Q&A2015 融解後の胚盤胞について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 以前、凍結胚盤胞を融解・AHA後に、移植できない状態になったと言われ、その胚は破棄となりました(移植を決めたときから医師の勧めによりAHAは行う予定でした)。その際に医師から「融解時は本来なら収縮しているのに、そもそも収縮していなかったことが変」と言われました。そこで、いくつか疑問が起きました。
①融解時に収縮していない胚にAHAをすると胚が壊れる可能性が高くなりますか。
②貴院ではAHA予定にしていても、胚の状態からAHAを中止することはありますか。あれば、どのようなときですか。
③融解時に収縮していない胚はやはり変性が起きていて、そのまま移植しても着床の可能性は低いですか。

 

A   胚盤胞を凍結する際には、胞胚腔内の水を抜くことで胚盤胞を収縮させてから凍結するのが一般的です。胞胚腔内に水がある状態で凍結すると、氷の結晶になり細胞を破壊してしまうからです。この手技をAS(artificial shrinkage)と言いますが、機械的に水を抜く方法と、浸透圧で水を抜く方法があります。ASを実施しているという前提でお答えいたします。また、凍結胚は透明帯が硬くなるため、移植前に透明帯に穴を開けるあるいは透明帯を薄くするAHA(アシステッドハッチング)が必要です。AHAの際には、透明帯と胚の間にスペースが存在することが必要です。

①融解時に収縮していない胚盤胞は、透明帯との隙間がない状態であると考えますので、穴を開けるAHAをすると胚の外側の細胞にダメージを与える可能性があります。

②胚の状態でAHAを中止する場合は、脱出胚盤胞の場合(G5かG6)です。それ以外でAHAを中止することはありませんが、透明帯との隙間がない状態の場合には、透明帯に穴を開ける方法から、透明帯を薄くする方法に変更することはあります。

③収縮の有無と変性は別問題です。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。