黄体フィードバック法での正常胚率は変わらない | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、黄体フィードバック法(PPOS = Progesterone Primed Ovarian Stimulation)での正常胚率は通常のアンタゴニスト法と変わらないことを示しています。

 

Hum Reprod 2020; 35: 1325(イタリア)doi: 10.1093/humrep/deaa068

要約:2018〜2019年黄体フィードバック法(PPOS)で採卵する方48名を対象に、年齢をマッチさせた通常のアンタゴニスト法で過去に採卵した144名と正常胚率を比較しました。結果は下記の通り(全ての項目に有意差なし)。

 

      黄体フィードバック法(PPOS)   通常のアンタゴニスト法

患者数        48名              144名

総FSH量       2750IU            2630IU

卵巣刺激日数     11.8日             11.0日

胚盤胞数       4.0個              4.1個

正常胚数       2.1個              2.0個

正常胚率/患者    38.7%              42.0%

正常胚率/成熟卵   21.0%              21.0%

 

解説:上海グループは、黄体ホルモン(MPA、ウトロゲスタン、デュファストン)によるLHサージ抑制法をPPOSと名付けました(リプロでは黄体フィードバック法と呼んでおり、ルトラールを用いています)。これまでの報告では、どのような種類の黄体ホルモンを用いても同じように排卵抑制が可能であり、採卵数や胚の質も他の方法と遜色がないことが報告されています。本論文は、黄体フィードバック法(PPOS)での正常胚率も変わらないことを示しています。このように、黄体フィードバック法(PPOS)は、ロング法、ショート法、アンタゴニスト法に続く第4の排卵抑制法の位置付けとなります。

 

下記の記事を参照してください。

2017.12.4「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その1

2017.12.5「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その2

2017.12.6「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その3

2017.12.7「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その4

2018.2.20「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その5