最初一目見て「これはいいな」と確信して入手しました。細かく丁寧なミル打ち、アームを半分覆って貼られているプラチナ、当時の服部時計店がよく使っていた上品なPGが使われていることなどから、戦前の服部時計店製のものと判断しました。プロポーション抜群で、どこから見ても大変シャープに出来ています。中級品より少し上、といったところでしょうか。当時の服部製リングの色石パターンはたくさんありますが、これは少し年配(といっても30代くらい?)の人向けだと思います。石はそれほど長くなく、縦1.7センチ弱、重さ2.6グラムです。

 

 

アームには厚めのプラチナが貼ってあります。

 

横側です。

 

裏側です。

 

このリングが戦前の服部時計店製のものだと考えた理由のひとつは、実はアームの表面の彫りでした。アームのプラチナ部分を拡大してみます。

 

わかりやすく写っていると思いますが、ポチポチは只の丸ではなく、月のクレーターのように真ん中が凹んでいます。実は他の服部製の帯留めなどを見ていて、結構目に付くので以前から「面白い技法だな」と常々気になっておりました。私の持っている同じく服部製の帯留めなどをアップしてみます。

これは葉の中央です。

 

芥子珠の下です。

 

これが最も分かりやすいと思います。大きなクレーター状になっています。裏側を見ると、どうやら丸いポチポチの上からむぎゅっとタガネ(?)で叩いているようです。

 

あまりはっきりしたことはまだわからないのですが、戦前の服部時計店は、このような特殊な装飾を得意としていたと考えられます。もう一度リングの写真を。

 

刻印です。服部製品は、戦後もセイコージュエリーとして同じような印を押していましたので、刻印だけから判断するのはちょっと難しいです。

 

手に着けてみました。年齢的に(笑)私にはとてもよく似合っています。

 

同時代のものと思われる同じく服部製のクリソプレーズのカフスと並べてみました。合成石より少し上クラスの、上品で明るい色合いのジュエリーです。