『 この世に不可能はない 』
~ The Power of Mu ~
生命体の 無限の力
政木和三
序章
『私』という人間
◎ 阪大工学部の全学科と医学、力学を学んだ
私は、まず最初に本書の読者に私という人間を知っていただきたいと思う。
現在私は八十一歳の高齢に達しているが、そのうちのほぼ半分に相当する四〇年間を、学生の時代を含めて、大阪大学で過ごしている。
したがって、自分のことを語るのであれば、最初にこのあたりのことから書き出すのが順当ということになろうか。
私が大阪大学の工学部にお世話になったのは、昭和十四年であった。
私はそこで昭和三十年までの一六年間に、工学部の全学科を学んでいる。
最初に私が籍を置いたのは通信工学科であった。
ところが、そこでの講義の内容は、すでに私が修得していたことがほとんどであり、そればかりか、私が高等工業時代に提出した論文がそのまま講義に使われたりしている。
そんな講義なら聞く必要がない、と思った私は、通信工学科をやめて航空工学科へ移った。
阪大に航空工学科ができてからまだ三年目ぐらいだったと思う。
戦前ということもあって、これから飛行機がますます重要になってくるという時代であった。
航空工学科で学んでいて、驚くようなことがいろいろわかった。
たとえば空気の粘性である。
空気に粘り気があるというのは、当時の常識にはない。
ところが、そのことこそが飛行機の設計の根本とかかわっているのである。
機体に空気が当たるとき、空気の流れに速度の差ができるのは、空気に粘性があるためだ。
そこで私は、機体に当たる空気の流れがどう変化するか、目に見えるようにしようと考え、熱線風速計というものを発明した。
これによって機体の空気抵抗がブラウン管で見えるようになったことが、その後の飛行機の設計に大いに役立ったのである。
飛行機をやったのだから船もやろうということで、私は造船工学科の研究員にもなった。
そこでは、たとえば金属のひずみ計を発明している。
当時、ある船が大波を受け、船体が半分に割れるという事故が発生した。
船体に生じたひずみが原因だが、そのひずみについて調べる必要があった。
もともと船というのは、進水式のときに、すでに船体にひずみが生じる。
船尾から進水していき、船体の前半分がまだ進水台に残っている何秒かの間に必ずひずみが生じるのである。
そのときに、船体のどの部分にどれだけのひずみが生じるかを調べておくことが、航海中の船の安全にとって大事なのだ。
そこで、そのための設計器を発明したのである。
私はまた、醸造学科にも籍を置き、酒づくりの最もいい方法を発見したりしている。
いろいろ実験してみてわかったのだが、バクテリアの中には摂氏九〇度の熱湯の中でもどんどん繁殖する、常識では考えられないようなバクテリアもある。
酒づくりに必要な麹(こうじ)菌も実験で調べてみたら、摂氏五五度のときに最も繁殖することがわかった。
そこで、炊いた米の温度を五五度に保ち、そこに麹菌を入れて甘酒をつくってみると、それまで一昼夜かかった熟成が、一時間でできることが判明したのである。
この温度だと、ほかの菌は全く繁殖せず、麹菌だけが繁殖するから、ものすごくおいしい酒ができる。
現在、日本の酒づくりのほとんどは摂氏五五度で行なわれている。
さらに私は、建築土木学科でも学んだ。
そのとき発明したのがコンクリート厚み計である。
この計測器を建物の壁に当てるだけで、コンクリートの厚みや使われている鉄筋の太さがわかる。
古い建物などを検査するのに非常に便利なものだ。
こうして私は、阪大工学部のすべての学科を渡り歩き、その基本を修得することができたのである。
それだけではない。
昭和十九年からの七年間は、工学部と並行して医学部にも籍を置き、主に神経の研究をした。
その後、理学部に移って、力学をみっちり勉強した。
こうして、工学、医学、力学といった学問の根本の部分を修得できたことが、私には大きかった。
それが私のその後の発明に大いに役立ったことはいうまでもない。
初版印刷:1997年7月20日
初版発行:1997年8月5日
著者:政木和三
発行人:枻川恵一
発行所:㈱サンマーク出版
発売元:㈱サンマーク
印刷:共同印刷㈱
製本:㈱若林製本工場
©Kazumi Masaki. 1997
ISBN4-7631-9192-6 C0030
政木先生とのご縁の始まりは、
昭和五年生まれの私の実父が小学生時代の頃より電気のイロハを教わり、
(実際に、電気ギター制作等々、様々な電気技術のご教授を、家族ぐるみのご近所付き合いの中で個人的に無償で賜ったそうです)
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政木先生がお亡くなりになる最後の最後まで、私も含め家族ぐるみのお付き合いを賜わり、
今も尚、心の底よりとても尊敬し、感謝している恩師・師匠です。
政木和三先生の廃刊御著書
『この世に不可能はない』
~ The Power of Mu ~
生命体の 無限の力
を、現状のブログデザインに合わせて
再び掲載させて頂きます。
政木先生の御教えである
『目先の欲望を捨て去り、世のため、人々のために尽力せよ!』
との仰せを引き続き継承するため、
今後も少しずつではありますが、
何度も何度も繰り返す、日々の心の学びの礎として、
政木先生の御教えのすべてをこれからも紹介させて頂きますので、
皆様には引き続きのお付き合いの程、
何卒、宜しくお願い申し上げます。
深謝
m(__)m
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