しゅんちは普段は物静かなタイプである。
人が集まる場所ではあまり率先して発言をしないのである。
実は世間話が苦手だからである。
アイスブレイクという会話手法がある。
初対面の人同士が出会う時、その緊張をときほぐすための手法である。
例えば、面談の際に本題に入る前に
「いや~今日は本当寒いですねぇ~。」
などと誰もが共通する話題を振り、場を和ませてコミュニケーションを取りやすくするのだ。
まさにこれが苦手なのである。
何となくわざとらしく、自分が興味が無い話題を振るというのはどうしても抵抗がある。
歳も出身も趣味も好みも何も知らなく、ただ相手に失礼になってはいけないという絶対条件があるので、ついつい発言することに物怖じしてしまうのだ。
しかし、歳もそれなりになり、立場も出てくるとそうもいってられなくなる。
多少はウィットの富んだコメントの1つや2つ答えられるようになりたいと思っているのだが。
こうして世間話が出来ない事がコンプレックスのしゅんちであった。
・・仕事で自分より年上の人達と打ち合わせをすることになった。
シチュエーションとしてはしゅんちは千葉にあるメーカーの人と一緒にお客様を訪問。
検討中の装置について打ち合わせをする予定である。
お客が1名こちらは2名である。
2人ともしゅんちより10歳程度年上である。
何となく知性溢れる大人を感じさせる2人なので、さぞウィットに富んだ会話が飛び交う事になるだろう。
(ウィットとは・・・その場に応じて気の利いた事を即妙に言う才知 大辞林より)
ここは人生の先輩たちに学び、どういう会話をするのか観察してみることにした。
しゅ「おはよーございます!今日はよろしくお願いします」
お客「いやいや どうもどうも」
しゅんちが出来る事というと礼儀正しく挨拶をするくらいである。
メーカー「いやーさすがに今日は寒いですねぇ」
天気の話題は鉄板である。
お客「そうですねぇ~この時期になると最高気温が10度行かない日が続くんですよ」
ナイスウィット―ーーッ!
ただ寒いというわけではなく、最高気温までサラリと答える所がウィットポイントである。
メーカー「あーさすがは長野県ですね。」
お客「まあ朝晩は氷点下になりますからね」
ナイスウィット―ーーッ!
「朝晩は氷点下」。
なんて文学的な表現だろうか。しゅんちなら「気温がマイナスで超寒いんですよ」と普通に言うであろう。
とにかく、この時期の最低・最高気温を抑えておくのがウィットポイントだろう。
お客「今日はどちらから?」
メーカー「あー私は千葉から出てきましてね」
お客「お車で?」
メーカー「中央道を走ってきましたね」
お客「首都高抜けて?」
メーカー「東関東から首都高抜けて高井戸から中央道ですね」
お客「あ~そのルートですか。関越ルートじゃなくてね」
ナイスウィット―ーーッ!
メーカーの方は自分がどの自動車道で来たのかを正確に名称を覚えている。
そして、お客はそのルートは知っていて更に別ルートまでも知っている。
いつもナビ頼りのしゅんちは今通ってる道の名称など気にせず走っているでノーウィットである。
メーカー「なかなかお詳しいですね」
お客「いやいや、昔、仕事でしょっちゅう行ってたもんですから あはは」
こうして商談に入り、打ち合わせは順調に進んだ。
話の向きは工場に装置を見学する事になった。
メーカー「当日は電車で来られますか?」
お客「新宿に出てから乗り換えればいいのかな?」
メーカー「あ、いやいや 八王子で乗換ですね」
お客「八王子?ああ~横浜線ね!なるほど」
メーカー「そうですそうです。町田に出てから小田急線で」
お客「はいはい。確かにそちらのルートの方が早いですね」
どうしてそんなに詳しいのよ。
いつも乗換案内というアプリ頼りなので、どのルートで行くだなんて気にしたことも無い。
こんなウィットな会話に参加出来るはずも無く、ただひたすらに「へー」とか「ほうほう」などと頷くしかないしゅんちであった・・・。
あるセミナーで身振り手振りや相づちが上手な人ほどコミニュケーション上手であると聞いた事がある。
会話の内容よりも相づちを打ったり、目くばせしたり、笑ったり、相手の話に合わせる方がコミュニケーション能力が高いと聞く。
寡黙で偏屈な人と思われるよりはそちらの方がいいので、先ほどの会話に参加する場合のシミュレーションしてみよう。
メーカー「いやーさすがに今日は寒いですねぇ」
しゅ「いやー本当寒いですね!」
お客「そうですねぇ~この時期になると最高気温が10度行かない日が続くんですよ」
しゅ「そうそう!10度行かない日が続くんですよ」
メーカー「あーさすがは長野県ですね。」
しゅ「長野県は寒いからなぁ~ うんうん」
お客「まあ朝晩は氷点下になりますからね」
しゅ「本当、今朝も氷点下!マイナス!いや~本当寒いっ」
お客「今日はどちらから?」
メーカー「あー私は千葉から出てきましてね」
しゅ「そうそう。今日は千葉からでしたよね」
お客「お車で?」
メーカー「中央道を走ってきましたね」
しゅ「うんうん。中央道ですね」
お客「首都高抜けて?」
メーカー「東関東から首都高抜けて高井戸から中央道ですね」
お客「あ~そのルートですか。関越ルートじゃなくてね」
しゅ「あ~やっぱり首都高抜けちゃうルート?あー首都高怖いっすよね」
メーカー「なかなかお詳しいですね」
お客「いやいや、昔、仕事でしょっちゅう行ってたもんですから あはは」
しゅ「ああ、しょっちゅう行ってたんですか!どうりで詳しいわけだ~!」
これはウザい。
寡黙で無口でも別にいいかもしれないと思い直すしゅんちであった。
天気、地名、路線はしっかり覚える様にしよう・・・
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