ブラジルとブラジルのマーケティングあれこれ

ブラジルで日々おこることをマーケッターの目で解説するページ。広告業界の情報も。筆者はブラジル在住29年目。

ポンテプロンタ広告ブログ

ブラジル、サンパウロで活動する広告会社のブログです。展示会、イベント、マテリアル製作、調査・マーケティング・コンサルティングの分野で、主に日本の企業、政府関係機関の業務のお手伝いをしています。日本語とポルトガル語のバイリンガルでアテンドいたします。 www.pontepronta.com.br

コロナウィルス対策が政局になってしまっている

2020-04-09 12:05:36 | コロナウィルス

コロナウィルス対策でもう2週間以上、「社会的距離」生活を送っている。家に閉じこもっている。サンパウロではさら22日まで延長された。強制的にレストランはテイクアウトとデリバリーだけになり、スーパー、食品店、パン屋以外は店を閉めている。オフィスも閉まり、メーカー、交通その他の基幹業務以外の会社はオフィスを閉め、従業員は家でテレワーク。外出を禁止されているわけではないので、まったく人通りがないわけではないが、そうとう街なかは静かである。

政府は他国と同じように未曾有の大不況に備えて(いくら備えても避けられないが)インフォーマル労働者に対して均一600レアルの支給、退縮積立金の切り崩し、従業員を解雇しないことを条件にした企業への特別融資、資金繰りのための特別融資などをこの一週間で一気に発表した。ブラジルは極端な財政赤字に陥ってきたため赤字幅を法令で定めており、それを超えて支出すると大統領、地方自治体の長は訴えられるため、特別予算を編成するためにいち早く「緊急事態宣言」を出した。またどうせ不況でインフレはおこらないからレアル札を増刷したらいいという声まで出てきている。

ここまではどの国でも共通した動きだと思うが、ただブラジルが大きく違うのは大統領がコロナウィルスを「ちょっとした風邪」と定義し、また「ブラジル人は強靭なので下水に飛び込んでもへっちゃらだ」ということを公の場で言うだけでなく、支援者のマニフェストに飛び込んで握手をして、いっしょに写真を撮ったりして、自政府の保健相が自粛を訴えているのと真っ向から反対するという、凄まじいことがおこっていることである。いわばコロナウィルスとそれへの対応が「政局」になってしまっているのである。

市民はというと、人にも会えなく、行き場所を失ってそうとうストレスは溜まっているが、やはり他国の状況から言って相当危ない、またブラジルの医療体制がどれだけひどいかを知っているため、失業、収入を失うことも怖いけど、コロナウィルスも怖いと緊張感をもって耐えているように見える。もしデクレットで規制をなくして通常に戻すようにしても、自己判断がきき、大部分の市民や会社はすぐには戻らないと思う。このあたりの判断の健全さがあれば、この国はトップがどうであれ、この未曾有の事態を乗り切ることができると僕は信じる。


森林火災

2019-09-01 18:02:05 | 政治

ブラジルの森林火災の急増がが世界的な話題となっており、ブラジル政府に国際的なプレッシャーがかかってきている。もともとINPE(全国宇宙研空所)が発表したデータに大統領がイチャモンをつけ、所長の解任にまでつながったことから、マスコミで大きくとりあげられることになった。たまたま同時期に開催されたG7でも議題にされ、2200万ドルの緊急援助が醍庵されたが、それを大統領は内政干渉だと断わるものの、後に干渉がないなら受けるというお粗末さを見せている。要するに世界の中での環境問題の重要さ、デリケートさについて認識していなかったために混乱しているのである。


直接的な影響は、穀物メジャーの森林伐採地域期の穀物の扱いのボイコット、伐採地域の牧場の牛皮の輸入ボイコット、さらにサーモン養殖業者によるブラジル参大豆のボイコットなどにあらわれてきている。政治ではなく、産業界からの圧力の大きさは見逃せない。この先、どのように広まり、またどのようにブラジル政府が反応していくかは注目される。


火災と一言で言われているが、実際はサトウキビ農場の火入れや自然火災も含まれるので、増加分のすべてが人為的な違法伐採とその後の火入れではないのは事実である。それを差し引いてもデータを見ると今年の増加は激しい。

マスコミで使用されているINPEのデータはサテライト画像を含めて次のリンクで確認することができる。

Programa Queimada


8月31日までの「火災箇所」は90,501で前年同期間と比べて71%増加になっている。マスコミでさかんに報道されたときは81%だったので、軍隊を投入してから少しは沈静化したものと思われる。それにしてもこんな重要なデータがポルトガル語でしか公開されていないのは大きな問題だと思う。

 

