福岡・久留米のぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用と労務管理の町医者 吉野正人です。
 

10月21日 求人広告会社ビハイア パワハラ女性自殺社長提訴から考える事

 

10月21日日曜日。今日は、パワハラに関する気になる記事がありました。私自身、社労士の実務経験で酷い事例だと思います。

 

※弁護士ドットコムニュースより引用

 

「死んだほうがましですか」壮絶パワハラで女性自殺 「現代版の奴隷制度」で社長提訴
弁護士ドットコム2018年10月17日 21時56分
アニメや漫画、ゲーム業界の求人サイトを運営する「ビ・ハイア」で働いていた女性(当時30)が自殺したのは、社長のパワハラが原因だとして、女性の遺族と元従業員2人が同社と社長に損害賠償と未払い賃金など計約8864万円の支払いを求める訴訟を10月17日、東京地裁に起こした。

元従業員2人は、強制的に借金を負わされたり、GPSで居場所を監視されるなど「奴隷的な拘束」を受けたりしたと主張。提訴後に厚生労働省(東京・霞が関)で開いた会見で、原告の一人である男性(29)は「借金を返していなくて申し訳ないなという気持ちにずっとさせられたので、正常な心が芽生えなかった」と当時を振り返った。

●借金背負わされ、お金も食事も制限
訴状などによると、訴えたのは亡くなった女性の遺族、元従業員の大下周平さん(39)、男性(29)。3人は2006〜14年に入社し、「正社員よりも税金面でメリットが多数ある」などと言われ、同社や実質的に社長が経営している関連会社と業務委託契約を結んだ。

2007年11月ごろから、社長は大下さんなど従業員にブランド品を買い与え、その費用を会社から社長への「貸付金」という形で計上。2016年には「実質的にはお前らに使った金だからお前らが支払うのが当然」として、大下さんと女性を保証人にし、ブランド品の購入費の返済を求めるようになった。加えて、大下さんが賃金の情報を知人に伝えたところ「守秘義務違反だ」として、さらに2000万〜4000万円損害賠償を求めてきたという。

2人は報酬として月額100万円が支払われる契約を結んでいたが、社長は借金損害賠償の弁済にあてることを理由に賃金の天引きも始めた。収入がなくなり家賃も支払えなくなると、社長は「事務所に住みながら借金を返せ」と命令。3人に家賃会議費など新たに800万〜1000万円の支払いを求めたという。

●5分おきにLINEで「起きてます」送れと命令
原告は、深刻なパワハラもあったと主張している。住むように命じられた事務所には風呂もなく、洗面台で体を洗う日々。社長宅のシャワーを借りられるのは2〜3カ月に1度しかなかったという。社長から深夜・早朝に呼び出され、LINEやSNSの連絡がひっきりなしに続き、5分ごとにLINEで「起きてます」と送るよう命じられたこともあった。

実際のLINEのログ

事務所には監視カメラがあり、寝ていると「何やってんだ」と連絡があったほか、社用携帯のGPS機能で位置情報を把握された。お金を使うことや食事も制限され、与えられた乾燥大豆を1日1食食べていたという。

また日常的に3人を「ゴミ」「クソ」「生きてるだけで迷惑」「俺は被害者だ」「普通だったら家もないんだからな」などと罵倒し、水をかけられたり、物を投げられたりしたという。

実際のLINEのやりとり

女性は今年2月25日の深夜、「死んだほうがましですか」という趣旨のメッセージを社長に送信。その1時間後、社長は女性らが寝泊まりしていた事務所に来て、「その発言で(社長が)傷ついた」と迫りながら2時間以上にわたってPCなどを破壊した。同日午後、女性は自殺したという。

●「このままいると殺される」
社長のブログには従業員の笑顔の写真が並んでいる(10月17日午後9時時点)。大下さんによると、常日頃暴言を吐かれていたが、写真を撮影するときだけは「笑え」と言われていたという。女性の死後も社長が何も変わらない姿をみて「このままいると我々が殺される」と危険を感じ、逃げ出したという。

大下さんが背負わされた借金は、女性が連帯保証人にもなり、女性の借金も大下さんが連帯保証人になっていた。そのため「どっちかが辞めるとどっちかがしわ寄せを受けることになるため、当時は私だけ辞めることは難しいと思っていた」と振り返った。

また、男性は「逃げるのにはお金が必要だが、自由に使えるお金がなかった。物理的に拘束されていたわけではないが、実質どこにも行けるような状況ではなかった」と話した。

原告側代理人の深井剛志弁護士は「これは現代版の奴隷制度。若者の雇用の現場における問題が全て組み込まれている」と指摘。3人は業務委託契約を結んでいたが、社長の指揮監督下にあり労働者であったと主張している。そして、賃金の天引き違法で、パワハラにより多大な精神的な苦痛を受けたとしている。

同社は弁護士ドットコムニュースの取材に対し「担当者が不在」と回答した。

●「事実とはまったくかけ離れた虚偽」
社長は同社ホームページで「弊社に関する提訴およびその報道について」と題した社長ブログを更新。

女性の自殺が同社や社長に原因があるかのような主張や記述は「事実とはまったくかけ離れた虚偽であることを強く申し上げたい」とし、亡くなる前に女性が社長と親に送った文面には「決断が個人的な原因および理由によるものであり、弊社の業務とは無関係であることが明記されていました」と主張。

訴状を仔細に検討したうえ、法廷内外で、事実に基づき、事実無根の主張や記述に反論してまいります」と記載している。(追記:10月18日9時45分)

