toty日記

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アルタイの有刺鉄線

2019-02-01 10:40:42 | 
親戚から頂いた私家本なので、
多分流通はしていないと思いますが、
感想を書いておこうと思いました。

第二次大戦後、捕虜としてソビエトに抑留され、
数年を現地に過ごした方の記録ですが、

人間の生き方がたんたんと書かれていて
とても印象に残る本でした。

実は頂いたのはかなり前で、その時はざっと目を通して、
数か所印象に残っていたのですが、

今回、改めてじっくりと読んだところ、
どの文章も、心をこめて書かれていると感じました。

その過酷な労働、食料、寒さ等で、一緒に過ごした仲間が
どんどん亡くなっていく状況、

その中で、みんなで一緒に日本に帰り着こうという
強い意志を持ち続け、日本に帰るまでの話が綴られています。

親戚は、大学で学んで、ドイツ語が少し話せたので
ソ連の一部の人と意思の疎通が可能だったので、
通訳として、交渉ごとにあたったりしたようです。

普段は、約500人からの人たちに日本語で呼びかける機会はなかったのが

ソ連の人から、怠ける人がいるから、もっとしっかり働かせろと言われ、
その集団に向かって、日本語を分かる人がいないのを利用して、

みんなが疲労困憊しているのは、良く知っているが、
監視されている時は、やっているふりでいいから、印象をよくし

監視が届かないときは、うまく休んで、
皆で揃って日本に帰ろうと、呼びかけたり、

なにかもめごとがあると、うまくとりまとめて、
特異な技能を持った人には、適材適所で仕事を割り振ったり、

「文化人」とされた人たちが、うまく皆をまとめて、
精神状態が極限のなか、生きて日本に帰国できるまでが
書かれています。


本一冊の内容は、すべて記憶していたのだそうで、
筆記用具が手元にあるわけでなく、

日本に帰って2年後ぐらいに原稿におこしたものの、
その後引っ越しを繰り返すうちに、見つからなくなり、

平成に入ってから、ようやく原稿をみつけて手を入れ、
発刊にこぎつけたそうです。

ソ連に抑留された人の中には、一切戦争のことは話したくないと
話が戦争にかかわることになると、口をつぐむといった話をきいたりするので

この方の、記録にとどめておきたいという意思は
かなり強固なものだと思いました。

どの場面のエピソードも、その所属した部隊の心の持ち方をうまくリードして
とかく自暴自棄になりがちな人を励ましあったりしています。



たまたま、最近その奥様に会う機会があって、
本の感想を話し合う機会があったのですが、

帰国後も、GHQから呼出しがあって、ソ連に感化されたのではないかとか
様々な取り調べが行われたこと、

他の部隊では、
食料の分け方で恨みを買った人が、
帰国船に乗ってから、海に放り込まれ、そこで命を亡くした話とか、
本には書けなかった話を聞きました。

シベリアの広さ、寒さのなか、
同じ部隊の人が、穏やかないい人ばかりだったと読み取れました。

人間の組織のまとめかたの、いいお手本とも思いました。

数か所、歌が持つ力が描かれている所もあり
話が絵として浮かんだと、話したら、

これは映画になると、感想を言ってくださった方があったと、
話してくれました。

久しぶりに、これはいい本だと思った本でした。


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2 コメント

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Unknown (k-tak)
2019-02-11 21:32:52
昨年末から助っ人として歌いに行っている合唱団の指揮者から、こんな話を聞きました。
シベリアに抑留された経験をお持ちのお父上が絵入りの詳細な記録を書き残しておられるのだそうです。以前、それを新宿住友ビルにある戦争資料館へ寄贈しようとしたところ、不要と言われたというのです。
私家版のこうした記録を広く紹介できないものでしょうかね。
記録を集めて展示 (toty)
2019-02-14 23:42:40
この本を読んで改めて、その記録の大切さを感じました。おっしゃるように、こういうものを集めて紹介する場があるといいですね。どこか、そういうところあるのかもしれませんね。調べてみたいと思います。

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