【ブラジルの数字】失業不安指数

2019-05-21 22:20:03 | ブラジルの数字
 先週IBGE(ブラジル地理統計院)から発表された失業率は12.7%、1340万人だった。2018年1~3月から微減してきていたが、今年の1~3月で反転、上昇するという結果になっている。大統領が変わっても、年金改革が実現するまで企業が明るい見通しを持てていないことが現れていると思われる。企業家のマインドのデータもあるが、それはまたあらためて見たいと思う。
 
ではブラジルの労働者の失業の不安についてのデータを見てみる(Medo do desemprego e Satisfação、Indicadores CNI)。まず全体を見るとボルソナーロ大統領就任直前までは期待感があって、不安指数は下がったが、4月の調査では反転して55ポイントになっている。これはまぁ期待が大きすぎたというところであろう。
 
この失業不安指数であるが、内訳を見ると、ブラジルの労働市場の現実を理解するのに多少役に立つ。まず年齢別のデータでは、16~24歳までの若年層がもっとも失業に対して不安をもち、年齢層が上がるほど下がるという傾向が読み取れる。マーケットに入ってすぐで、まだ仕事を覚えきれていない層は簡単にクビを切られるリスクがあるため、よりやばいという意識があるのであろう。45歳を過ぎると円熟して職場も安定しており、また知識、技能が蓄積されているので再就職のチャンスも多いため不安が少ないと理解できる。流動性が低くて年齢が上がるほど再就職が難しくなる日本とは対象的なデータだと思われる。
 
次に所得層別で見ると、低所得者と高所得者の間で大きな開きがあらわれている。最低給料1倍まで(今年で998レアル、約256ドル)の層の不安指数が68.1ポイントなのに対して、5倍以上の層は39.7ポイントとぐっと低くなっている。高所得者層は貯金もあり、またそれだけの所得を得るための知識、技能も備えているため、不安が少ないのであろう。これと同じ傾向は学歴別のデータでも見てとることができ、高学歴ほど不安が少ない。ただ学歴は所得に単純には比例しないため、所得別のデータよりは差が少ない。
 
やはり底辺というか社会的に弱い立場にいるグループはより不安抱えながら暮らしているということである。よく言われる「ブラジルの貧乏人は気軽にやっている」というステレオタイプな味方は幻想であることがわかる。生活の満足度のデータもあるが、これも同じ傾向が出ている。さらに失業者のプロフィールについてのデータを見ても、白人と比べて黒人の失業者の数が多いなどがあらわれるが、これは別の機会に紹介したと思う。
 
 

【ブラジルの数字】消費者期待指数

2019-05-19 18:31:10 | ブラジルの数字
 ブラジル工業連盟(CNI)発表の4月の消費者期待指数(INEC - Índice nacional de expectativa do consumidor)は48.4ポイントだった。ボルソナーロ大統領就任前の昨年12月のポイントは49.8。明らかに労働党(PT)の景気回復への期待感から急回復していたのに水をさした結果となっている。4月以降、年金改革の審議のもたつき、教育部門を含めた予算カットの発表とそれに対するデモ、また失業率が微増しているので、次の調査時はまた下がることが予想される。


ボーイングとエンブラエル

2018-01-03 09:22:29 | その他

 ボーイングがエンブラエルを買収しようとしているニュースがマスコミを賑わしている。最初は地方用の中型機の部門が欲しいということだったが、軍用機の分野にも興味を示しているということが報道され始めている。


 エンブラエルは1969年に設立された国営の航空機メーカーで、1994年に民営化されている。世界ではボーイング、エアバス、ボンバルディアにつづいて4番目のメーカーだ。エアバスが同じく中型機に強いボンバルディアと提携に入ったことから、ボーイングがエンブラエルに触手を伸ばすのは自然かもしれないが、エンブラエルはまだブラジル政府も拒否権を発動できる株を持っている。今日の新聞によると、政府は拒否権を手放す意志はないけれども、交渉のテーブルには座る意志を見せたようである。いずれにせよ軍需産業でもあるので、米国政府との二国間の交渉になるだろう。


 それにしても業界再編性というか、大型の買収で一極集中が加速している。また外国企業がブラジルの優秀な企業を買ってしまうという流れも止まらない。僕の分野の広告業界では、もうずいぶん以前から国内資本の大手代理店は残っていない。電通もそのプレイヤーの一つでブラジルの代理店を買いまくってきた。


 配車サービスの分野では、昨日、タクシーとプライベートカーの配車サービスをする99社を、中国のDiDi(ディディチューシン)が10億ドルで買うということも報道されている。


 もう完全に世界のビジネスの土俵になっているわけで、もう逆戻りはないのだろうけど、それに唯一抵抗しているのは政府機関で、何も外国企業だけを対象にしているわけではないが、あらゆる障壁を設けて、ビジネスをややこしくし、コストのかかるようにしていると思われる。