 

※引用終わり。

 

今回の事例は、弁護士ドットコムの記事が事実ならば、会社側の立場の仕事が多い社労士から見ても、酷い事例だと思います。

 

いわゆるパワハラ→精神的に追い詰められ自殺→民事訴訟損害賠償請求の事例です。ただし、通常の労使間におけるパワハラ事例とは大きく異なる点があります。

 

今回、亡くなられた大下さんと元従業員2人のうち一人は、ホームページやネットの情報によると、執行役員という肩書だったりします。なお会社情報では従業員7人と記載されていますが、スタッフ一覧を参照すると、従業員10人未満規模で社長・副社長・執行役員2人と、役員が4人いらっしゃるようです。

 

なおネットでビハイア関係を調べたところ、「ビハイア及び関連会社との業務委託契約を結んだ」という記載が多く見受けられました。いわゆる入社時は雇用契約→一定期間経過後に業務委託・請負契約又は役員就任に移行では?と推測します。いわゆる今回のような争いごとになっても、「労働者ではないから」と言う大義名分が会社側に成立します。

 

労働基準法等法的に「労働者ではない」為、労働基準監督署は対応出来ない点をビハイアの社長さんはご存知だったのでは?と私は推測します。実態が労働者か否か?」を判断するのは、裁判所になると思います。今回のような裁判上で争う場合、労働者側の弁護士さんは、下記のような対処では?と推測します。

 

5分おきにLINEで「起きてます」送れと命令等の書面証拠等をもとに実態労働者であることを立証。

 

・裁判所が労働者であることを認めた上で、労働基準法24条(賃金全額払)、労働基準法32条(労働時間)、労働基準法37条(割増賃金)違反等をもとに請求。

 

・労働者と裁判所に認められた場合は、労災申請(遺族補償給付)。またパワハラに伴う精神疾患等で通院・入院している場合は、療養補償給付・休業補償給付などの労災申請。

 

・パワハラに関しては、民事訴訟で、行為者(社長個人)には民法709条の不法行為責任を請求し、会社(法人自体)には民法415条の債務不履行責任(安全配慮義務違反)・労働契約法第5条(安全配慮義務違反)・民法715条の使用者責任を請求。

 

・パワハラに関して刑法的には、名誉棄損罪(刑法230条)・侮辱罪(刑法231条)・脅迫罪(刑法222条)を請求。

 

が、考えられます。以上のような点を考慮して、損害賠償未払い賃金など計約8864万円の支払いと言う高額請求になったのでは?と推測します。なお記事によると、今回は民事訴訟のみのようです。

 

この事件は、10月17日に朝日新聞に掲載され、フジテレビのグッディでも報道されました。既にネットでは、SNS・まとめサイト等炎上状態になっています。

 

そもそも今回の件は、「パワハラか否か?」と言う問題がありますが、パワハラの定義は、下記の通りになります。


同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為を言います。


実際は、被害者の主観「パワハラか否か?」を認識しているのが現状で、今回のビハイア社長及びビハイア社の報道に対する反応のように、加害者側がパワハラをしているという認識が無い場合が多いのが現状だったりします。

 

最終的な「パワハラか否か?」の判断は、結果的に裁判所等「第三者の判断」で決定される事が多いのが実情です。ただ今回の訴訟は、地方裁判所の判決が出るまでに1年以上かかるのでは?と私は推測します。

 

最高裁まで争うとなると、数年以上長い時間裁判費用が必要です。今回の労働者側弁護士事務所は、労働者側では有名な弁護士事務所であり、担当弁護士さんは本気モードです。個人的には、会社側が最高裁まで争うのは不利ではないか?と推測します。

 

私は、今後会社側弁護士が、「不利な」裁判を最高裁まで争うより、過去の判例等をビハイア社及びビハイア社社長に懇切丁寧に説明し、速やかに妥協点があるか?を探り、和解する事を期待しています。労使紛争が長引くと、労使ともども時間と費用の浪費になるのでは?と私は思います。

 

既にテレビ・新聞で報道され、ネットでも炎上状態の現在、自らが正しい事を主張し続けて争い、傷を広げるのは、個人的にはお勧めできません。ネットで商売している会社ならば、今回の紛争が長引けば長引くほど、本業の売上はもちろん自社の採用に大きく影響すると私は思います。

 

個人的には、「今後、どうしたらいいのか?」で考えて頂き、亡くなられた従業員ご遺族・訴えた元従業員と速やかに妥協点を見出して和解する事をお薦めします。原因追求より目標再設定だと思います。そして、失われた人材の確保・採用後の教育方法の見直し労務管理改善・法令遵守を基本とした労務管理の再構築顧客との信頼関係再構築をすみやかに行うことをお薦めします。

 

※写真は先日の夕食で、ひらすのカルパッチョ・麻婆豆腐丼・タン塩・野菜サラダ等です。

 

以上、福岡・久留米ぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用・労務管理・労働トラブル対応の町医者 吉野でした。

 

※お問い合わせや相談したい時は、いつでも下記へ連絡願います。 福岡 久留米 採用と労務管理、労働トラブル対応の町医者 社会保険労務士 吉野正人 移動オフィス 090-2852-9529 (すぐつながります。)

メールアドレス naitya2000@gmail.com

 

ただし労働者側の相談も可能ですが、当事務所は会社側の相談が得意ですので、ご了承願います。 なお労働者の相談は、下記リンクの社会保険労務士をオススメします。

社会保険労務士おくむらおふぃす

 

 

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