うちで働いているあいだは異性との付き合い禁止という職場があったら、若い男女は働きたがるだろうか。

イメージを売るアイドル商売であれば恋愛禁止もなんのそのと飛び込む若者はいるだろうが、工場や建設現場といった普通の職場がこんなんだったら誰も来ないだろう。

だが、技能実習生の外国人は違う。
なにも知らずに日本へ来て、割り振られた職場がそうなっていたら、どれほど無体なルールであっても従うしかない。拒否して職場を去れば、帰国するほかない。


恋愛禁止の職場で技能実習生が妊娠でもしようものなら、事態は一気に悪化する。

強制帰国と中絶のどちらかを選べと迫られるケースも少なくないという。

本人の意思に反した帰国や妊娠中絶はいうまでもなく違法だが、技能実習生を単なる労働力の穴埋めパーツとしか見ていない経営者はまったく意に介さない。

それどころか日本人の多くがこう思っているのではないか。

「お金が欲しくて勝手に日本へ来たんだから、仕事以外のことを望むのは贅沢だ」


それは違うと思う。

技能実習生はロボットではない。泣いたり笑ったり、腹が減ったり、誰かのことを好きになったりする人間だ。

どんな立場で働いているにせよ、そこに必死で尊い人生の営みがあることを、俺たちは認めなければいけない。

いやそれにしたって技能実習生の分際でさあとかいう人は、自分の家族のだれかをその立場に置いて考えてみたらいい。

あなたの息子や娘が、きょうだいがチャンスを求めて外国に行ったはいいが、恋愛禁止だの妊娠したら強制帰国か中絶かだのといった扱いを受けたらどう思うか。

「人権問題だ!」と腹を立てるんじゃないか。


外国人技能実習生をめぐる芳しくないニュースの背景には、アジア人への差別意識が見え隠れしていると思う。

インドネシア人やベトナム人を無造作に下に見ているからこそ、かれらが人間らしく生きようとすることを認められないのだ。

日本人は人種差別しないと思い込んでいる人の多さをここでネタにしたことが何度かある。俺自身が国外へ出てよくわかったことだが、人は自分が差別される側に立たないと、差別の存在自体になかなか気づかない。島国の特徴だ。


いま日本社会は、単に労働力不足の穴埋めをしてくれる数字としてしか見てこなかった外国人が「人間」であったことに気づき始め、これはヤバイのではないかと考えだしている。

かれらの人生を尊重する制度にすべきと考えるグループがいれば、逆に外国人がそれぞれの人生を日本に持ち込んで「繁茂」することを嫌い、締め出しを望むグループがあるだろう。

この国に必要なのは、一時的な労働力にせよ移民にせよ、外から入ってくる人たちとどう向き合うのかについて徹底的に論じ、方向性を決めることだ。


だが、まもなく国会で成立される流れの入管法改正案をめぐって、そういう議論が尽くされたとはとても思えない。

問題の焦点をぼかしたまま目先の数字を追って突っ走ろうとする政府。一方で野党の側も、外国人もまた人間であるという事実の重大さに薄々気づいてはいても、そこにしっかり踏み込む勇気が持てていなかったように思われる。

こういうことをウヤムヤにしたまま外国人労働者の大量動員時代をむかえると、後になって噴き出す矛盾のインパクトはけっこう大きなものになるだろう。

そのとき感じるストレスを日本人が誰のせいにするのかによって、この社会が転がっていく先も決まる。


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