いくつかの場面」そのライブのことや事件による謹慎等、色々な場面を思い出す歌である。

(音源は盛岡公演ライブより)

 

 

幾つか場面 from edih's Channel on Vimeo.