「ロスジェネの逆襲 / 半沢直樹3」その2 池井戸潤 | 瞬間(とき)の栞 

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個人的な読書感想文、読書随想です。本の内容、あらすじができるだけ解るように努めています。
ただしネタバレがありますので充分ご注意ください!

 

「いろんな奴がいる。それが

 

世の中です」 半沢はいった。

 

「そいつらから目を背けて

 

いては人生は 切り拓けない。

 

会社の将来もです。 だから戦う

 

しかない。その手伝いをさせて

 

いただきたい」

 

 

 

 

 

 

 

  「ロスジェネの逆襲 / 半沢直樹3」 池井戸潤

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
「これからご説明するのは、
東京スパイラル買収スキームの
第一段階です。」
 
 
 
 
東京中央銀行の証券営業部長・伊佐山と
その部下・野崎は、電脳雑技集団の平山
社長夫妻に買収スキームについて説明を
はじめました。
 
 
 
社長夫妻は、驚愕を浮かべました。
 
 
 
「こんなことが可能なんですか」
 
 
 
総資金700億円をかけて、水面下で
東京スパイラル発行株式の約30%弱を
取得します。
 
 
 
スパイラル側が気づいた時には、すでに
電脳がスパイラルの大株主になっている
というわけです。
 
 
 
「こんなことが可能なのか」と驚きが
顔から抜けない社長夫妻に
 
 
 
「子会社の〝証券〟と比較されるとは、
心外ですなあ」
伊佐山は声を立てて笑います。
 
 
 
このような経緯で、東京セントラル証券は、
電脳とのアドバイザー契約を一方的に破棄
されたのでした。
 
 
 
 
その頃、チームリーダーの三木が突然、
本社に異動になりました。
 
 
 
 
首をひねる半沢。どう考えても、この
人事は不可解なのでした。
 
 
 
 
半沢の同期、銀行内の情報通・渡真利から
連絡を受けた半沢直樹。
 
 
 
 
「電脳に対する支援、承認されたらしい。
千五百億だ」
 
 
 
中野渡頭取は、電脳買収の巨額融資と
スキームに難色を示したのですが、すでに
アドバイザー契約は締結済みだったので、
最終的に副頭取と証券営業部に一任した
という。
 
 
 
 
「明日、動きがあるぞ」
 
 
 
渡真利はそう言いましたが、翌日の
株価に動きはありませんでした。
 
 
 
「今日はなにもなかったな」という
半沢に渡真利が
 
 
 
「動きはあったさ」
 
 
 
「時間外取引だ」
 
 
 
「今後、東京スパイラルを傘下に
おさめるために、過半数の株式を
得るための公開買い付けを実施
するってよ。おい、きいてるか、
半沢」
 
 
 
 
スパイラルの瀬名社長は、記者会見を
開き、買収に断固として対抗措置を
取ると発表しました。
 
 
 
 
記者会見の翌日、太洋証券の広重と
二村が瀬名の元を訪ねてきました。
瀬名が呼びつけたのでした。
 
 
 
 
「まず、今回の電脳側の買収に対して、
どんな条件であれ防衛するということ
よろしいですな」
 
 
 
 
広重の案は、敵対的買収の防衛策として、
決して過半数を取れないだけの新株を
発行し、それをどなたかに持ってもらう
という案でありました。
 
 
 
 
その何百億円にもなる新株の引受先
つまり、救世主の白馬の騎士、ホワイト
ナイトを見つけてきたというのです。
 
 
 
「ホワイトナイトの選定が、この
スキームのいわばキモですから」
 
 
 
瀬名はそれはどこだと言います。
 
 
 
「フォックスです」
 
 
 
「フォックスが株を持つことによって、
いわゆるフォックス・スパイラルという
IT連合が結成されることになります。
 
 
 
ポータルサイトとパソコン本体の組み
合わせに便乗したい企業は無数に
あるでしょう。
 
 
 
この二社の資本提携は当然のこと
ながら企業価値を高めると思います
ので、それだけで株価は上がる。
そうなれば、電脳の株取得費用は
大幅に嵩むことになり、場合によっては
それだけでも買収を断念させることが
できるかも知れません」
 
 
 
 
瀬名は、検討して返事すると答え、
広重らと別れました。
 
 
 
そのとき
 
 
 
「社長、森山さんという方から
お電話が入っているんですが」
 
 
 
秘書が電話を取り次ぎます。
 
 
 
「マサ?」
 
 
 
瀬名は森山のことを覚えていました。
 
 
 
「ヨースケ?」
 
 
 
戸惑いながら返事をする森山。
森山は「今、東京セントラル証券
というところで働いている」と
近況を告げました。
 
 
 
なつかしさのあまり、「今度どこかで
飯でも食おうよ」と誘われ、森山と
瀬名は会う約束をしました。
 
 
 
森山が約束の店に行くと、すでに
瀬名は来ていました。
 
 
 
森山は、瀬名の成功を祝福しました。
今は大変だと弱音を吐く瀬名に、
森山は言います。
 
 
 
「電脳のアドバイザー、最初は
ウチがやるはずだったんだ」
 
 
 
驚く瀬名。
 
 
 
「ただ企業買収の分野では、親会社と
ウチとはライバル関係になっててさ。
電脳のアドバイザーの座におさまった
東京中央銀行の情報は、正直、オレたち
のところにはまったく入ってこないし、
あんなスキームでくるとは蓋を開けるまで
わからなかった。もちろん、誰が電脳に
株を売却したのかもわからないままだ」
 
 
 
すると瀬名は
 
 
 
「株は、ウチの元役員が売った」
 
 
 
今度は、森山が驚きます。
 
 
 
二人の元役員(加納と清田)が売った
株式数と、電脳が買い占めた株式数が、
ほぼ一致しているというのです。
 
 
 
瀬名は森山に問います。
 
 
 
 
こういうとき、マサだったらどうする?
 
 
 
 
森山は太洋証券のスキームを聞き、
ホワイトナイトがフォックスだと聞いて
こう答えます。
 
 
 
「ウチの部長にきいた話だけど、電脳は、
東京スパイラルの株式買い占め資金と
して、千五百億円の融資を取り付けて
いるらしい。
 
 
 
それを阻止するためには、やっぱり
一千億円単位の資金が必要になるん
じゃないか?
 
 
 
だけどさ、いまのフォックスの業績って、
決して順調とはいえないだろ。そんな
会社がやる投資にしては、目的も
曖昧だし、金額的にも大きすぎる気が
する。
 
 
 
郷田社長と話したほうがいいよ、ヨースケ。
意向をたしかめたほうがいい。
 
 
 
証券会社の勇み足ってこともあるから。
それに、フォックスは、このスキームを
実行するために、手元の資金だけでは
間に合わなくて、金融機関から借入を
しなきゃいけないはずだ」
 
 
 

そうアドバイスした森山。

 
 
 
「ありがとうな、マサ」
 
 
 
 
 
半沢は、渡真利と近藤と一緒に
同期の関西法務部だった苅田が
本部に異動になったということで、
苅田の栄転を祝い、飲んでいました。
 
 
 
そこでスパイラルの買収防衛の
話になります。
 
 
 
半沢は、「新株を発行して信用できる
第三者に株を持ってもらう方法」では
ないかと言いました。
 
 
 
すると
 
 
 
苅田は、それは「商法違反」になる可能性
があると異論を唱えます。
 
 
 
「たしかに新株の発行そのものは商法
違反にはならないんだけど、それが会社
支配の維持を目的にする場合は法に
抵触する可能性が高い。」
 
 
 
そしてさらに
 
 
 
「防衛策のスキームとして成功させるため
には、電脳がどれだけ市場で株を買い
集めたとしても過半数に届かないだけの
新株を発行する必要があるだろう。
 
 
 
だけどさ、それだけの数の株式を信頼
できる会社に引き受けてもらったら、
結果的に、少数の株主が大量の株を
保有することになる。そうなると、上場
廃止になる可能性が出てくるんだ」
 
 
 
 
一方で森山は、瀬名と別れたあと
何かがひっかかります。
フォックスと電脳の取引が今まで
あったのかどうか?
 
 
 
そして、フォックスのメーンバンクが
東京中央銀行であることがひっか
かるのです。
 
 
 
半沢に、ここだけの話にしてほしいと
瀬名に教えてもらったスパイラルの
内部情報について相談します。
 
 
 
ホワイトナイトがフォックスであること。
 
 
 
フォックスに新株の全部を引き取って
もらう計画があること。
 
 
 
半沢は、渡真利に電話して情報を得ます。
 
 
 
「フォックスに巨額の支援が決まって
いるらしい」
 
 
 
半沢と森山は、瀬名に会う時間を
とってもらいました。
 
 
 
フォックスの郷田社長は、銀行と調達の
合意ができていることと、その銀行が
白水銀行であることを瀬名に告げて
いたようです。
 
 
 
半沢は、その銀行が白水銀行ではなく
東京中央銀行であることを瀬名に
告げます。郷田はウソを言っていると。
 
 
 
瀬名に驚愕の表情が浮かびます。
 
 
 
また、太洋証券のスキームでは、
法務リスクがあることも告げます。
 
 
 
「法務リスク?」と聞き返した瀬名に
「太洋証券のスキームだと、商法違反に
なるかも知れない。それだけじゃなくて、
株式の上場基準に抵触する可能性も
あるんだ」と森山がこたえます。
 
 
 
半沢は、確信します。フォックスと電脳の
間で裏取引がある。そしてそれが電脳に
出した東京中央銀行のスキームであると。
 
 
 
半沢は、ずっと考えていることが
ありました。
 
 
 
当初、電脳は東京セントラル証券に
スパイラル買収の話を持ってきました。
 
 
 
なぜ最初から銀行に話を持っていかな
かったのか?
 
 
 
誰が情報を本社にリークしたのか?
 
 
 
半沢は、ある人物を
呼び出しました。
 
 
 
本社へ異動となった三木でした。

 

 
 
不可解な異動であると考えていた半沢は
三木に詰め寄ります。本社に電脳の情報を
リークしたのは君じゃないかと。
 
 
 
逡巡し、悩んだ挙句
三木の口から出た名前が
 
 
 
「━ 諸田次長です」
 
 
 
諸田が内部情報を本社にリークした
ことを知ってしまった三木。口止め
として提示されたのが証券営業部への
異動でありました。
 
 
 
しかし、実際は総務グループへ。
三木にとって満足のいくものでは
ありませんでした。
 
 
 
そして諸田にも証券営業部に異動
の内示が出たと半沢は2人に言いました。
話は繋がりました。
 
 
 
半沢と森山は、また瀬名と会いました。
そしてこう告げました。
郷田社長は、ホワイトナイトではなく
電脳雑技集団が放った刺客であると。
 
 
 
「やれやれ」と厭世的になった瀬名に
 
 
 
 
「いろんな奴がいる。それが世の中です」
半沢はいった。
 
 
 
「そいつらから目を背けていては人生は
切り拓けない。会社の将来もです。
 
 
 
だから戦うしかない。その手伝いを
させていただきたい」
 
 
 
子会社が親会社と戦うなんて
騙そうとしているのではないか
と疑心暗鬼になっている瀬名に
半沢は断言して言いました。
 
 
 
 
「私は、御社のアドバイザーになって、
連中を見返してやりたい。電脳雑技
集団の買収工作を粉砕して、東京
セントラル証券の実力を示したいんです」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【出典】
 

  「ロスジェネの逆襲 / 半沢直樹3」 池井戸潤

 

 

 

 

 

 
 
 

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